s**t kingz、セクシー3部作を経てさらなる表現の新境地へ! 2度目の武道館公演前に振り返る“4つの転機”

s**t kingz、表現の新境地と転機

 今や、「日本でいちばん有名なダンサー」と言っても過言ではないほどの活躍を見せているs**t kingz。そもそも、彼らの活動の幅はダンスだけにとどまらず、ダンサーではなく“表現者”と言ったほうがいいのかもしれない。そんなs**t kingzは、8月23日から全国ライブハウスツアー『s**t kingz Dance Live Tour 2025「s**p」』、ワークショップツアー『s**t kingz Dance Workshop Tour 2025』を開催。さらに6月からは3カ月連続で楽曲をリリースし、同ツアーを盛り上げる。また、ツアー後の10月31日、11月1日には2度目の日本武道館公演『s**t kingz Dance Live 2025 in日本武道館「LANDING」』の開催も決定。2025年も精力的な活動を見せる彼らの今に迫る。(高橋梓)

“セクシー3部作”で突き詰めた表現の極致

――まずは楽曲についてお話を聞かせてください。3カ月連続楽曲リリースをすることになった経緯を教えてください。

Oguri:ずっと新しい曲を作りたいという話はメンバーでしていたのですが、舞台『See』の上演が決まっていたので、なかなか動き出せなかったんです。その中で、ライブハウスツアーをすることが決まって、本格的に動き出そうか、と。いろいろと話し合いをしていたところ、「最近リリースした曲はハードに踊るものが多いよね」という意見が出まして。そこから、今回はセクシーに色気を出して踊りたいという話になったんですけど、“セクシー”にもいろいろあるじゃないですか。なので、無理矢理ひとつにまとめないで、“セクシー3部作”みたいなテーマでリリースしようか、という流れになりました。

kazuki:ツアーや公演があるたびに、淡々と一曲ずつリリースするのにちょっと飽きていた部分もあったんです。でも、3部作はやったことがなかったのでワクワクしたし、楽しそうだな、と。しかも、実際“セクシー”という概念は人によって違うじゃないですか。だったら、なおのこと、3つでひとつの作品になる“セクシー3部作”がしっくりきたんです。

――“色気”=“生命の巡り”がテーマとなっているそうですね。このワードはどう生まれたのでしょうか。

Oguri:最初に3部作それぞれどんな曲調にするのかと、それに付随するキーワードを出していったんです。1曲目は「sensitive」=“繊細”、2曲目は「dedication」=“献身”、3曲目が「toxic」=“毒性”と、ワードを出しながら、1曲目はちょっとトロピカルな雰囲気のある優しくてチルな音楽、2曲目は気持ちを全身でまっすぐ伝える曲、3曲目は毒々しい中に色気があって中毒性に繋がる危険さがある曲、と組み立てていって。その3曲にひとつの軸を持たせられないかと考えた時に、1曲目は植物などの命が生まれる瞬間をすごく大切に扱うこと、2曲目は力強く芽吹いて生い茂ること、3曲目は全盛期を迎えて枯れていく姿の美しさに誇りを持つこと……というふうに繋がっていきました。そこから、“生命の巡り”が生まれました。

shoji:ジャケ写もそれを表しています。

――そんな“セクシー3部作”の第1弾楽曲は、VivaOlaさんとコラボした「Spinship」です。個人的にMVの出だしの部分がすごく好きで、家で練習してしまいました(笑)。

Oguri:やっぱりそこが人気なんだ!

kazuki:あの出だしは結構こだわったので、嬉しいです!

