ずんだもんの『世界化計画』は“曖昧さ”を肯定する ストリートに接続しながらメジャーデビューを果たす意義

 曖昧を泳ぎ続けたずんだもんのアイデンティティの模索がリズミカルなフロウで描かれている「ラブリー・クエッショニズム」、ノスタルジックでアーバンなシティポップの「Daybreak」。とりわけ、この作品の輪郭を際立たせる1曲が、ボーナストラックとして収録された今は亡きボカロP・wowakaの「ワールズエンド・ダンスホール」だろう。1月の無料オンラインライブでも披露された同曲だが、ずんだもんの軌跡というフィルターを通すと、ノイジーなギターサウンドの中でストリートカルチャーとずんだもんの歩みとシーンのリスナーでもある若者の叫びが“集合体”となって、鮮烈な光が放たれた気がした。

〈散々躓つまずいたダンスを、そう、思い切り馬鹿にしようか〉

 ここまでぴったりな楽曲がほかにあるだろうかと疑うレベルの衝撃。これほどまでに多様な意味と感情を内包する楽曲に置き換わった背景には、ずんだもんを中心に巻き起こった二次創作という複雑なレイヤーの交錯が大きく関わっている。

 新たに立ち上がったYouTubeの公式アカウントで、ボカロPが自由に制作したずんだもんの楽曲のカバー動画が投稿されていることにも通じるが、「世界化計画」とは、複雑なレイヤーが入り組んだこれまでを、ずんだもん自身が肯定し、自己を認識するための前向きなプロジェクトなのではないか、と考える。今後、世界を取り込んでいくにあたって、キーとなる“曖昧さ”は音にも表れるだろう。例えば、ずんだもん特有の語尾「なのだ」が、言語を超えるリズム・音韻記号として新たにミーム化する可能性も十分にあり得る。ずんだもんは、キャラクターがカルチャーの“器”として機能する、新時代の証明だ。ストリートカルチャーがやがてメジャーなカルチャーとして認められていったように、受動と能動を受け入れるずんだもんが、世界を躍り尽くす日は目の前まで来ている。

※1:https://realsound.jp/2024/12/post-1863176.html

『DANCE THROUGH THE WORLD』ジャケット写真
『DANCE THROUGH THE WORLD』

◾️作品詳細
ずんだもん Major Debut EP
『DANCE THROUGH THE WORLD』
2025年6月25日(水)配信
<収録内容>
1. シェケンシェソンシャ
2. セーワ?
3. ラブリー・クエッショニズム
4. Daybreak
[BONUS TRACK]
5. ワールズエンド・ダンスホール

『ずんだもん世界化計画』特設サイト

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