D-LITE、“日本との繋がり”を大切に届けた心温まるステージ BIGBANGとしての次なる活動も示唆

D-LITE アジアツアー横浜公演レポ

 BIGBANGのボーカルとしての活躍はもちろん、日本を中心にソロアーティストとしてもキャリアを積み重ね続けてきたD-LITE。今年の春には本国・韓国で初となるミニアルバム『D’s WAVE』をリリースした彼が、8月30日と31日の2日間、『D-LITE 2025 ASIA TOUR [D's WAVE] IN JAPAN』の横浜公演をぴあアリーナMMで開催した。ここに掲載するのはその1日目の公演の模様だ。長いキャリアを持つ彼だが、韓国に始まり、東南アジアに台湾、オーストラリアまで、アジア全体を回るツアーをソロで行うのは今回が初めて。キャリアのターニングポイントとなるツアーだけに音楽とファンへの思いが溢れるステージで、とりわけソロキャリアの出発点となった日本への彼の思い入れが伝わってくるような、とてもハートウォーミングで清々しいパフォーマンスだった。

 最初に断っておくが、筆者が彼のソロライブを観るのは今回が初めて。BIGBANGはもちろん知っているが、熱心にその活動をフォローしてきたわけではない。しかし、そんないち音楽ライターの目と耳にも、D-LITEというアーティストのすごさと、音楽やファン、そして自身を育んでくれたグループへの愛情の深さはしっかりと届いてきた。筆者のような音楽ファンが、このレポートをきっかけにD-LITEの面白さと魅力を発見してくれたら、とても嬉しい。K-POPのスーパースターであることは言うまでもないが、そのスーパースターとしての存在感とは別に、ひとりの実直なシンガーとしての彼の姿が、ぴあアリーナMMの巨大なステージには確かにあったのだ。

D-LITE ライブ写真

 開演時刻、ステージのスクリーンにオープニングムービーが流れ、バンドの演奏が始まる。そしてステージ中央からD-LITEが姿を現した。その顔にはこの瞬間を待ち望んでいたかのような満面の笑みが浮かんでいる。そしてリズムに体を委ねながら、『D’s WAVE』のリード曲である「Universe」を歌い始める。ステージの上下から火花が吹き出し、スクリーンには宇宙規模の映像が流れる。そのスケール感もさることながら、エモーショナルな歌声に耳を奪われた。アリーナを埋め尽くしたオーディエンスとの間で早速コール&レスポンスを生み出し、冒頭から高揚感に溢れる空間を作り上げていった。

D-LITE ライブ写真

 「日本の皆さん、元気でしたか! 僕の“ユニバース”へようこそ!」とエネルギッシュに挨拶をするD-LITE。「僕のことを呼んでくださってありがとうございます。皆さんの選択が後悔にならないように頑張りたいと思います」。日本語も堪能な彼らしく、その言葉に心がこもっている。続く「Last girl (with HAN YO HAN)」では「紹介します。マイメン! ハン・ヨハン!」とスクリーンにこの曲に参加しているラッパーのハン・ヨハンを登場させ、会場の熱気はさらに高まっていった。

 次の「JUMP」では練習したばかりのファンチャント(掛け声)も飛び出すなか、D-LITEは客席のあちこちに目を配りながら、ダンサーとともにパフォーマンス。花道で繋がったセンターステージでタオルを使った振り付けを繰り出すと、そのタオルを客席に向かって投げ入れて、悪戯っぽく笑っている。こんなことを言うのは野暮かもしれないが、歌っていても踊っていても、あるいは花道を歩いているだけでも、D-LITEはとても楽しそう。ステージに立って歌うことが、あるいはそれ以前にファンとこうして視線を交わしてコミュニケーションを取ることが、この人は本当に大好きなんだろうなと思わされる。そうした気持ちが乗っているからだろう、様々な楽曲で披露される歌声にも、一聴しただけで心を掴まれるような体温が宿っていて、それが会場の雰囲気をますます温かなものにしていくのだ。

D-LITE ライブ写真

 3曲を終えて彼が発した「始まってしまいましたね、いつ終わるかわからないMCが」という言葉からもわかる通り、ユーモアを交えたトークも最高だった。「この会場に初めて来たと思ったら、iPhoneがWi-Fiのパスワードを覚えていた」という冗談に始まり(ファンからすかさず指摘が飛んでいたが、彼は昨年、韓国の音楽番組のイベントでこの会場に立っている)、流暢な日本語に時折はさまる「음?」(日本語でいうと「まあ」とか「うーん」にあたる間投詞)という言葉にセルフツッコミをしたり、「昨日日本に来て築地……を写真で見ました」とボケてみたり(ちなみに後のMCではちょっとした下ネタなんかも挟んだり、「いろんな国を回るうちに日本語が英語っぽくなった」と英語風の日本語を披露したりもしていた)。そんな屈託のない人柄から、いきなり切ない「Falling Slowly」を歌い上げたりするのだから目が離せない。

