牧野由依、極上の音楽を届けたアニバーサリーパーティー! 20年間歩み続けた理由――終演後インタビューで明かす想い

【インタビュー】“アーティスト・牧野由依”の20年――終演直後に語った特別な想い

――今の率直な感想をお聞かせください。
牧野由依(以下、牧野):この1カ月、岩井俊二監督のサウンドトラックライブ(『岩井俊二 The Music Works:30th Anniversary of "Love Letter"』)でピアノを弾かせていただいたり、香港のイベント『ACGHK2025』でライブを行ったりと、いろんな場所で牧野由依を観ていただく機会があったなかで、会場のみんなが楽しみにしてきてくれた空気感にすごくほっとしたのが、ステージに出て最初に感じたことでした。距離が近くて皆さんのお顔も拝見できたので、香港でお会いした方や久しぶりにいらしてくださった方のこともわかりました。
――あらためて、20年活動を続けてこられたことへの感慨も沸いたのではないでしょうか。
牧野:私自身、長く続けてきた実感が実はあまりないんですよ。中身が追いついてないんじゃないかって不安に思うくらい(笑)。デビュー当時は、歌や声優の経験がほぼない、普通の音大生だったので、こんなに長く続けられるとは思っていなかったですし。そんな私が、今日こうしてステージに立てていること自体がすごいなと思うんです。「続けてきたから」というよりも、「やめなかったから」という感覚のほうが近いかもしれないです。声が出なくなった時期もありましたし、やっぱりお仕事として大変さを感じる瞬間も何度かあったけれど、それでもやめなかったっていう。
――なぜ、やめずにここまでこれたのだと思いますか?
牧野:やっぱり、すがった部分があったんでしょうね。今日のようにステージに立って楽しい時間を過ごすと、その感覚は絶対に忘れられないので。どれだけ大変で、「キツいな」と思うことがあっても、自分のなかにその感覚があるからやめることはないし、やめられないんだと思います。

――今回のイベントは、声優、歌手、ピアニストと多面的な顔を持つ牧野さんにしか表現できないステージだと感じました。中身を作るうえでどんなことを意識しましたか?
牧野:これまでいろんなトライ&エラーを重ねてライブを作ってきたのですが、今回はピアノと歌にフォーカスしたステージングを意識して詰め込みました。デビューした当時は、私が音大出身だったこともあり、クラシック音楽をもっと身近に感じてもらいたくてクラシックコーナーを作ったりしていたのですが、今回はタッキーとの連弾という形で、そういう部分も楽しんでもらえたらと思いまして。選曲も、自分の曲を年代順に並べて一気に駆け抜けることで、20年の軌跡を走馬灯のように辿っていければと考えていました。
――その他の歌唱楽曲のセレクトにも、20周年ならではのこだわりを感じました。
牧野:ありがとうございます! 「アムリタ」は、普段のコンサートだと後半に持っていきたくなる曲なのですが、今回は『アペリティフはアムリタで』というイベントタイトルにかけて、始まりの短い曲「you are my love 」はお品書き、「アムリタ」はまさにアペリティフ(食前酒)、連弾メドレーはメインディッシュというようなイメージで、全体がコース料理のようになればいいなと思ってセットリストを組みました。タッキーが書いてくれた楽曲のコーナーは「肉か、魚か、滝澤か」みたいな感じです(笑)。

――(笑)。滝澤さんコーナーの「たったひとつ」は、とても想いがこもっていて感動しました。MCでもお話しされていましたが、他界されたお父さまへの気持ちが募ったとのことでしたが。
牧野:まさか自分も泣くとは思わず(笑)。もちろん、この曲の歌詞を書いた時もしっかり地に足をつけた気持ちを込めたんですが、親を亡くすとは(当時は)思っていなかったので。ずっといてくれるものだと思っていたんですよね。
――お父さまは作曲家の牧野信博さんで、牧野さんがピアノを始めたきっかけの方でもあるんですよね。
牧野:そうなんです。それこそデビューの時もいろいろ支えてもらっていたので。タッキーがライブのサポートをしてくれていた頃、よくうちにきてもらって練習していたんですけど、父もキーボーディストだったので、「滝澤くん、ここはこうしたほうがいいよ」というふうにアドバイスしてくれていたんです。私が仕事で地方に行っている時に、実家でふたり(父と滝澤)で飲んでる写真が送られてきたこともありました(笑)。だから、タッキーの弾き方はうちの父とちょっと似ているんですよね。つい思い出してしまいました。ちょうどお盆ですし、もしかしたら父も観にきていたんじゃないかな?
――いろんな意味で、今日歌うことができてよかった曲かもしれませんね。
牧野:本当にそうですね。「やめない」というのは、父がずっと言っていたことでもあるんです。私はまさかこんなに長く続けられるなんて思っていなかったけど、父は「やめない」ということをずっと信じてくれていたので。今日は母も観にきていたので、余計にウルッとなってしまいました。ファンの方はもちろんですけど、身内の支えをすごく感じる瞬間でしたね。出産を経て自分のライフスタイルが変わったなかで、今はあらためていろんな方たちに感謝するタイミングだと感じています。
――次回のコンサートの予定も発表されました。20周年のアニバーサリー楽曲の制作も決まっていますが、最後に20周年イヤーに向けての意気込みをお聞かせください。
牧野:アーティストの方にせよ、役者の方にせよ、それぞれがその人にしかできないことをしていると思うのですが、私もなかなかできない経験を小さい頃からさせていただいていて。そういった景色や経験をちゃんと繋いで残していくことを視野に入れて、また歩き出したいなと思っています。今までは、がむしゃらに走っていたらいつの間にか足跡が残っていたような感覚だったんですが、これからは自発的に自分の足跡をしっかりと残していきたい。楽曲でも作品でも何でも、自分のなかでどういうことをやりたいかを大事にして、モノづくりをしていければと思います。
























