最適なディストリビューション活用が“ヒットの可能性”を高める? SoundOnが提案する、TikTok時代に有効な施策

SoundOnが高める“ヒットの可能性”

 TikTokが提供している音楽ディストリビューションプラットフォーム「SoundOn」をご存じだろうか。2024年夏ごろに日本で正式にサービスがスタートしており、TikTokの月間10億人以上のグローバルコミュニティとつながることが可能。さらに詳細なデータ分析機能を提供し、公平なライセンス条件のもと、アーティスト自身による楽曲の管理を実現できるという。

 その中心にあるのはもちろん、TikTokでの施策。“TikTokで話題になり、サブスクリプションサービスでの再生数が上がる”という現代のヒットの法則を効率よく活用できるというわけだ。数あるディストリビューションサービスの中で、SoundOnならではの強みとは何か。TikTok Japanの若林潤氏に話を聞いた。(森朋之)

“現代におけるヒットの法則”に「SoundOn」はどう働きかけるのか

——まずはディストリビューターの役割について教えていただけますか。

TikTok Japan 若林潤氏
TikTok Japan 若林潤氏

若林潤(以下、若林):ディストリビューターを語る上で比較対象になるのは、音楽レーベルです。メジャーなレーベルには楽曲制作、宣伝プランニング、プロモーション、タイアップ、メディアブッキング、企業アライアンスなど様々な機能があり、それぞれの力を集結してアーティストを支えています。

 一方のディストリビューターは文字通り、ディストリビューション機能、つまり音楽配信や流通の機能に特化したサービスを提供する事業者を指します。提供するサービスの特長としては収益還元率の高さ、初期費用の少なさなどがありますが、アーティストにとっては自分たちで主導権を持てるのも大きなメリットだと思います。テクノロジーの発達、ソーシャルメディアの浸透などにより、今はどんなアーティストにもスターになれるチャンスがある。自分が信じた楽曲をダイレクトにユーザーに届けることでチャンスが広がっているわけですが、そのこともディストリビューターに注目が集まっている理由なのではないかと。現在はアーティスト自身がチーム編成を行い、「プロモーションはここ」「ディストリビューターはここ」と選定するケースも多くなっていますからね。

——それに伴ってディストリビューターも増えていますが、その中でSoundOnの特長や強みはどこにあるのでしょうか。

若林:やはりTikTokでのプロモーション、そして、グローバルなディストリビューションをオールインワンでご提供できることです。我々と連携しているアーティストの皆さんも、TikTokでのプレゼンスを高めたいと考えている方が非常に多いです。

 SoundOnの契約プランは大きく2つあり、ベーシックプランとアップグレードプランに分かれています。ベーシックプランは還元率がきわめて高い一方、TikTokにおけるプロモ—ションは限定的。アップグレードプランは還元率が一定程度下がりますが、TikTokでのプロモ—ションのサポートは手厚い。アップグレードプランは、ストリーミングの再生数などが一定の基準を満たす場合に適用されますが、我々の強みを実感してもらえるかと思います。

——具体的な施策については?

若林:まずはTikTokクリエイターとのコラボキャンペーンです。フォロワー数などの基準を満たしたクリエイターの方々に当該楽曲を使った動画を投稿してもらい、トレンドの火つけ役になっていただく。そこをきっかけにして一般のユーザーの投稿トレンドにつなげるというわけです。

TikTok Japan 若林潤氏

 大きな成果を得た楽曲の一つが、舟津真翔さんの「一目惚れ」。昨年5月のリリース時からSoundOnを通して配信してキャンペーンを行った結果、総再生数が16億回を超え、「TikTokトレンド大賞2024」のミュージック部門賞を受賞しました。神が残した夢を喰う。の「雨」も同じ手法でTikTokで話題を呼ぶことに成功し、各デジタルストリーミングプラットフォームでも長いスパンで再生数を維持しています。またRunaarという福岡出身の女性シンガーの「シュガリードライブ」という楽曲に関しては、キャンペーンが終了した後もTikTokでのトレンドが継続し、1カ月後に最も多い投稿数を記録しました。トレンドを起こしたのは我々のプロモーションがきっかけですが、話題が継続しているのは、楽曲がしっかりとユーザーに浸透した結果だと思っています。さらに「シュガリードライブ」は韓国のアーティストも投稿するなど、海外でも広がりを見せていますね。

