草彅剛が“命”と向き合い続けた1年間 俳優、歌手、ひとりの人間――喪失を感動に昇華させる表現者としての姿
草彅剛の主演ドラマ『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-』(カンテレ/フジテレビ系)が、今夜最終回を迎える。
もらいました。
良き✌️㊗️😁 pic.twitter.com/IrRM2yEXca— 草彅 剛 (@ksngtysofficial) October 13, 2025
草彅演じる鳥飼樹は、シングルファーザーとして小学生の息子・陸(永瀬矢紘)を育てながら、遺品整理人として旅立った人々の思いを拾い上げてきた。そんななか、生前整理を依頼した鮎川こはる(風吹ジュン)をきっかけに、娘の真琴(中村ゆり)との縁が深まっていく。
余命宣告を受け、残りわずかとなったこはるとの時間。彼女の願いを叶えながら、陸をとりまくさまざまな問題に向き合い、樹と真琴は少しずつ心を通わせ合っていった。しかし、巨大企業・御厨グループでの過労自殺に端を発したトラブルに巻き込まれ、両者は対立する立場に。ささやかな幸せを望む、樹と真琴の未来はどうなるのか――。
誰もが避けられない人の死と、遺された者たちの葛藤を描く『終幕のロンド』を視聴しながら、2025年の草彅剛に思いを馳せた。振り返れば、草彅にとって2025年は、彼がこれまで出会ってきた大切な命たちへの感謝と、“生”をまっとうすることそのものを表現し続けた1年だったように思う。
俳優として作品と向き合った日々
年始は、草彅にとって人生に欠かすことのできない親友・香取慎吾が主演を務めたドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系/1月9日放送回)への友情出演で幕を開けた。その際に演じたのが、2023年放送の主演ドラマ『罠の戦争』(カンテレ/フジテレビ系)で自身が演じた主人公・鷲津亨だったという点も象徴的だ。草彅の役者人生において大きな作品となった『戦争』シリーズの記憶が、ここで静かに呼び起こされる。
その後、『第48回日本アカデミー賞』では、映画『碁盤斬り』で優秀主演男優賞を受賞。3月には、1996年から27年間にわたって『月刊ザテレビジョン』(KADOKAWA)で連載してきた『草彅剛のお気楽大好き!』をまとめた書籍の第3弾『Okiraku 3』(KADOKAWA)を刊行した。どんなときでもポジティブに、そして地道にコツコツと続けてきた表現者としての愛らしくもプロフェッショナルな日々に、あらためて思いを寄せるタイミングでもあった。
そして、4月23日より配信がスタートしたNetflix映画『新幹線大爆破』。草彅が敬愛してきた名優・高倉健が主演を務めた映画のリブート版だ。「僕が完成した作品を観たときに、健さんの声が聞こえたんですよね。もちろん、実際に聞こえるわけじゃないんだけど、『よかったよ。剛くん、車掌に見えるよ。うれしいだろ』って言われた気がして」(※1)とインタビューで語っていたのが印象的だった。
褒められたようにも、「ちゃんとしていないと、すぐ見透かされるよ」と念を押されたようにも感じたという草彅。2014年に旅立った高倉の存在を、今も身近に感じているという事実が、『終幕のロンド』における樹の演技に、確かな説得力を与えているようにも思える。
“見送った命への思い”を演技へ
さらに7月5日には、草彅にとってもうひとつ大きな出来事があった。音楽特番『THE MUSIC DAY 2025』(日本テレビ系)への出演だ。ともにステージに立ったのは、草彅が大ファンだと公言してきた斉藤和義。そして、草彅の手にあったのは、2018年に旅立った大杉漣の形見のギターだった。
草彅がギターをかき鳴らしながら歌う姿を目にして、なぜ彼の表現が私たちの心を打つのかを再認識した。遺された者が、見送った命を愛おしく思う心を、何らかの形で表現する。言葉では語り尽くせない思いを、表現する。その純粋な感情が、聴く者の心と静かに共振していくのだ。
『終幕のロンド』で見せた、むせび泣くような涙。それはもちろん、樹という役としての涙ではあるが、同時に草彅自身がこれまで見送ってきた愛しい命たちへの思いが重なっているようにも感じられた。そんな『終幕のロンド』が放送スタートしてから発表されたのが、愛犬・クルミちゃんが9月23日に旅立っていたという、胸を締めつける知らせだった。
草彅はその悲しい知らせに、「いつか必ずまた会えるよね、クルミちゃん。僕たちは、もうしばらく、こっちの世界で自分の命を燃やして、クルミちゃんが教えてくれた通りに、精一杯自分の人生を全うします」(※2)と前向きなコメントを寄せた。その「また会える」という言葉のなかには、11月15日より開幕した主演舞台『シッダールタ』に込められたメッセージである「永遠とは、瞬間を焼き付けること」という思想と重なるものがある。
ともすれば、一瞬一瞬が通り過ぎていくだけのものに感じられる人生。しかし、かけがえのない瞬間が、私たちの心を鼓舞し続けることもある。愛しい存在を思い、歌い、演じる草彅の姿そのものが、私たち一人ひとりの心に焼き付き、そして草彅が思い続ける命たちもまた、そこに永遠に生き続けるのだ。温かな愛をもって命と向き合い続けた2025年の草彅剛が表現する“命の瞬間”。今夜放送される『終幕のロンド』最終回でも、しっかりと心に焼き付けたい。
※1:https://realsound.jp/movie/2025/05/post-2017309_2.html
※2:https://contents.atarashiichizu.com/?p=27325

























