THE YELLOW MONKEY『Sparkleの惑星X』ライブレポート Vol.4:音楽が好きでこの場所に立っている――希望を鳴らす理由

THE YELLOW MONKEYは、さらに進化することを選んだ――。そんな確信をもたらせてくれたアルバム『Sparkle X』を経て、2024年10月よりスタートしたツアー『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~』が、先日6月13日にKアリーナ横浜でファイナルを迎えた。
今回リアルサウンドでは、“初めて”THE YELLOW MONKEYのライブを観た総勢5名のライターに筆をとってもらい、5日間にわたって連続で公開していく。あの日何が起こったのか。なぜ4人は昨年『Sparkle X』で新たな季節を迎えることができたのか。2025年のTHE YELLOW MONKEYの姿とはどのようなものなのか。今彼らが鳴らす音とはどんなものなのか。そして、その姿を今初めて観た者だけが体験できる衝撃とは一体何だったのか――。そのすべてをパズルのピースをひとつずつはめていくようにして、読んでもらえたらうれしい。今のTHE YELLOW MONKEY、そして彼らが今生み出す衝動のすべてを受け取ってほしい。(編集部)
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6月13日、金曜日。私は、初めてTHE YELLOW MONKEYのライブをこの目で観た。
場所は、神奈川県・Kアリーナ横浜。横浜駅から会場へ向かう道中、多くのファンとすれ違った。老若男女、さまざまな世代のファンが意気揚々と会場へ向かっている。会話に耳を傾けると、話題はもちろんTHE YELLOW MONKEYのこと。これから行われるライブがどのようなものになるのか、ファンの目線で楽しそうに語っている。会場に到着し、席に着く。すでにオーディエンスの熱狂と興奮に包まれたKアリーナでTHE YELLOW MONKEYはどんなライブを魅せてくれるのか、胸の高鳴りを抑えながら開演の時を待つ。
オーディエンスのクラップがこれから行われる物語を助長させる。規則正しいクラップの音が会場を包むと、赤く染まったステージ上で鍵盤の旋律が鳴り響いた。『THE YELLOW MONKEY TOUR 2024/25 ~Sparkleの惑星X~』の「FINAL BLOCK」がスタートする。吉井和哉(Vo/Gt)のシルエットがステージの背景には浮かんでいる。

「アヴェ・マリア」からキックオフしたライブ。ステージの幕が落ちると、私の眼前にTHE YELLOW MONKEYが現れる。神々しいオーラをまとった彼らは、まさにロックスターだった。「ようこそ、横浜!」と吉井が言葉にすると、オーディエンスは大きな歓声を上げる。一瞬でTHE YELLOW MONKEYとオーディエンスが作り上げる世界へと誘われたような気がした。「SPARK」が始まると彼らとともに歌うオーディエンス。これが、THE YELLOW MONKEYのライブなのかと、息を呑む。音圧の凄まじさ、すでに彼らの一挙手一投足から目が離せないでいる。歓声と熱気、冒頭からボルテージが最高潮の会場で、吉井は「THE YELLOW MONKEYのド真ん中を見せる!」と宣言する。「Chelsea Girl」で菊地英昭(Gt/以下、EMMA)が魅せるギターカッティングに思わず「かっこいい」と声を出してしまっていた。ギア全開で展開していく彼らのオンステージ、クラップが包む会場で「罠」を投下すると、「野生に帰ろうぜ! 声と体、両方ちょうだい!」と吉井はオーディエンスを煽る。それに呼応するようにオーディエンスは自由に彼らの音に寄り添っているのがわかる。廣瀬洋一(Ba/以下、HEESEY)が鳴らすベースと菊地英二(Dr/以下、ANNIE)のドラムの音色が心臓に伝わってくる。極上のバンドアンサンブルが響き渡るステージ。4人がステージの中心に集まった時のオーラはとてもゴージャスで、気持ちよさそうにEMMAのギターの音に酔いしれる吉井は、セクシーで艶やか。「Tactics」、「VERMILION HANDS」と展開していくなかで鳴り響くサウンドはとてもカラフルで、THE YELLOW MONKEYが何たるかを見せつけられたような気がする。勝手に体が揺れ、声を出したくなる。

初めて観た、彼らのライブ。私は前半戦で完全に心を掴まれていた。この日のライブは、1996年に開催された『TOUR ’96 FOUR SEASON “野性の証明”』ツアーと昨年リリースしたアルバム『Sparkle X』のコラボレーションだと吉井は話す。そして「治安の悪いギター(EMMA)が初めて(バンドに)持ってきた曲を」と「This Is For You」がスタートすると、オーディエンスが歓声と同時に息を呑んだのがわかる。しっとりした時間が会場に流れる。まるで時代をトリップしているような感覚に陥ってしまう。シンプルなバンドサウンドながら、EMMAのギターソロがロックのフィールドを離さない。吉井のブレスも色気をまとい、聴いているこちらが溶けてしまいそうになってしまう。一曲一曲に込められたTHE YELLOW MONKEYのさまざまな魅力。その魅力を噛み締める瞬間と同時に、これまで彼らの音楽に触れてこなかった自分を恥じる瞬間でもあった。過去にリリースした楽曲がこれほどまでにクールに、オンタイムの音像として聴こえるのは、彼らが音楽と真摯に向き合い、楽曲を生み出し続けた結果なのだろう。「Beaver」で起こったオーディエンスとの大合唱、Kアリーナ横浜に集まったすべての人間がまるでひとつの生き物のように動いているような錯覚、こんな光景はそうそう観られるものではない。そして最高なのは、ステージ上のメンバーがいちばん楽しそうなこと。音楽が好きでこの場所に立っている――。そんなTHE YELLOW MONKEYの姿を観ていると、音楽には未知なる力が宿っていると思う。