『ラーゲリより愛を込めて』放送 ミセス「Soranji」、福山雅治「想望」「クスノキ」……生命の尊さを謳う主題歌

 8月11日夜9時より、戦後80年特別放送として映画『ラーゲリより愛を込めて』がTBS系で放送される。

 2022年12月に公開され、興行収入26億円を記録した『ラーゲリより愛を込めて』は、主演の二宮和也が『第46回 日本アカデミー賞』優秀主演男優賞、『第65回ブルーリボン賞』主演男優賞を受賞したことでも話題を呼んだ。舞台は第二次世界大戦後のシベリア。強制収容所に不当に抑留された日本人の山本幡男の、絶望的な状況の中でも希望を絶やさずに生き抜いた半生を描いた作品となっている。

映画『ラーゲリより愛を込めて』主題歌 Mrs. GREEN APPLE「Soranji」スペシャルMV

 そんな『ラーゲリより愛を込めて』の主題歌は、Mrs. GREEN APPLEの「Soranji」。美麗なストリングスと大森元貴(Vo/Gt)のファルセットボイスが儚げながらも強固な世界観を描き出す「Soranji」で歌われるのは“生命の尊さ”。弱さや孤独、傷や汚れを抱きながらも、わずかばかりの命だとしても、確かに光り輝く希望を絶やさずに生き延びようとする姿を〈我らは尊い。〉と力強く歌う。どんな生命も等しく、尊重されなければならないという、Mrs. GREEN APPLEからのメッセージ。それを伝える彼らが戦争を知らない若い世代を中心に支持を獲得していることは、この先90年、100年と“戦後”が続いていくなかで希望になるはずだ。

Mrs. GREEN APPLE「Soranji」Official Music Video

 『ラーゲリより愛を込めて』に先立って、8月8日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では2023年公開の『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』が放送された。福原遥演じる女子高生の加納百合が戦時中の日本にタイムスリップし、水上恒司演じる特攻隊員の佐久間彰に惹かれていくストーリーが描かれ、興行収入45億円を記録した作品だ。

『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』本予告90秒💐

 そんな『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』の主題歌は福山雅治の「想望」。儚げなストリングスとデジタルな打ち込みのビートが交わるサウンドは、過去と現在が交差する『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』と重なる。〈うちへ帰ろう ごらん夕焼け〉〈泣いたり笑ったり/食べたり眠ったり〉〈僕らは/いま/生きてる〉というフレーズは、我々が普段何気なく過ごしている“日常”や”生活”が平和の上で成り立っているものであることを再認識させてくれる。

福山雅治 - 想望(映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』Inspire Movie)

 福山は、現在公開中の映画『長崎―閃光の影で―』の主題歌「クスノキ ―閃光の影で―」のプロデュース/歌唱ディレクションを手掛けている。福山が2014年に発表した楽曲「クスノキ」に新たなアレンジを加えた「クスノキ ―閃光の影で―」は、菊池日菜子、小野花梨、川床明日香といった『長崎―閃光の影で―』のキャストが歌唱し、リレコーディング。長崎に原子爆弾が投下されたその日その瞬間を描く本作は、残酷な戦争の現実を映し出す。被爆樹木のクスノキをタイトルに冠し、〈黒い雨〉というフレーズも登場する「クスノキ ―閃光の影で―」には希望を絶やさないメッセージが込められている。

クスノキ ―閃光の影で― Produced by Fukuyama Masaharu(映画『長崎ー閃光の影でー』Inspire Movie)

『この世界の片隅に』は“終戦80年”に日本各地でリバイバル上映中

 戦争を描いた映画と言えば、2016年に公開された映画『この世界の片隅に』を思い起こす人も多いのではないだろうか。公開序盤は小規模での上映だったが、徐々に公開規模が拡大し、3年以上にわたって上映され、日本邦画史上最長のロングランを記録。『第40回 日本アカデミー賞』最優秀アニメーション作品賞など、さまざまな賞を獲得し、名実ともに日本を代表する作品となった。やわらかいタッチで描かれるアニメーションでありながらも、徹底的な時代考証で戦争を真正面から描き、当時の市民の目線から戦争を描くことで確かなリアリティを感じさせる作品となった。

映画『この世界の片隅に』予告編

 そんな『この世界の片隅に』の音楽には、コトリンゴの楽曲が使用されている。オープニングテーマはザ・フォーク・クルセダーズの「悲しくてやりきれない」のカバー。もともとコトリンゴが本楽曲をカバーしており、それを聴いた片渕須直監督が感銘を受け、起用したという。そんな『この世界の片隅に』は、現在終戦80年上映と題し、8月1日から15日まで日本各地でリバイバル上映されている。

 2025年8月15日には、日本は80回目の終戦の日を迎える。今この瞬間、そしてこの先もずっと“戦後”であり続けるためには、戦争がどれほどおぞましいものであるかを私たち自身が常に認識しなくてはならない。戦争を題材にした映画や平和を歌う音楽は、私たちにあらためて平和、そして生命の尊さを思い出させてくれるのだ。

Mrs. GREEN APPLE、映画『ラーゲリより愛を込めて』に重なる大森元貴の生き様 「Soranji」で歌った“繋がりを諦めない心”

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