『蓮ノ空』は『ラブライブ!』が掲げる「“いま”が最高」を体現できるか 未知なる挑戦を続ける手探りの旅路

 「“いま”がいつだって最高に面白い」――これは10年以上前から変わらない、『ラブライブ!』シリーズが掲げ続ける信念だ。だが同時に、最も体現するのが難しい概念の1つでもある。なぜなら、明日が今日よりよくなる保証はどこにもないから。今、『ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ』(以下、『蓮ノ空』)が歩んでいるのは、そんな手探りの旅路である。

 『蓮ノ空』は、スクールアイドルたちの活躍を描く『ラブライブ!』シリーズの1つ。アプリ『Link!Like!ラブライブ!』を中心に、スクールカレンダーとリアルタイムで連動して、進行していくコンテンツだ。現実の時間とリンクしているため、毎年3月の卒業シーズンには、3年生のメンバーは卒業していく。さらに、メンバーが卒業してもコンテンツは区切りを迎えることはなく、次の展開へと歩みを進めていく。

 実際、2025年3月に乙宗梢、夕霧綴理、藤島慈の蓮ノ空女学院102期生が卒業したが、それから2週間も経たないうちに105期生が加入。102期生がいた時間はすぐさま“過去”になったのだ。今も102期生がいなくなったことに整理をつけられないまま、『蓮ノ空』と向き合っているファンも多いだろう。そして、それは残された在校生も同様だ。

3Dアニメ 活動記録/ストーリー 104期 第13話 「いずれ会う約束の桜」(ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ)

 卒業した102期生は、“蓮ノ大三角”の呼び名を持ち、それぞれが一等星のような輝きを持つ実力者だった。彼女たちが在学していた3年間、毎年『ラブライブ!』大会の決勝へ駒を進めていたという事実が、その存在がいかに突出していたかを物語っている。そして、そんなメンバーが一気に抜けたことは、今後の活動へ与える影響は無視できるものではない。特に、ユニット活動を主とする『蓮ノ空』では、その影響は甚大だろう。

 蓮ノ空女学院では、受け継がれてきた伝統の3ユニット、スリーズブーケ、DOLLCHESTRA、みらくらぱーく!のいずれかに所属するのが習わしとなっている。卒業した102期生も例外ではなく、それぞれユニットでの活動を通して、自身のスクールアイドル像を体現した。この2年間、ファンが観測してきた『蓮ノ空』のユニットは、まさに102期生の色が強く反映されたものだと言える。

蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ 「 いつでも、いつまでも 」 リリックビデオ(Link!Like!ラブライブ!)

 そんなユニットの指針とも言えるメンバーがいなくなった上、105期は新規メンバーゼロというある種のマイナスとも取れる状態からスタートを切ることになった。それは、ユニットに所属している本人たちが最も実感しているだろう。実際、102期生の卒業による影響は、活動記録(『蓮ノ空』におけるストーリー)内でも言及されている。中でも、DOLLCHESTRAが“再建期”というワードを使ったのは印象的だった。

これまで『ラブライブ!』で描かれなかった卒業後の“継承の物語”

 こうしたメンバーの卒業がもたらした影響に対し、どのような回答を提示するのか――。それは105期『蓮ノ空』における1つのテーマでもあり、『ラブライブ!』シリーズ初の試みともなっていく。

 メンバーの卒業と、それに伴うグループへの影響に関しては、過去のシリーズでも触れられてきた。たとえば、劇場版『ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie Over the Rainbow』では、3年生の卒業後、6人になったAqoursの葛藤が描かれていた。特に、3年生の存在の大きさ、それがなくなったことによる不安が彼女たちのパフォーマンスに影響を与え、『ラブライブ!』大会優勝校とは思えないミスをしていたのが印象的だった。最終的に、卒業生とのライブで得た気づきを胸に、新たに6人のAqoursのはじまりが描かれたのだが、映画はそこで幕を閉じる。スクリーンに設けられた100分という時間の中では、この先6人のAqoursが獲得していく“らしさ”までは詳細に描かれなかったのだ。

冒頭映像7分公開!「ラブライブ!サンシャイン!!The School Idol Movie Over the Rainbow」

 このように『ラブライブ!』シリーズは、基本的に3年生の卒業とともにアニメの展開を畳む傾向にある。そのため、メンバー卒業後のグループが失った要素とどう向き合い、どのように変化していくのかまでを描いたシリーズは今までなかった。

 だが、メンバーが卒業しても歩みを止めない、リアルタイム型コンテンツである『蓮ノ空』ならば、それは可能となる。今の『蓮ノ空』は、シリーズが10年以上白紙のままにしていた問いへ挑戦しようとしているのだ。

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