なるみや、音楽を生み出すことへの素直な願い “まどろみ”の中でつながり合った初ワンマンツアー

このツアーのために用意した新曲も披露。歌い終えたなるみやが「どうだった?」と尋ねると、観客が拍手したり、「最高!」と声を上げたりして気持ちを伝えた。ここでなるみやも自分の想いを語り始める。EP『まどろみの記憶』に収録されている曲は、暗いテーマにキラキラした音を掛け合わせたものばかり。必ずいい思い出から生まれた曲ばかりではないから、普段自分の曲を聴くことはあまりないという。その上で、「ぜひ、私の曲に共感しなくなってください。みなさんのことを応援してるし、大好きだから」となるみや。自分の音楽を卒業していっても構わないとは、アーティストとしては珍しい発言だ。アーティストとリスナー以前に人と人として、今目の前にいる観客と向き合っているからこそ出た言葉だろう。また、ツアータイトルの由来についても「今日のことも忘れてしまっても大丈夫。“こんな暗いこと歌ってるアーティストがいたな”って、ぼんやり思い出してくれるだけでいい。そんな想いで『まどろみの記憶』というタイトルをつけました」と明かされた。


さらになるみやは、音楽活動における目標がどんどん出てくるものの、自分の体がなかなか追いつかない状況が続いていたこと、スタッフに伝えれば「一旦休もう」と言われるだろうが、どうしてもみんなに会いたかったから、秘密にして今日まで活動してきたことを、涙ながらに打ち明ける。MCは「今日のツアーのことは忘れないと思います。本当に楽しかったから。こんな私だけど、また(ツアーを)やりたいと言っちゃうかもしれない。その時はまた会いに来てくれると嬉しいです」と締め括られ、なるみやは次の曲「醜形恐怖症」を「みなさんと会うきっかけになった、自分のコンプレックスを歌った曲」と紹介した。ツアーの来場者の中にはなるみやの音楽に日々勇気づけられているリスナーも多くいたと思うが、孤独に寄り添う楽曲を生み出す彼女もまた孤独であり、今日ライブがあるという確かな約束、音楽というみんなと会える場所があったからこそ、ここまで頑張ってこられたのだろう。

だから彼女は新たな約束を結ぶ。なるみやは「これからもまた、家で落ち込んで、一人で作って、歌って……を繰り返して過ごすと思います」と前置きしつつ、「みなさんにパワーをもらいました。また新曲とか楽しみにしてくれたら嬉しいです!」と観客に伝えた。現に6月19日には新曲「通心障害」がさっそくリリースされる。人の気質は簡単には変わらず、悩んだり葛藤したり自分のことが嫌いになったりする日々に終わりがないとしても、生きていくための術=音楽が、なるみやとリスナーの日々を未来へと繋ぐ。密やかかつ鮮やかで、確かに呼吸ができる居場所としての音楽。ライブのエンディングでは、なるみやの「今日まで頑張ってきた自分たちに、おっきい拍手!」という言葉をきっかけに会場が温かな拍手で満たされた。


























