藤井 風、Ooochie Koochie、DREAMS COME TRUE、Watson……“方言ソング”だからこそ伝わる気持ちの機微
音楽と言葉の関係性をあらためて考えさせてくれるもののひとつが、“方言ソング”の面白さである。イントネーションの揺れ、語尾のクセ、音のやわらかさや荒々しさ……標準語にはない響きがメロディと結びついたとき、言葉はただの情報ではなく絶妙な気持ちの機微を伝えてくれる。
奥田民生と吉川晃司によるスペシャルユニット、Ooochie Koochieの新曲「ショーラー」も、そんな方言ソングの魅力を鮮やかに体現している。6月25日発売のアルバム『Ooochie Koochie』に収録された本楽曲は、ふたりが故郷である広島への想いを込めて、全編を広島弁で歌い切ったロックナンバーである。恋に不器用な若者を叱咤激励する歌詞は、標準語では少し照れくさいようなフレーズも、方言でなら勢いや温かさをもって不思議と自然に届く。MVでは、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島や商店街など、広島県内のゆかりある場所を最新技術で再現し、2人が仮想の地元広島で熱唱する演出もユニークだ。さらに標準語訳を手がけたのは、同郷・広島出身でユニコーンのドラマーでもある川西幸一。地元に根ざした視点での訳詞が、聴き手への細やかな配慮として機能している。
方言ソングの歴史を語る上で外せないのが、DREAMS COME TRUEの「大阪LOVER」だろう。2007年にリリースされたこの曲は、大阪に住む恋人に彼女が会いに行く遠距離恋愛の物語を描いたラブソングだ。特徴的なのは歌詞の随所に大阪弁が織り込まれている点で、〈そやなぁ〉〈やんか〉〈やもん〉といった関西ならではのフレーズが登場する。彼女が恋人に想いを伝えるために不慣れな大阪弁を一生懸命使う様子が健気で愛らしく、方言だからこそ伝わる温度がある。同曲はキャッチーなメロディと相まって幅広い世代に愛され、発売から20年近く経った今でも色褪せない魅力を放っている。方言混じりの歌詞が生み出すユーモアと温かさが、遠く離れた2人の心の距離をぐっと縮めているのだ。






















