歌心りえ、透明感と情熱が同居する表現力 広瀬香美プロデュース「愛の掟」で響かせた心を震わす歌声

歌心りえ、「愛の掟」レビュー

 歌心りえ、51歳でメジャーソロデビュー。――そんな華々しいニュースが世間を駆け巡ったのは今年4月のこと。一体なぜ? という、話せば長い話を短くまとめると、そもそも彼女は1995年に3人組ユニット Letit goのボーカルとしてメジャーデビューし、その後いくつかのグループを経て近年はインディーズ活動を続けていたが、2023年のオーディション番組『TROT GIRLS JAPAN』と2024年の『韓日歌王戦』(MBN)をきっかけに大ブレイク。日本のバラエティや歌番組でも圧倒的な人気を得て、2025年4月2日にビクターエンタテインメントとエイベックスからアルバム2タイトルを同時リリースという前代未聞のスタイルでメジャーソロデビューした、というわけだ。

心を震わす美しい歌声でリスナーを魅了 韓国でも大きな話題に

 一体なぜ彼女の歌がここまで支持されるのか、説明は簡単だ。聴けばわかる。YouTubeで1000万再生を突破している「雪の華」「道化師のソネット」などのカバーを歌う声は、可憐にして清楚、透明にしてパワフル。J-POPと呼ばれる前の懐かしい歌謡ポップス歌手の香りとともに、歌う時のナチュラルな笑顔、全身を使う表現力などに華がある。長い人生経験に裏打ちされた歌の言葉と感情をまっすぐに届ける、まさに“歌心”を伝える姿が韓国や日本の観客の心を捉えたことは想像に難くない。モダンなK-POPやJ-POPの地層にある共通の何かに触れる歌声、という言い方もできるかもしれない。

우타고코로리에(歌心りえ) - 눈의 꽃(雪の華)|한일가왕전 3회
우타고코로 리에(歌心りえ) - 어릿광대의 소네트(道化師のソネット )|한일가왕전 5회

 4月2日に同時リリースされ、第67回『輝く!日本レコード大賞』企画賞を受賞したアルバムは、『SONGS』(ビクター)と『HEARTS』(エイベックス)の2枚合わせて「SONGS×HEARTS=歌心」になる。『SONGS』には、YouTubeで大ヒットした「雪の華」(中島美嘉)、「道化師のソネット」(さだまさし)をはじめ、「恋人よ」(五輪真弓)、「木蘭の涙」(スターダスト☆レビュー)といったJ-POPスタンダードのカバー、さらにオリジナル曲も2曲収録された。オリジナルの「おかあさんのうた」は生まれ故郷・栃木弁の語りを入れたハートウォーミングなブルースナンバーで、「ふたりのバースデー」は華麗な弦楽器が彩るR&Bスタイルの優しいバラード。どちらも大きな愛を歌う歌声の強さと優しさがしみじみと伝わる曲で、2曲合わせて「母と子」のテーマが繋がるのも楽しい仕掛けだ。そして『HEARTS』には「瑠璃色の地球」(松田聖子)、「翼をください」(赤い鳥)などのカバーに加え、かつて所属したグループ Letit goのセルフカバー「200倍の夢」も収録。自身にとっても感慨深い作品になったはずだ。

歌心りえ / 「翼をください」 (Official Music Video)

細やかな感情のグラデーションを表現した「愛の掟」

 そんな彼女の歌を「国宝もの」と絶賛するのが、冬の女王こと広瀬香美で、彼女がプロデュースした新曲「愛の掟」を歌心りえが初披露したのは、8月に開催された広瀬が演出を手がけた音楽イベント『Kohmi EXPO 2025』(東京・LINE CUBE SHIBUYA)でのこと。リリースが待たれていたその曲が、12月24日にいよいよ配信となった。歌心りえの飛躍の1年を締めくくるのに、これほどふさわしい曲はないだろう。

 早速聴いてみよう。たおやかなバイオリンと管楽器のイントロ、シンプルなR&Bスタイルのビート。ピアノとストリングス、ギターがそっと寄り添い、広瀬らしい空高く舞い上がるサビのメロディと、 〈愛の掟は愛する事が全て〉と、悲劇も絶望も超えて一途な愛を貫く尊さを歌う歌詞の気迫。星屑、流れ星、月、夜間飛行などキーワードを星座のように繋いで、(おそらく)禁断の愛を貫く主人公の道行きを鮮やかに描き出す手腕は、さすが広瀬香美。

 それを受けた歌心りえのボーカルは、平歌では爽やかに伸びやかに、透明感溢れる声質を存分に生かしてしっとりと。しかしサビではぐっと憂いを増したメロディに寄り添うように感情を高ぶらせ、まっすぐに情熱的に歌い上げる。細やかな感情のグラデーションを重ねながら、演歌/歌謡曲でもポップス/R&Bでもない独特の聴き心地へと着地させる、さすが歌心りえ。あっぱれな組み合わせだ。

 MVはレコーディング風景をじかに捉えたシンプルなもので、ひたすら歌に没頭する彼女の姿を見ると、ライブでも録音でも表情や身振りに変わりがないことがよくわかる。6月から12月まで続いたアルバム発売記念ツアー『Sing A Soul』も、各地満員御礼だったと聞く。“ネオ歌謡曲”と呼ぶべきか“アダルトJ-POP”と呼ぶべきか、日本の音楽シーンに新たなポジションを確立しつつある歌心りえの動向には2026年も引き続き注目したい。“歌心”あれば水心、すべての人の心に歌を。

歌心りえ「愛の掟」ジャケット写真
「愛の掟」

■リリース情報
『愛の掟』
2025年12月24日(水)リリース
配信リンク:https://mega-shinnosuke.lnk.to/tenshisama

『愛の掟』MV
2025年12月24日(水)0時公開
視聴リンク:https://youtu.be/vSt7W8wDkXg

■関連リンク
Official HP:https://utagokororie.amebaownd.com/
Official Instagram:https://www.instagram.com/utagokoro.rie/
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