THE YELLOW MONKEY『Sparkleの惑星X』ライブレポート Vol.2:ライブバンドとしての真髄、目の当たりにした美しさと希望

THE YELLOW MONKEYは、さらに進化することを選んだ――。そんな確信をもたらせてくれたアルバム『Sparkle X』を経て、2024年10月よりスタートしたツアー『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~』が、先日6月13日にKアリーナ横浜でファイナルを迎えた。
今回リアルサウンドでは、“初めて”THE YELLOW MONKEYのライブを観た総勢5名のライターに筆をとってもらい、5日間にわたって連続で公開していく。あの日何が起こったのか。なぜ4人は昨年『Sparkle X』で新たな季節を迎えることができたのか。2025年のTHE YELLOW MONKEYの姿とはどのようなものなのか。今彼らが鳴らす音とはどんなものなのか。そして、その姿を今初めて観た者だけが体験できる衝撃とは一体何だったのか――。そのすべてをパズルのピースをひとつずつはめていくようにして、読んでもらえたらうれしい。今のTHE YELLOW MONKEY、そして彼らが今生み出す衝動のすべてを受け取ってほしい。(編集部)
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THE YELLOW MONKEY『Sparkleの惑星X』ライブレポート Vol.1:彼らこそが真のロックスターだ――“進化”の衝撃
THE YELLOW MONKEYのツアー『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星…
THE YELLOW MONKEYのライブを初めて観た。ライターとしては恥じるべき書き出しである。
担当編集から今回のライブレポートの話がきた際、痛いところを突かれたなと思った。THE YELLOW MONKEYの結成年である1988年に生まれた筆者は、後追いでベストアルバム『MOTHER OF ALL THE BEST』を通じて“有名曲”は聴いていたものの、リアルタイムとしては吉井和哉(Vo/Gt)のソロとしての活動が馴染み深くある世代(2006年のアルバム『39108』は愛聴していた)。2016年にバンドは再び動き出すわけだが、ここまで実際にライブを観る機会には恵まれてこなかった。いや、観ようと思えば、きっと観られたというのが恥ずべきところなのだが――“知ったかぶり”ではなく、“初めて観る”という視点でTHE YELLOW MONKEYのライブについて書けるのは最初で最後なので、知らないことも恐れずに当日のライブを振り返っていきたい。
『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 〜Sparkleの惑星X~』のツアーファイナルとして開催された、Kアリーナ横浜公演。半年以上にわたり行われてきたツアー全体の日程が「BLOCK.1」「BLOCK.2」「BLOCK.3」「FINAL BLOCK」で構成されており、その「FINAL BLOCK」にあたる今回の公演は、10thアルバム『Sparkle X』の楽曲と、1996年のホールツアー『TOUR ’96 FOUR SEASON “野性の証明”』の演奏楽曲を中心にセットリストが組まれている。行きの電車で意気揚々とベストアルバム『30Years 30Hits』を聴いていた筆者は、受付で渡されたセットリストの紙を見て面食らってしまった。パッと見てわかる曲は、「SPARK」「JAM」くらいだったからだ。

ただ、それは逆に考えれば、今のTHE YELLOW MONKEYの音をまっさらな状態で浴びられるということ。ライブ冒頭の「SPARK」に純粋に感激しつつ、筆者が最も息を呑んだのは「天国旅行」と「Four Seasons」の流れだった。1996年のツアー再現部分であり、吉井が掻き鳴らすエレキギターからやがて激しいバンドサウンドへと移っていく、10分以上にわたる組曲とも言える2曲だ。スクリーンには波紋のように広がる、けしの花びら。当時の吉井の死生観を感じさせる「天国旅行」は、ノスタルジックかつアートのようで、壮大な曲展開を持ちあわせている。そして、「Four Seasons」から放たれるのは、〈まず僕は壊す〉の歌い出しにも表れている破壊衝動。マイクスタンドをなぎ倒す吉井のパフォーマンスと鬼気迫るボーカル、そして菊地英昭(Gt/以下、EMMA)、廣瀬洋一(Ba/以下、HEESEY)、菊地英二(Dr/以下、ANNIE)による演奏からは「美しい」という感情も沸き起こってくる。1996年当時の言わば“尖った”THE YELLOW MONKEYが、今も彼らのなかで健在であることを示しているように思う。

軽快でダンサブルなナンバーの「MOONLIGHT DRIVE」、両手(爪)を前に突き出しぶらぶらと横に振るのが楽しい「VERMILION HANDS」といった楽曲の数々からは、これまでバンドとファンのあいだで育まれてきた年月の長さを想像させる。アンコールで披露された「JAM」は、先述した「SPARK」と同様に、いちファンとして聴けたという嬉しさが込み上げながら、会場にマイクを預ける吉井に、筆者もサビを口ずさんだ。1996年のツアー再現として「JAM」とセットの位置付けになっている「SUCK OF LIFE」は、筆者がライブの帰路で最初に聴き返した、素直に最もかっこいいと思った楽曲だった。マイクスタンドをぶんぶん振り回す吉井のパフォーマンスに始まり、スタイリッシュなサビへの入りにバンドだけでなく、会場も一体となってKアリーナを静かに揺らす。官能的な歌詞に呼応するような吉井とEMMAのやり取りがライブ恒例だということはあとから知ったのだが、それ以上にTHE YELLOW MONKEYのライブバンドとしての真髄はここにあるのだと強く感じた、惚れ惚れとするひと時だった。