なるみや、音楽を生み出すことへの素直な願い “まどろみ”の中でつながり合った初ワンマンツアー

なるみや、初ワンマンツアーレポ

 シンガーソングライターのなるみやが、初のワンマンツアー『1st ライブツアー “まどろみの記憶”』を開催。6月8日、東京・KANDA SQUARE HALLでツアーファイナル公演を行った。

 なるみやは、歌唱・作詞・作曲・編曲・ミックスなどを自身で手掛けるクリエイター。ネガティブな感情を吐露する歌詞、砂糖でコーティングされたような歌声、ボーカロイド文化からの影響を感じさせる音楽性、ファンから寄せられたコメントを元に自身の想いも重ねながら楽曲を生み出すという、才能をフル活用してリスナーに寄り添う姿勢が特徴的だ。今年3月には1st EP『まどろみの記憶』をリリース。今回のツアーではEPを携えて、初のバンド編成で3都市4公演を行った。

 バンドメンバーの鳴らす音が開演を告げるなか、紗幕で覆われたステージに、なるみやが現れた。スッとブレスをとった彼女が歌い始めたのは、EPの1曲目でもある「だって、優等生」。「親と勉強に追い詰められて辛い」というファンのコメントから生まれたこの曲は、〈私 生涯だって優等生/大人たちの 従順な犬でありたいの〉という歌い出しからインパクト抜群だ。その歌い出しを経て、3拍子のAメロではドリーミーなサウンドとともに毒を吐き、Bメロに入るとすぐに4拍子に戻る。そしてサビで転調する。強がりと本音がないまぜの、“こうでもしなきゃやってられない”といった具合にファイティングポーズを保つ主人公の心の動きを表した、複雑な構成の楽曲だ。しかしファンはライブを楽しみに、繰り返し楽曲を聴いてこの日を迎えたのだろう。複雑な構成も上手く乗りこなしながら、リズムに合わせてサイリウムを振っている。ステージに目を移すと、バンドの音にノッて身を揺らしながら歌うなるみやの姿が。ラスサビに入ると、歌声が一際強くなり、ライブならではの熱量が伝わってきた。なるみやが〈幸せになりたい〉というラストフレーズを歌い終えると、ノイズとともに楽曲が閉じ、めざまし時計の音から次の曲「永眠のすゝめ」がスタート。EPの曲順通りのオープニングが、レコ発ツアーの特別感を演出する。

 曲が終わると、ピョンピョン飛び跳ねながらオーディエンスに手を振っていたなるみや。観客と直接会えたことがよっぽど嬉しいのだろう。同じように手を振り返した観客に対し、なるみやは、「カーテン越しになりますけど、みなさんの顔だったり、ペンライトを振る姿は私の方からバッチリ見えてます。一緒に楽しみましょう」と伝える。MCを挟んだことによって観客の緊張も和らいだのか、3曲目の「可愛いあの子が気にゐらない」は、1~2曲目よりもさらに盛り上がった。曲中にはコール&レスポンスも。観客の声を受け取ったなるみやは、「最高です、ありがとう!」と弾む声で伝えていた。

 キーボードのフレーズから「乙女的ストーキング」が始まったり、ベースフレーズをきっかけとしたミステリアスなインタールードから「リードコントロール」へと繋げたり、ライブアレンジも多く見受けられる。ツアーファイナルということで、気持ちが高まっているというなるみやは、「みんなの気持ちも伝わってきます」と嬉しそうだ。そして次のブロックでは、彼女がアーティストとしてデビューする前、高校時代に書いたという「夏の悪夢」、上京したばかりの頃に参加したボカデュオの楽曲「いまひとりです」、EP『まどろみの記憶』に収録されているバラード「月夜の庭にて」を披露。特に「月夜の庭にて」は、「技術に自信がないうちはバラードは作れないし歌えない」と思っていたという彼女にとって挑戦の楽曲だ。観客に見守られ、やわらかくも透き通った歌声を響かせたなるみやは、「気持ち的にすっきりしました。みんながペンライトを振りながら聴いてくれてて嬉しかったです」と感触を語った。

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