NOPPO:「みんな、どこが好きなんだろうね?」って調査しているところなんです(笑)。

Oguri:出だしを挙げてくれたのは、2人目です。もうひとりはshojiくんの息子(笑)。

shoji:うちの7歳の息子は、家に帰ると「おかえり!」ってあのダンスをしながら迎えてくれます(笑)。大人にも刺さっているとわかってよかったです!

s**t kingz / Spinship feat. VivaOla -Performance Video-

――息子さんと感性が似ているようで嬉しいです(笑)。まずは、VivaOlaさんにオファーをした経緯から教えてください。

Oguri:VivaOlaさんの音楽性や歌声がめちゃくちゃ大好きで。すごくオシャレだし、色気があるんですよね。いつか曲を作ってほしいと思っていたアーティストのひとりでしたし、僕たちが考えていた作りたい曲にすごく合っていたので、お願いしました。

shoji:3部作の裏テーマに、「朝・昼・晩」というのもあったんです。そうなると、1曲目は朝がいいな、って。朝日が当たっているレースカーテンがなびいている部屋で聴いていて気持ちがいい曲と考えると、VivaOlaさんの声がドンピシャでした。朝の爽やかな色気、というか。

NOPPO:実際に話しても、すごく素敵な方で。打ち合わせでも、ニュアンスを細かく汲み取ろうとしてくださるんですよ。VivaOlaさんは、フラットな視線を保とうとしてくれていたというか。質問も、「僕が勝手にイメージしすぎてもよくないと思うんですけど、s**t kingzの皆さんはこんな方向性で考えていたんですか?」みたいな。だから、あんなにも景色が想像できる、精度の高い楽曲ができたんだと思います。

kazuki:方向性を決めるにあたって、いろんなアーティストの楽曲を出しながら「こういう雰囲気が近いですか?」と聞いてきてくれたんです。そのアーティストが、僕らの世代ど真ん中で。僕らに合わせてくれていたのか、好きな音楽が似ていたのかはわかりませんが、すごく頭がいい方なんだなと思いました。話もめちゃくちゃわかりやすかったよね。

NOPPO:あとさ、イントロがウィスパーボイスで始まったじゃん? あれって会話の中で出てきたアイデアじゃなかったっけ?

Oguri:デモが最初に上がってきた時に、「ウィスパーボイスの感じが好きだから、もうちょっと広げたい」みたいな話はしたかも。最初ウィスパーボイスは一瞬だけだったんですよ。

shoji:そうだったかも。あれから楽曲がガラッと変わったよね!

s**t kingz(撮影=梁瀬玉実)

――今作に限った質問ではないかもしれないですが、「Spinship」を作る時、踊りたいダンスのテイストが先にあったのか、それとも作りたい音楽が先にあったのか、どちらだったんですか?

shoji:ダンスのテイストはもともと(イメージが)あったかも。セクシーだけど腰を振る系じゃないダンスというか。爽やかな踊りの中でセクシーな部分を見せていくというようなダンスのニュアンスは、それぞれの軸としてあったと思います。

Oguri:喩えると、方位ですよね。東西南北の4カテゴリーがあったら、東向きで構想していたけど、出来上がったら東南東だった、みたいな。

kazuki:最終的なダンスがカチッとハマるのはもちろん曲ができてからなんですけど、目指している方向性は曲を作るオファーをする時点で棲み分けなければいけないので、気をつけていました。

――となると、曲を作っている最中に「こういう音がここにあったらダンスでこんな表現もできそうだよね」という会話が起きそうです。

kazuki:ありました。それこそウィスパーボイスもそうだよね。ウィスパーボイスが増えたバージョンのデモをもらった時、当初はアウトロがついていたんですけど、「そのままスッて終わっても素敵じゃない?」という提案をしたんですね。そうすることによって、ダンスの終わり方が変わるんです。そういう提案は、楽曲の途中部分にもいくつかありました。

Oguri:僕らから「こういう踊りがしたいからこういう音を入れてほしい」というリクエストをすることもあるんですが、今回は振りを作っている時に「こんな音があるんだ!」と発見がありました。自分たちですべてをやり切っていないからこその驚きと、そこから生まれる新しいアイデアがあって。「Spinship」の制作を通して、やりすぎないほうがいい時もあるということを学びました。

