「愛のかたまり」「5×9=63」「薄荷キャンディー」……KinKi Kidsサブスク解禁を機に知りたい2人の楽曲への想い

 KinKi Kidsがこれまでリリースしてきた全356曲が、5月5日0時よりサブスク解禁された。

 「まずはこれを聴いてほしいという曲を紹介する記事を……」と思いを巡らせたのだが、その選曲の難しいこと難しいこと。そもそも名曲が多すぎる。ご存知の通り、KinKi Kidsは1997年リリースのデビューシングル『硝子の少年』から最新シングル『シュレーディンガー』(2023年)まで、47作連続で「オリコン週間シングルランキング」1位を記録している。このシングル連続1位獲得年数も作品数もともに歴代1位を自己更新中ときた。

 しかも、その1曲1曲が持つエピソードも強い。2人で主演を務めたドラマ『ぼくらの勇気 未満都市』(日本テレビ系/1997年)の主題歌となった「愛されるより 愛したい」に、2人が吉田拓郎からギターを習った音楽バラエティ番組『LOVE LOVE あいしてる』(フジテレビ系/1996〜2001年)のテーマソングとして愛された「全部だきしめて」、KinKi Kidsとして音楽性のターニングポイントになったと語られる「ボクの背中には羽根がある」(2001年)や、堂本光一が踊り堂本剛がギターを弾く新たな表現で驚かせてくれた「薔薇と太陽」(2016年)……など、2人の挑戦と成長を象徴するような思い出深い曲ばかりで、「どれも外せない」という気持ちになるのだ。

 もちろん、これだけ多くの楽曲があると彼らが長らく歌っていない楽曲も出てくるもの。ところが、そんな“ご無沙汰”な楽曲さえも、ライブで「覚えてない曲やってみよう」というコーナーにしてしまうのがKinKi Kidsの面白さ。ステージ上で、いきなり渡された歌詞を見ながら2人がうろ覚えで歌い上げた「雨音のボレロ」は、それはそれで思い出深い1曲になっている。となれば、もはやどの曲をピックアップしてもハズレなし。そう腹をくくって、今回は思い切って5曲に絞って紹介したい。この記事が、より多くの人がKinKi Kidsの楽曲を楽しむきっかけになることを願って――。

KinKi Kidsらしさの王道「愛のかたまり」(2001年)

KinKi Kids「愛のかたまり -YouTube Original Live-」

 もはや説明不要とも言える傑作。カラオケで歌われているKinKi Kidsの人気曲ランキングでは常に1位に君臨し、KinKi Kids名義としては最後の作品となるベストアルバム『39 Very much』(2025年)のファン投票でも1位を獲得するなど、我々の心を掴んで離さない。

 この曲の魅力は、なんと言っても情緒的でドラマチックなサウンドと、女性視点で綴られるエモーショナルな歌詞。それを光一が作曲、剛が作詞を手掛けているというのだから、感服させられる。2001年にリリースされた13thシングル『Hey! みんな元気かい?』のカップリング曲として生まれた本曲。その誕生秘話を、光一が亀梨和也のYouTubeチャンネルにゲスト出演した際に、「KinKi Kidsらしさの王道を作ろうと思った」と明かしている。

 デビュー以来、マイナー調の楽曲を得意としてきたKinKi Kids。だが、YO-KING作詞作曲したシングル表題曲「Hey! みんな元気かい?」は、大人になった今でこそその歌の魅力を伝えることができるが、当時は上手く歌いこなせていないような感覚があったのだと話していた。そして「この曲ってKinKi Kidsに合ってるんだろうか?」という疑問を抱いたことから「KinKi Kidsらしい曲を作ろうって、反骨精神で作ったのが『愛のかたまり』」と語った。

 さらに「自分で良いところって言ったらおかしいけど」と照れながら、3音上の「ハモリやすさ」も想定して作ったのだと続ける。「カラオケとかで、こっち(主メロ)やりたいとなってくれたら」と、自分たちが歌うだけでなく、歌われていく楽曲になるようにと意識した、とも。光一がどうやって狙った通り、後輩アイドルをはじめ、多くの人に歌われてきた「愛のかたまり」。これからも大切に歌い継がれていく、みんなの宝物だ。

