NIGHT RANGER、約40年ぶりに日本武道館に帰還 圧倒的な“現役感”を見せつけたフェアウェルツアー

NIGHT RANGER、約40年ぶりの武道館公演

 MR.BIGやシンディ・ローパー、WINGER、Cheap Trickと、今年は1980年代に一世を風靡した海外アーティストのフェアウェルジャパンツアーが続いている(Cheap Trickのみ1970年代末に最初の黄金期を迎えているので、少々異なるかもしれないが)。今回紹介するNIGHT RANGERもそのひとつであり、『FAREWELL JAPAN The “Goodbye” Tour』と銘打って大阪(10月14日)と東京(16日)でライブを開催。このうち東京は1986年1月以来、約40年ぶりの日本武道館公演であり、有終の美に相応しい場所で彼らは最後の日本公演を行った。

NIGHT RANGERからの特別なプレゼント

 激しいギターリフとともにステージを覆う幕が下ろされると、ライブは「This Boy Needs To Rock」から勢いよくスタート。ステージ中央にジャック・ブレイズ(Vo/Ba)、向かって右にブラッド・ギルス(Gt)とケリー・ケイギー(Dr/Vo)、左にケリ・ケリー(Gt)とエリック・リーヴィー(Key)という立ち位置なのだが、ブラッドとケリはステージ上を縦横無尽に動き回り、ジャックも歌っていないときは同じ場所にとどまることはない。オリジナルメンバーの3人(ジャック、ブラッド、ケリー)が全員70歳前後ながらも、そんな事実を忘れてしまうほどのアクティブぶりには驚かされるばかりだ。この曲では、ギターソロでDeep Purple「Highway Star」の名フレーズをフィーチャーしたほか、同曲をワンコーラスだけカバーするという演出も用意。オープニングからギア全開で、早くもクライマックスのような気分を味わうことができた。

ジャック・ブレイズ
ジャック・ブレイズ

 その後も「Seven Wishes」や「Faces」と、今年でリリース40周年を迎える3rdアルバム『7 Wishes』(1985年)からの楽曲が続く。バラードヒットのイメージが強いNIGHT RANGERだが、冒頭3曲の流れはその印象を大きく覆す構成で、メロディアスながらもハードで重厚なサウンドはどれもライブ向きであることを存分に実感できたはずだ。

 彼らのサウンドにおいて大きな鍵を握るのが、タイプの異なるギタリストふたりとボーカリストふたりの存在だ。ギターに関してはもともと、個性的なアーミングが持ち味のブラッドとタッピングや速弾きを武器とするジェフ・ワトソン(Gt)が二枚看板だったが、現在はジェフに代わりアリス・クーパーやスラッシュ(Guns N' Roses)などと活動を共にしたケリが、フレキシブルなギタープレイとアグレッシブなアクションでバンドに華を添えている。また、ボーカルにおいてもジャックとケリーが、それぞれトーンの異なる歌声で各曲を表現。ステージ上での佇まい同様に“動”の印象が強いジャックに対し、バラードを歌うことが多かったりドラムを叩きながら歌唱するスタイルも相まって“静”のイメージを放つケリーと、その個性の違いがNIGHT RANGERというバンドに多彩さをもたらしてきたことは間違いない事実だ。そして、そんなカラーの違うギタリスト&ボーカリストたちを見事に繋ぐ役割に、地味に徹しているのがキーボーディストのエリック。ステージ上では前に出て自己主張する場面は少ないが、シンセサイザーで各曲にドラマチックさやスリリングさを加えたり、バラードでは繊細なピアノプレイを聴かせたりと、ギターやボーカルが前面に打ち出されるNIGHT RANGERにおける重要な調味料だと断言できる存在なのだ。

ブラッド・ギルス
ブラッド・ギルス

 そんな5人が約40年ぶりの武道館で、“スペシャルギフト”としてアルバム『7 Wishes』40周年を記念した“全曲披露”をアナウンス。思えばここまでの3曲もすべて『7 Wishes』だ。このジャックの発言に続いて、ステージ後方のスクリーンには初来日の1983年から過去15回の日本滞在時の思い出映像が、『7 Wishes』収録曲の「I Need A Woman」「I Will Follow You」「Night Machine」に乗せて映し出される(この3曲も“全曲披露”にカウントされるようだ)。この懐かしい映像を経て、ライブはメロウで軽やかな「Four In The Morning」にて再開。シングルヒット曲とあって、客席からは盛大なシンガロングが湧き起こる。続くミディアムバラード「Sentimental Street」では、エリックが奏でるピアノに乗せて、ケリーが朗々と歌い上げる。曲中にフィーチャーされる5声コーラスもばっちり決まり、会場中にオーディエンスの歓喜の声が響き渡った。

ケリ・ケリー
ケリ・ケリー

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