櫻坂46は過去に類を見ないアイドルへ――新たな名を授かってから5年、なぜ“ライブアーティスト”となれたのか?

 櫻坂46が開催した『5th TOUR 2025 "Addiction"』は、紛うことなきグループの“最高地点”を示すツアーだった。それはツアーファイナルの舞台となった櫻坂46にとって初の京セラドーム大阪に、坂道グループ史上最大規模となる東京ドーム3DAYSというキャパシティだけでなく、パフォーマンスとしても圧倒的な気迫と熱量を放つライブだったからだ。

 筆者も、7月24日の東京ドーム初日を現地で、8月24日の京セラドーム大阪公演ツアーファイナルを配信で観ていた。度肝を抜いたのが、MCほぼなしのぶっ通しのライブであること、そしてアクロバットチームやサーカス団が登場するステージ演出だ。

 3時間近くあるライブのなかでMCはわずか2回。VTRも挟まれはするが、そのぶん、多くの楽曲の間奏やアウトロがアレンジされ、ダンストラックと化している、ひたすら踊りまくるライブ構成となっていた。特に本編終盤の「UDAGAWA GENERATION」「何歳の頃に戻りたいのか?」「もう一曲 欲しいのかい?」「承認欲求」「Make or Break」という怒涛の畳み掛けには、圧倒されるばかりだ。櫻坂46を特集した『SWITCH Vol.43 No.10』(スイッチ・パブリッシング)でのインタビューで、ライブ演出を務める野村裕紀氏は今回のライブ構成を“ノンストップライブ”と呼んでいる。ツアータイトルにも冠されているアルバム『Addiction』がインタールードで曲間を繋げたライブを意識した作りになっていることがそのきっかけにあり、「ノンストップライブという形式は櫻坂にとってのひとつの“型”になり得るんじゃないかという手応えを感じています」とも話している。

櫻坂46『Addiction』MUSIC VIDEO

 ほかのグループアイドルでは、=LOVEが数年前からMCほぼなしのライブ構成で、いつしかそれが当たり前の状態となっている。かつて、モーニング娘。'19が『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019』にてMCなしで50分のステージを完走したのは、アイドルファンのあいだでは語り草となっている話だ。それぞれグループのスタイルもファンから求められるものも違っており、一度上げたハードルは下げることはできなくなるが、その代わりに得られるのは、パフォーマンスに優れたライブアイドルの称号。大きなライブが終わったあと、ファンの感想としてSNSに流れてくるのが、そのグループに求められているものの表れ(AIに左右されもするが)とも言えるが、東京ドーム公演以降に多く投稿されていたのが、踊り続ける櫻坂46に魅了されたという声だった。

 筆者が感じたのは、過去の自分たちに負けたくないという思い。それは山﨑天のソロダンスによるオープニングから「何歳の頃に戻りたいのか?」へと繋げた昨年の東京ドーム公演がパフォーマンスとしても、客入りとしても、いわゆる“成功体験”として多くのBuddies(ファンの呼称)に記憶されているからこそ、また違った形で今の櫻坂46の“最高地点”を見せなければいけない。

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