THE YELLOW MONKEY『Sparkleの惑星X』ライブレポート Vol.5:どこまでも無邪気でピュアで実直だった――4人の“今”の姿

初めて観たTHE YELLOW MONKEY:Vol.5

 THE YELLOW MONKEYは、さらに進化することを選んだ――。そんな確信をもたらせてくれたアルバム『Sparkle X』を経て、2024年10月よりスタートしたツアー『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~』が、先日6月13日にKアリーナ横浜でファイナルを迎えた。

 今回リアルサウンドでは、“初めて”THE YELLOW MONKEYのライブを観た総勢5名のライターに筆をとってもらい、5日間にわたって連続で公開してきた。その最終回をお届けする。あの日何が起こったのか。なぜ4人は昨年『Sparkle X』で新たな季節を迎えることができたのか。2025年のTHE YELLOW MONKEYの姿とはどのようなものなのか。今彼らが鳴らす音とはどんなものなのか。そして、その姿を今初めて観た者だけが体験できる衝撃とは一体何だったのか――。そのすべてをパズルのピースをひとつずつはめていくようにして、読んでもらえたらうれしい。今のTHE YELLOW MONKEY、そして彼らが今生み出す衝動のすべてを受け取ってほしい。(編集部)

▼Vol.1〜4はこちら

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 THE YELLOW MONKEYのツアー『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~』の最終公演を観て「初めて観たTHE YELLOW MONKEYの姿」という視点での原稿を書いてくれませんか、という連絡をもらった。

 普段私が執筆するライブレポートは、そのアーティストがこれまでどのような道のりを辿り、今どのような状態で、どんな曲をどのように届けているか、今そこでその曲を鳴らす理由を、自分なりに考えて残すというものだ。だけど、恥ずかしながらTHE YELLOW MONKEYのこれまでを、私はあまりきちんと理解していない。しかも、THE YELLOW MONKEYがまわっていたツアーは、最新アルバム『Sparkle X』を軸にしながらも、「BLOCK.1」では3rdアルバム『jaguar hard pain 1944-1994』(1994年)、「BLOCK.2」では4thアルバム『smile』(1994年)、「BLOCK.3」では5thアルバム『FOUR SEASONS』(1995年)という過去の楽曲を組み合わせた構成になっていた。どう考えても、昔からTHE YELLOW MONKEYのライブを観てきている人が、当時のステージングを思い出しながら執筆するライブレポートが読みたい。少なくとも私は――。

 とはいえ、ツアーのコンセプトもわかったうえで、あえて「初めて観たTHE YELLOW MONKEYの姿」という企画を立てるのならば、これまでTHE YELLOW MONKEYのライブを観たことのない私だからこそ書けるものがあるのだろうと意を決して、「書かせてください」と返信した。

 いざ当日ライブに行くと、そのステージで吉井和哉(Vo/Gt)はこう言い放った。「THE YELLOW MONKEYの本編は、始まったばかりです」。

吉井和哉(Vo/Gt)
吉井和哉(Vo/Gt)

 もちろん、これまで積み重ねてきた年月と音楽と道のりがあっての“今”であることは言うまでもないが、そのうえで、THE YELLOW MONKEYというバンドは、ここからまた新たな本編を始めようとしているのだ。昨年結成35周年を迎えた彼らが、だ。凄まじいバンドだ。

 さて、初めて観たTHE YELLOW MONKEYのライブはと言えば、無邪気で、ピュアで、実直であった。自分がTHE YELLOW MONKEYのライブを観て書くことになるとは思わなかった言葉が3つ並んでいて、私自身も驚いた。でも、本当に思ったのだ。こんなに嬉しそうに音を鳴らしているなんて。こんなに楽しそうにステージを駆け回っているなんて。こんなにチャーミングな会話をメンバー間で交わしているなんて。

 静かな鍵盤の音色に導かれるように、ステージに張られた紗幕の向こう側にいる吉井のシルエットとともに「アヴェ・マリア」で幕を開けたこの日のライブ。紗幕が開くと、ステージで一人歌う吉井のもとに集まるように、菊地英昭(Gt/以下、EMMA)、廣瀬洋一(Ba)、菊地英二(Dr)がゆっくりとステージに登場。吉井の「ようこそ!」との声を合図に「SPARK」が始まる。シンプルながら骨太なビートに乗せた〈目を閉じて始めよう この夜は誰のものでもない〉という歌詞がグッと胸に迫る。「罠」ではスリリングなシチュエーションと抗えない引力に引き込まれ、吉井もギターを持った「Tactics」では、互いの音が組み合わさっていくのを感じる4人が、まるで初めてバンドを組んだ少年のように見えた。

菊地英昭(Gt)
菊地英昭(Gt)

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