Aqours、ドキュメンタリー映画に記されたものとは――使命の先にあるリアル、シリーズへと発展した軌跡

 『ラブライブ!サンシャイン!!』発のスクールアイドル Aqours。その10年間の軌跡を、今年6月に開催されたフィナーレライブ『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours Finale LoveLive! ~永久stage~』までの3カ月で行われた密着取材を通して描いたドキュメンタリー映画『Aqours Documentary』が9月26日に公開された。9月29日には映画レビューサービス Filmarksにて、「9月第4週公開映画の初日満足度ランキング」にて1位を獲得(※1)するなど、ドキュメンタリー作品として非常に高い評価を受けている。そんな本作は、Aqoursを好きなファンだけでなく、『ラブライブ!シリーズ』のファンであれば一見の価値があると言っていいだろう。

 本作は、いかにAqoursが逆風の中から生まれ、コロナ禍を経てフィナーレへ至ったのかを描いている。メンバーやスタッフの口から赤裸々に語られるドキュメンタリーであると同時に、彼女たちの軌跡を通して、『ラブライブ!』がどのようにして“シリーズ”へと発展していったのか、そして普段は表舞台に立たずに支える役目を担う人々が、どのような想いを持って『ラブライブ!シリーズ』を紡いでいるのか――。その一端を教えてくれる、歴史の教科書としての役割を担っている。

 以降、『Aqours Documentary』の内容に触れていくため、本編を未視聴の場合は注意しながら読み進めてほしい。

映画に刻まれた、Aqoursに命を懸けてきた者たちの生き様

【劇場公開記念PV】映画「Aqours Documentary」大ヒット公開中!

 まず、序盤で最も印象的なのは、プロジェクト開始当初「Aqoursはμ'sに触れない」という箝口令が敷かれていたことだろう。当時からその存在はファンのあいだでもに囁かれていたが、コンテンツ側がそれを事実として口にするのは衝撃的だった。その対応が正しかったのか否かは結果論でしかないため、論じるに値しないとしてここでは触れない。ただ、『ラブライブ!』をシリーズへと繋ぐ過程で、キャストだけでなく多くの人物が葛藤を抱えていたことは事実だろう。現在、『ラブライブ!』はシリーズとして大成し、多くの後輩スクールアイドルも誕生したが、その始まりには葛藤と苦悩があったことを現在に伝えている。

 同時に、重すぎる看板を背負い、厳しいバッシングに晒されながらも、それでも進み続けたAqoursのそばには、いつも彼女たちを支える存在があったのだと再認識させられるだろう。中でも、1stライブでの「想いよひとつになれ」の一件は印象深く、曲をあえて中断させるという音楽プロデューサーである大久保隆一の気遣いと、2回目は成功させるという、まだ駆け出したばかりの彼女たちへの信頼が滲んでいた。そして、メンバーにも劣らないほどの熱量と覚悟がステージの裏にも充満していることを感じるのには、その一幕だけでも十分だった。スクリーンの中には、キャストだけではなく、Aqoursに命を懸けてきた者たちの生き様が確かに刻まれている。こうしてスタッフ陣にもフォーカスを当てることで、『ラブライブ!シリーズ』はステージに立つ者たちだけの物語ではなく、プロジェクトに携わる全員が当事者であり、“みんなで叶える物語”なのだと再度実感させてくれるのだ。本作は『ラブライブ!シリーズ』が始まった15年も前から、変わらないコンセプトをより強固にしてくれる作品としても機能している。

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