『蓮ノ空』による『Fes×LIVE』とは? ライブ形態の面白さ、『ラブライブ!』シリーズにおける革新性

 『ラブライブ!シリーズ』の華と言えば、スクールアイドルによる渾身の楽曲を用いたライブだろう。それは部活動に励む少女たちの練習の成果であり、限りある時間の中で生まれる二度とない感情の結晶でもある。ゆえに、物語としてはエピソードの集大成として、カタルシスをファンに与える重要なセクションとして機能してきた。

 そんな少女たちの晴れ舞台であるライブシーンは、15年の歳月の中で進化を続けてきた。特に、『蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』(以下、『蓮ノ空』)の、3Dモデルを利用したバーチャルライブ『Fes×LIVE』は、シリーズに新たな体験をもたらした。VTuberの台頭により、バーチャルな存在が一般に浸透した現在では、バーチャルライブそのものは珍しくないだろう。だが、こと『ラブライブ!シリーズ』とバーチャルライブの組み合わせは、多くのバーチャルシンガーとは異なる意味を持っているのだ。

 10月4日、5日に開催される5thライブ『みらくらぱーく! presents Heart Stage cross Bloom Days Extra ~Fes×ReC:LIVE~』公演では、録画された映像を用いた『Fes×ReC:LIVE』も行われる。そこで、本稿では現在に至るまでの『蓮ノ空』の『Fes×LIVE』の魅力について書き記していきたい。

過程を含めて“ライブを体験できる”『Fes×LIVE』

 まず、簡単に『Fes×LIVE』の概要について解説しよう。『Fes×LIVE』とは、アプリ「Link!Like!ラブライブ!」内にて、隔月で配信されるバーチャルライブイベントのことだ。年度によって開催頻度は変わるが、基本的には「開催までの日々で起こったイベントの集大成」という位置付けのライブになる。そのため、『Fes×LIVE』は、『蓮ノ空』にとってアニメの各エピソード終盤に差し込まれるライブシーンに相当すると考えていいだろう。

 そんな『Fes×LIVE』は、『蓮ノ空』のコンテンツの性質と非常に相性が良い。前提として、『蓮ノ空』は作中の時間と現実のカレンダーが連動した、リアルタイム性を特徴としているコンテンツだ。そのため、今この瞬間にもメンバーはライブに向けて日々練習を重ねている。それを証明するように、2023年の8月度『Fes×LIVE』では、キャラクターの練習風景がショート動画で随時更新され、ステージまでの過程がリアルに演出されていた。カレンダーに沿って日々を過ごし、ライブを迎えるという点こそ、『蓮ノ空』が提供する新たな“『ラブライブ!』体験”のひとつだ。

蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 「夏めきペイン」 ライブビデオ from 103期8月度Fes×LIVE 〜

 たとえば、アニメなどでは30分という限られた枠の中で物語を描くため、ライブに至るまでの過程はある意味スピード感をもって、シームレスに展開されていく。一方で、『蓮ノ空』では突然ライブが始まったりはしない。告知された開催日まで、指折り数えながら過ごす“ライブに至るまでの過程”を、スクールアイドルと同じ時間感覚で味わうことができるのだ。過程を含めて“ライブを体験できる”という要素が最大限に発揮されたのが、2025年1月に行われた『ラブライブ!』決勝大会プレーオフだろう。ステージでのパフォーマンスだけでなく、夢の祭典へ着実に歩を進める彼女たちへ声援を送る日々も含めて、『ラブライブ!』をリアルタイムで応援したという体験は、ファンの方にとっても宝物となっているのではないだろうか。

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