 その後もライブは『D’s WAVE』の収録曲はもちろん、過去に発表したソロ曲からBIGBANG楽曲まで、彼のキャリアを総ざらいするような内容で進んでいく。そのなかで一際美しい光景が広がったのが、ファンにとっても特別なあの曲のカバーだった。冒頭に書いた通り、今回のツアーのメインテーマである『D’s WAVE』は彼にとって韓国でリリースする初のミニアルバム。そのアルバムができたのは「日本での活動のおかげ」だとD-LITEは言う。日本でのソロ活動の起点となったのは、2013年2月にリリースした『D'scover』というJ-POPのカバーアルバムだった。そのリード曲となったのが、斉藤和義「歌うたいのバラッド」だ。スクリーンに歌詞が映し出されるなか、歌詞の一語一語を丁寧に紡いでいく彼の歌が広いアリーナに染み渡っていく。最後のサビで彼は歌をオーディエンスに預ける。その後もこれまで日本でリリースされてきた「Rainy Rainy」に「Dress」、さらに昨年末のジャパンツアーで初披露され、今回の来日直前に配信リリースされた「Umbrella (Japanese ver.)」と、日本とのかかわりの深い楽曲が立て続けに披露された。ずっとその活動を近くで見てきた日本のファンにとっては感慨もひとしおだったろう。

D-LITE ライブ写真

 そこからBIGBANGナンバーのメドレー(「MONSTER」「Stupid Liar」「Oh My Friend」)を届けると、衣装チェンジを経てライブは後半戦へ。しっとりとした「Wolf」から、バンドによるセッションを挟んで「雰囲気を変えましょう!」と「Beautiful Life」へ。ファンチャントがバッチリ決まると、D-LITEはサムズアップをして笑顔を見せた。そして「Us Before」を終えると、息を切らし「今までの日本での活動のなかで、このライブがいちばん韓国語が多いですね。でもやっぱり歌って言葉の壁、ないですよね」と語りかける。その言葉で拍手を浴びながら、彼はこう言葉を繋いだ。「僕はSNSを全然やっていないので、皆さんに僕が普段何を思っているのか、どんな日々を過ごしているのかをなかなか共有できないんですね。それはちゃんとわかっていて、これからももちろんやらないんですけど(笑)」と冗談を交えながらも、彼が伝えたかったのは「ステージの上で自分の声で思いを伝えたい」ということだ。その思いの表れとして、ここで彼から日本のファンへの手紙が読み上げられる。その全文をここで記すことはできないが、スクリーンに映し出される直筆の日本語も含めて、彼がどんな気持ちをもってソロキャリアを重ねてきたかがとてもストレートに伝わってくる手紙だった。手紙を読み上げ、「僕にとって皆さんは勇気であり希望でした。その感謝の気持ちはどこで歌ってもずっと大切にします。これからも今まで通り、お互いの人生の友達として、人生の新たな1ページを作っていきたいと思います」と語るD-LITE。その言葉に、大きな拍手が送られた。

D-LITE ライブ写真

 そして大合唱が巻き起こった「WINGS」でライブを終えると、会場中にこだまする「カン・デソン」(D-LITEの本名)コールに導かれてアンコールがスタート。トレードマークのひとつでもある自らのドラムソロに始まり、再びのBIGBANGメドレーに「D-Day」、そしてコミカルなパフォーマンスが目を惹く「ナルバキスン(Look at me, Gwisun)」と、これでもかとアッパーな曲を畳み掛け、ぴあアリーナMMは熱いパーティ空間へと変貌した。

D-LITE ライブ写真

 と、ここでD-LITEからBIGBANGの今後について重要なアナウンス。メンバーであるSOLことTAEYANGがちょうど同日に日本でファンミーティングをやっていること、G-DRAGONもカムバックを果たして精力的にソロ活動を展開していることに触れ、「今年はソロ活動を頑張って、その力を来年は集められたら」と発言したのだ。来年はBIGBANGデビュー20周年の節目であり、グループとしての活動に期待が高まる言葉に、ファンからは大きな歓声が飛んだ。そして最後にファンへの思いを込めた「そばにいてよ」を披露。最後までオーディエンスとしっかり手を繋ぎながら、およそ2時間半の濃密な時間は終わりを迎えたのだった。

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