——効果的な施策が打てれば、TikTokでのトレンドは作れると。

若林:いい曲はたくさんあるし、いいアーティストはたくさんいる。あとはどうやって知ってもらうか、どうきっかけを作るか、ですよね。これはすでに多くのアーティストが行っていますが、フル尺音源をリリースする前に、デモ音源などをどんどんアップすることも有効です。その中でヒットの予兆があるものをいち早く特定し、選択と集中で上に引き上げる。それが現代におけるヒットの法則だと思っていますし、そのスタンスは多くのアーティストやレーベルの方々にも賛同していただいています。あとは振付系の楽曲がトレンドになりやすい傾向があるので、たとえばバラードであっても、テンポを上げたバージョンに振付を乗せることでトレンドを作り、その後で正式なバージョンをリリースするという方法も増えているのかなと思います。

——トレンドの分散化も加速していると思いますが、その状況についてはどう捉えていますか。

若林:特定のコミュニティにおけるトレンドが数多く生まれている状況ですよね。ストリーミングやSNSのレコメンド機能もそうですが、「このセグメントの人にはこういう曲が適切」という機能が働くことによって、一定のコミュニティの中で話題になる楽曲が続出していて。ただ、よく言われるように日本中に知られているヒット曲は減っているし、そこで重要なのはやはりマスメディアの力だと思っています。特定のコミュニティの枠の中で起きたトレンドをさらに持ち上げ、より多くの人に届くような形で訴求するためにはマスメディアでのプロモーションが必要ですし、その波及力は今も非常に大きいのではないでしょうか。

“レーベルとの協業”によって理想的なヒットモデルの構築へ

——一方で、どこから火がつくかわからない楽しさもあるのでは?

TikTok Japan 若林潤氏
若林:そうですね。皆さんも実感していると思うのですが、これまでの感性とは違う楽曲が評価を得たり、新しい発見は常にあります。音楽業界におけるナレッジや過去のトレンドが覆っている部分があると言いますか。その一方で20年前に流行った曲がリバイバルすることも増えていますよね。功労者という位置にいたキャリアあるアーティストがシーンの最前線に出て最先端のアーティストとしてご活躍される。それもこれまでの当たり前の基準が変わってきていることの一つなのかなと思います。

——音楽業界で仕事をしている方々も常に価値観をアップデートさせ続ける必要がありそうですね。

若林:“どの曲がどんなトレンドを生み出すかわからない”という前提に立ったときに、どんな状態になっても最適な対応ができる環境を整えることが重要だと思っています。トレンドのサイクルはかなり速いので、ヒットが生まれそうな状況があるとき、いち早く動ける準備をしておくということですね。SoundOnのもう一つの強みは、キャンペーンやプロモーションのメソッド、リソースをフォーマット化していること。我々は常にデータを分析していますし、ヒットの予兆をいち早く検知できる。そこでチャンスが訪れたときに「こういうキャンペーンをやってみませんか?」とすぐに提案できるんですよね。

——とにかくスピード感が大事だと。

TikTok Japan 若林潤氏
若林:私は以前、メジャーレーベルで仕事をしていましたが、たとえば既存の楽曲が想定していなかったタイミングで跳ねたとしましょう。当然「いいチャンスだから、リバイバルヒットを仕掛けよう」と号令がかかりますが、具体的にどんな施策を打つのか、どの代理店とタッグを組むか……といろいろな問題が出てきます。そもそも社内でプロモーションの編成がされていない楽曲だから、宣伝予算をどう確保するかということもあるし、「そのためには承認を取って……」といろいろやっているうちにせっかく起きかけたトレンドがダウンしてしまうことがあります。