KinKi Kidsが作ったらこうなるメンバー紹介ソング「5×9=63」(2002年)

 一説によると、光GENJIから始まったと言われるアイドルグループのメンバー紹介ソング。一人ひとりの魅力を伝えることはもちろん、リレー形式で歌うことから「あのメンバーについて、このメンバーが歌う」という関係性を楽しめるという楽曲でもある。タイトルにはグループ名やメンバーの人数を示す数字が入っていることが定番でもあり、観客席にいるファンとの掛け合いがある場合も多く、ライブで盛り上がること必須だ。

 そんなメンバー紹介ソングのKinKi Kidsバージョンはと言うと、「5×9=63」と書いて「ゴクローサン」と読む。15thシングル『solitude 〜真実のサヨナラ〜』の初回限定盤に収録されたものだ。〈5963です 光一氏!〉〈5963です 剛さん!〉とアコースティックギターをかき鳴らし、即興ソングのように歌い上げる2人の自由な雰囲気に、何度聴いても思わず口角が上がってしまう。

 誰が作ったものかと思えば、作詞・KANZAI BOYA RED、作曲・KANZAI BOYA BLUE。KANZAI BOYAはKinKi Kidsと命名される前の2人のユニット名で、それぞれのメンバーカラーから、RED=光一、BLUE=剛ということがファンには伝わる。後に「ただただふざけただけのレコーディングだった」と、レギュラーラジオ『KinKi Kids どんなもんヤ!』(文化放送/以下、『どんなもんヤ!』)で光一が振り返っていた。「愛のかたまり」から「5×9=63」と、KinKi Kids共作曲の振り幅に驚かされるばかりだ。

 せっかく作られた「5×9=63」だが、2022年の『KinKi Kids Concert 2022-2023 24451〜The Story of Us〜』で、剛が「それでは『5×9=63』、聞いてください」と、曲振りしたことはあるものの、なかなかライブで披露されることはない。この幻のメンバー紹介ソングがライブで披露されることをいつまでも待ち続けている。

2人と歌詞に思いを馳せる楽しみもある「薄荷キャンディー」(2003年)

KinKi Kids「薄荷キャンディー」Music Video

 イントロのギター音が聴こえてくるだけで、ドームのステージに立ち、青白いサーチライトをバックに歌い出す2人を想像してしまう。歌い出しは剛。その繊細な歌声を受けるように光一の滑らかな歌声が包み込む。それぞれの個性を感じる歌声なのに、〈君しか〉で一緒に歌うところでは“KinKi Kids”という1人の歌声のように聴こえる。

 かと思えば、ラストにとんでもなく心地よいハーモニーを入れてくる。そんな歌声が溶け合う者たちは、そう出会えるものではない。しかも、同じ名字で、同じタイミングに事務所の門を叩いて……。どれだけの偶然が重なってこの歌声を聴くことができているのだろうと考えると、思わず胸がキュッとなる。それが、KinKi Kidsの歌から切なさを感じずにはいられない理由なのではないだろうか。

 そんな感傷的な気持ちにさせられる「薄荷キャンディー」だが、本人たちは無邪気に歌詞についてキャッキャと話してきたから、そのギャップもたまらない。CDデビュー25周年を記念して開催された2022年のドームイベント『24451 ~君と僕の声~』のMCで、光一が〈白い歯 舌見せて/微笑(わら)う〉の歌詞について「どういう顔?」と問い、口を大きく開いて歯も舌も見えるくらいに豪快に笑う女性なのではないかと、2人で議論したことがあった。

 さらに、それが作詞家・松本隆までTwitter(現X)を通じて届いていたことが『どんなもんヤ!』に寄せられたファンからのお便りで判明。松本が「笑。」(※1)とだけ反応していたことについて、「ヤバいやん、これ」(光一)、「大丈夫大丈夫」「だって、先生の詩についてこれだけ広げられる人いないでしょ?」(剛)と言いながら、2人で「ふふふふ」と笑い合っていたことを思い出す。「どういう顔?」と思いながら、こんなにも心を揺さぶる歌声で歌の世界観に引き込むなんて、改めて「KinKi Kidsってどうなってるの?」と言いたくなる、聴き込むほどに愛しくなる1曲だ。

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