あいみょん、JO1、Da-iCE、tuki.、ORANGE RANGE、TOMOO……注目新譜6作をレビュー
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はあいみょん「ビーナスベルト」、JO1「Just Say Yes」、Da-iCE「Monster」、tuki.「人生讃歌」、ORANGE RANGE「Precious」、TOMOO「餃子」の6作品をピックアップした。(編集部)
あいみょん「ビーナスベルト」
これまで多くのドラマや映画主題歌を手掛けてきたあいみょんにとって、『マリーゴールド』以来のノンタイアップCDとなるシングル曲。もちろんそのことで曲調が変わるわけではない。ゆったりしたアコースティックギターの弾き語りを軸にしたアレンジに、仕掛けやギミックは皆無。言葉とメロディで物語を紡ぐ、正統派フォークシンガーとしての佇まいがストレートに伝わってくる。一度は終わったはずの恋人が、何かを期待させる眼差しで再び会いに来た。そこで戸惑う主人公の複雑な心を切り取っていく言葉たち、たとえば〈夕方に語りかける鳥のように〉や〈崩れた砂場に 残る跡〉などの描写がなんとも素晴らしい。時代の寵児というより、タイムレスな詩人/歌手としての実力を見る。(石井)
JO1「Just Say Yes」
最新シングル『Handz In My Pocket』収録のカップリング曲のひとつ。表題曲はクールかつアッパーなダンスチューンだが、こちらはかなりスイウィートなR&B系ラブソング。歌詞はHASEGAWA、AVENUE 52、SQVAREの共作によるもので、夜中にふっと届いたLINEがすぐに消去された、といった日常のワンシーンから恋が始まり、期待と妄想の入り混じるストーリーが加速していく様子は、思わず胸がキュンとする初々しさ。LINEやインスタ(Instagram)など出てくる単語は現代のものだが、タイトルも含めて、CHAGE and ASKAが残した平成の名曲「SAY YES」の令和ヤングバージョンと言えるかもしれない。後半どんどん多彩になるコーラスワークも聴きどころ。(石井)
Da-iCE「Monster」
新曲「Monster」は、Da-iCEのイメージ、音楽性を更新するエポックメイキングな楽曲だ。TVアニメ『モンスターストライク デッドバースリローデッド』(TOKYO MXほか)オープニング主題歌として制作されたこの曲には、メンバーの岩岡徹と和田颯が作詞を担当し、和田は作曲にも関わっている。基調になっているのは、ヘヴィかつアッパーなビート。速弾きのギター、歪んだベースラインがぶつかり合う、攻撃的な楽曲に仕上がっている。メンバー5人全員が歌唱に参加しているも超レア。〈五角形 Balance と超究極な一手で Flight back〉というフレーズに象徴される、メンバーの刺激的な化学反応とダンサブルな高揚感が同時に伝わってくるリリックにも注目してほしい。(森)
tuki.「人生讃歌」
現在高校2年生のシンガーソングライター・tuki.による、映画『愚か者の身分』の書き下ろし主題歌。堂々たる四文字が刻まれたタイトルはこれまでのイメージと違うのだが、楽観で生まれた曲では決してないだろう。〈正しさはひとつじゃない〉という歌い出しから続くのは、答えがわからず悩み苦しみ、人知れず追い詰められてしまう誰かへの眼差し。tuki.は〈そんな風に思わなくていい〉と救いの手を伸ばす立場であるが、その歌声は苦しむ主人公に半ば憑依するよう震え続ける。ただ、コーラスが加わる中盤から声のトーンは明らかに変わり、祈りと誓いの中間のような強さをまとっていく。この揺らぎのコントロール力こそが魅力だと再確認するバラード。(石井)
ORANGE RANGE「Precious」
「イケナイ太陽」のリバイバルヒットをきっかけに再び注目度を上げているORANGE RANGE。シングル『トワノヒカリ』(表題曲は映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』主題歌)に収録された「Precious」は、結成から四半世紀直前、40代になった彼らの音楽的な深みをじっくりと堪能できるミディアムチューンだ。シンプルな8ビートと切ない響きをたたえたシンセを軸にしたトラックのなかで歌われるのは、生命のつながりの素晴らしさ。自らの意思で始まったわけではない人生だけど、誰もが愛の結びつきのなかで生を受けたことは間違いなく、日々の営みのなかで感じられる全てのことが“Precious”なのだと、この曲は告げている。抑制を効かせ、一つひとつの言葉をシンプルに紡ぐボーカルも心地よい。(森)
TOMOO「餃子」
繊細なビートが遠くから近づいてきて、〈しあわせになりたいだけの〉という歌が聴こえてきた瞬間、ホッとするような穏やかさと切ない情感にゆったりと包み込まれる。歌詞のテーマは、いろいろな人間関係のもつれや歪みから生まれる“しわ寄せ”。それを〈餃子のプリーツ〉に置き換えながら、ただ幸せになりたいだけの人たちが起こす〈事情と事情 ぶつかるトラフィック〉をリリカルに描き出しつつ、楽しく身体を揺らしたくなるグルーヴへと結びつけるこの曲は言うまでもなく、TOMOOにしか生み出せない。高木祥太(BREIMEN)による、二胡や12弦ギター、パーカッションを使ったカラフルでボーダレスなアレンジも絶品。11月12日リリースのニューアルバム『DEAR MYSTERIES』にも大いに期待したい。(森)


