 もしSoundOnに楽曲を預けてもらっていたら、ストリーミングで好調の反応が出たタイミングに、瞬時にパッケージ化されたソリューションを提供することで、スピーディに次の施策が打てる。自然発生的に生まれた第1波、SoundOnで仕掛ける第2波、その間にアーティストサイドで準備したプロモーション施策を追加することで、第3波を作れると思うんです。そうすることでヒットの可能性をより高められるのではないかと我々は考えています。

——なるほど。レーベルとの協業ということですか。

若林:それはまさに我々も模索しているところです。海外の他の地域のSoundOnではすでにメジャーレーベルとの協業が始まっており、日本国内でも一部ではありますが始まっているんですよ。最初に申し上げた通り、我々はディストリビューション機能に特化しているので、テレビやラジオへのブッキング、ドラマやアニメなどのタイアップなどはそこまで行っていない。逆にそういうサービスを増やすことでレーベルとの差別化ができなくなり、サービスの効率が落ちれば本末転倒ですからね。そこはこれからの課題になってくるかもしれません。

 私自身かつてレーベルにいましたし、アーティストマネジメントの経験もあって。新人アーティスト育成に関わったこともありますし、K-POPを担当していたこともあるのですが、その後、コンサルティングの分野やプラットフォームの事業に携わり、外からエンターテインメント業界を見ることで気づいたこともかなりあるんです。そうやって俯瞰できた経験が、SoundOnにも活かされていると考えております。

 それを踏まえてお話すると、楽曲のヒットのスケールを「0→100」としたときに、「0→1」の部分、つまり楽曲を生み出すのはアーティスト本人や音楽プロデューサーの責務ですよね。そこから「1→5」くらいまではアーティスト自身やマネジメントの力でなんとか伸ばしていただいて、その先の「5→30」あたりまで持っていくところで、我々SoundOnがご協力できるのかなと。SoundOnのメソッドやリソースであるTikTokの活用、デジタルストリーミングプラットフォームへのピッチングなどを含めて「30」まで引き上げ、それをさらに「50」「60」「70」までスケールさせるためには、またパートナーシップの在り方が変わるんですよね。そこからは、例えば「TikTokで10億回再生」という実績をもとに地上波の音楽番組に出演したり、アニメやドラマ主題歌に抜擢されるといったタイアップなどが効果を発揮し、さらにそれらがまたTikTokでも話題になる。この循環によって「30」以降のスケールが実現していく。また、このブッキングや、タイアップはメジャーレーベルが得意とする領域かと思います。そういった意味でもレーベルとの協業によって、両者の強みを活かしたモデルを構築できるのではないかと考えております。

TikTok Japan 若林潤氏

——ヒットのプロセスの過程で、プロモーションの座組が変化すると。レーベルとディストリビューターの関係性もそうですが、とても興味深い提案だと思います。

若林:契約の方法にもいくつかあって、TikTokに合いそうな楽曲ができたときに「この曲だけSoundOnに預けよう」というやり方もあるので、そこはいい意味でご活用いただけたらなと思います。

 レーベルとの協議のお話にも触れましたが、一方で個人のアーティストさんにも気軽に利用していただけるサービスにもなっています。日々多くの音楽施策に接する我々に蓄積された知見を、アーティストの方々に共有することもありますから、アーティストさんにとって、SoundOnが使い勝手のいいサービスになっていけたら、と思っています。

◾️イベント情報
音楽ビジネスユニットCultivation主催
『Cultivationセミナー#01 - TikTokが提供する音楽ディストリビューションプラットフォーム「SoundOn」を学ぶ』
若林潤氏もゲスト出演し、SoundOnの特徴や魅力を直接聞くことができる音楽セミナー。

・日程:11月18日(火)17:00〜19:00(予定)
・場所:都内某所(後日お知らせ)
・応募フォーム:https://tinyurl.com/mrda87bx
※締め切り期限あり

SoundOn site:https://tinyurl.com/dj9hjsxf

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