NOPPO:そのほうがいい意味で雰囲気で聴ける時もあるよね。空間を味わえる。ウィスパーボイスの部分なんかは、“芽吹き”っぽいですよね。僕らも1番が終わったあとに小さく動いていて、芽吹きを抽象化して踊っていて。そういうのも、すべて自分たちでやっていないからこそ、できた動きだと思います。

――まさにVivaOlaさんとの協業で生まれた作品ということですよね。ちなみにレコーディングはOguriさんが立ち会われたそうですね。VivaOlaさんのコメントには「刺激的で楽しい体験でした」とありましたが、心当たりのほどはいかがですか?

shoji:あはははは!

kazuki:本当に刺激を与えたのか!?

Oguri:いやあ、どうなんでしょうか(笑)。むしろ、僕がVivaOlaさんの正確さに衝撃を受けて。そもそも揺るぎない完成度がありつつも、そこから微調整を意図して重ねていくんですよ。

shoji:精密なんだ。

Oguri:そうそう! リズムもものすごく敏感にキャッチするので、僕が聴いていても違いがわからないくらいの調整をしていくんです。まず、それに驚きました。僕はs**t kingzが曲を作る時のレコーディングで「遠慮してもしょうがない」とわかったので、圧倒的に知識量は少ないけど、「こうしたい!」と思ったことは言うようにしているんです。今回もいろいろ言ったかもしれないですね。それを刺激的と言ってくれているなら、嬉しいです。

――お互いに刺激があったというわけですね。

Oguri:そうだといいですよね。VivaOlaさんのイメージで入れてくださった音があって、レコーディングの時に「もちろんやらなくて全然いいんですけど、こんなダンスのイメージがあったんです」と教えてくださって。出だしの順番に振り返るところ。

kazuki:言ってたね!

Oguri:昔のアメリカのボーイバンドみたいなイメージだったらしくて。採用させていただきました。

――あそこは“Choreograph by VivaOla”だったんですね。皆さんが振りを作られたパートも音とテーマが可視化された素晴らしいダンスでしたが、いつもと同じような流れで考えられたのでしょうか。

kazuki:そうですね。でも、「頑張らないようにしよう」というのは、みんなの最初の決めごととして設けました。堅く詰めて作ろうと思えば作れるんですけど、それがやりたくて作った曲ではないから。塩梅が難しいんですよね。ただ自分たちが気持ちよく揺れているのは自己満ですし、見ている方には何も響かない。その隙間を突きながら振りを作るのは新鮮でした。

shoji:僕、この振りを踊るのめちゃくちゃ難しいと思っています。

kazuki:練習不足?

NOPPO:取材で詰められてる(笑)。

shoji:(笑)。すごく繊細なので雑には踊れないけど、でも力を入れて踊るのは違うし。抜く繊細さ、というか。さっきOguriがVivaOlaさんが緻密に調整してくださったと言っていましたが、振りも同じ感覚だったんです。ほかの3人と違うところで力を入れちゃうと見ている方が「うっ……」と思ってしまう。かといって、だらだら力を抜きすぎると弱くなってしまうし、神経を使う、難しい踊りなんですよね。だから早くこのダンスをリラックスしながら踊れるようになりたいと思っているんですが、皆さんはもうできているんですか?

kazuki:まあ、練習したからね。

NOPPO:いっぱい踊ったし。

Oguri:撮影も気持ちよく踊れた。

shoji:俺だけ!?

kazuki:(笑)。でも、練習している時は、自分の踊りを客観的に見てみないと、どうなっているかわからないレベルではありました。感覚が絶妙すぎて、見た目としてどう見えてるのかなって。鏡を見ながら踊っているだけだとわからないので、家に帰って映像をチェックしました。「こっちは堅すぎるな」「もうちょっと必死さをなくしたいな」とか、いつも以上にごまかせない感じがしていました。

s**t kingz(撮影=梁瀬玉実)

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