まおたの“部屋”から届けられた魂の歌唱 19歳のヒストリーを辿った初ワンマン『独演』を観た

パーカッシブかつアタッカブルなアコギの迫力、繊細でありながら力強く響く、魂の芯を撃ち抜くようなボーカリゼーション。凄まじいライブを目撃した……。
シンガーソングライター・まおたが、初ワンマン公演となる『Acoustic ONE MAN LIVE ~わすれものを探して、音す者は何処に。~「独演」』を2025年6月28日、下北沢DY CUBEで開催した。会場にはプレミアムなチケットを手にした50名の観客と、関係者が訪れた。
開演時刻を少し過ぎた頃、場内にカラスの鳴き声や街の雑踏のような環境音が鳴り響き、やがて“ただいま”と言わんばかりに玄関のドアが開閉される音とともにまおたが独りあらわれ、ルームライトのスイッチをオン。
そう、ステージセットはまおたの部屋をあらわしていた。
配信用のPCや“配信中”の看板、ヘッドホン、プラント(観葉植物)、けん玉、時計、メトロノームといった生活感あるアイテムが並び、アコースティックギターは2本をスタンバイ。「ただいま」という第一声を合図に、まおたは1曲目「一人ぼっちじゃないわたしの歌」を歌い出した。ラップめいたフロウと鋭く刺さる言葉たち。独白のような歌声に引き込まれていく。歌い終え、一言、「まおたワンマンライブはじめます。よろしくお願いします!」と挨拶。


そのままライブは、まおた自身のヒストリーを辿るメタフィクション的展開に。続いては、4年前X(旧Twitter)へ初投稿した未発表曲「気泡。」。さらに朗読の導入部を用いて、高校時代の夏のエピソードを描いた「向日葵」へと続く。そのまま朗読パートを挟み、現時点での代表曲ともいえる「ぼくらの選択肢」へ。言葉が鋭くスッと心に届き、ナイフのように胸を切り裂いてくるヒリヒリとした没入感高い名演だった。
「来てくださってありがとうございます! 見てわかる通り、ここはまおたの部屋です」と自らステージについて説明するなか、突然「すみませ~ん!」と、玄関の呼び鈴が鳴る。宅配業者から届いた荷物を受け取ると、そこには2枚のCDがあった。ライブ会場限定盤まおたのCD『独り音』と、よく見ればアヴリル・ラヴィーンのCDアルバム『Let Go』だった。「今日は、祭りでワンマンライブなので今日しか歌えない歌を持ってきました」と、アヴリル「Complicated」のカバーを披露。伸びやかな歌声が、会場の空気をぐっと和らげ、親近感あふれるひとときに。


続いて、鳥の鳴き声のSEからはじまったのは、未発表曲「烏兎匆匆」だった。本作は、ライブ会場限定盤CD『独り音』のボーナストラックとして収録された楽曲である。さらに、自身の生き方やスピリットを熱く語りながら未発表の「FASHION」を力強くパンキッシュにプレイ。そして寸劇パートへと移行。ノック音のあと、母親の声で「まおた!」と呼ばれ、喉の調子を整えるスロートコートティーをドア越しに手渡される。そんな日常の一幕を受けて歌われたのは、その名の通り未発表曲「Tea Break」。生活の中に宿る音楽の断片が紡がれていく。
ここからラストスパートへ差し掛かり、高校時代の苦い思い出となった初バイト経験から生まれた未発表曲「やってらんないよ」のエピソードが語られる。立ち上がりギターをパーカッシブに奏で、エネルギッシュなプレイで客席を盛り上げていく。

そして、筆者がまおたを知ったきっかけともなったコンピレーション作品『KNOW THE FUTURE』に収録され話題を呼んだ、はじまりの曲「獏」へ。さらに、「とあるアニメを参考に作った曲で、みんなで歌える曲を作りたかった」と語る未発表曲「奇人」では、会場全体が一体となり、コール&レスポンスの渦へ巻き込んでいく。
「ここがはじまりであり、今後もどんどん歌っていこうと思っています。今日は50名、ソールドアウトさせていただいてるんですけど。今後会場が大きくなっても今日ここにいる皆さんがいてくれたらとっても嬉しいです」と、思いの丈を語り本編ラストソングへ。
「今は、弾き語りでやらせていただいてますけど、今後どんな形になっても、好きでいてくれている人たちに聴いてもらえるように、広がっていけたらと思っています。この50人というキャパが、100人になろうと1000人になろうと、1万人になろうと、最大キャパは8万人? どんなに大きくなっても、まおたの音楽を聴いてもらえる人が増えたらいいなと思っています。そんな成長の曲で終われたらとこの曲を最後に聴いてください。いつもはライブでやらない曲です。『Real』」と、どこかクールで内省的な佇まいを持つメロディアスなナンバーを熱を込めて歌唱した。























