RADWIMPS、スピッツ、KinKi Kids、n-buna、五十嵐ハル……「蛍」にまつわる楽曲はなぜ名曲揃い?

RAD、スピッツら「蛍」楽曲は名曲揃い

 今年も夏がやってくる。ここ数年は酷暑のあまり、かつて感じられたような夏の情緒というのはかなり薄れつつあるように思うが、そんな時にこそ音楽が効果を発揮するだろう。本稿で紹介したいのは、「蛍」にまつわる楽曲だ。夜の涼んだ空気とともに、美しい光を運んでくる「蛍」は古くから様々な素晴らしい歌の題材になっている。

 最初にピックアップするのは、RADWIMPSが2005年にリリースしたアルバム『RADWIMPS3~無人島に持って行き忘れた一枚~』の収録曲「螢」。静謐なイントロから幕を開け淡々と進行する曲だが、8分の6拍子になるサビで力強く感情が爆発する劇的な構成を持つ。歌われるのは、儚くも尊い命の費やし方についてだ。蛍の柔らかな点滅からイメージされた壮大かつ神秘的なテーマと言えるだろう。ラブソングの多かった当時の彼らには珍しい、自己を見つめるような稀有な楽曲であった。

 スピッツ「ホタル」(2000年)も同様に儚さが溢れる一曲だ。緊迫感のあるアルペジオと切々としたボーカルが印象的な1曲で、歌詞中には1度も”ホタル”という言葉は登場しない。しかし、”君”への特別な想いの形容として〈悲しいほどささやかな光〉〈鮮やかで短い幻〉というフレーズが印象的に使われる。「ホタル」というタイトルがあるからこそ、情景が想起しやすくなり、いつの間にか夏の夜の幻惑へと誘い込まれているような聴き心地を与えるのだ。

スピッツ / ホタル 

 最近サブスク解禁でも話題のKinKi Kidsも、2016年リリースの『N Album』に「ホタル」を収録。THE YELLOW MONKEYの吉井和哉が作詞作曲を担当したバラードだ。夏祭りの光景を起点に駆け巡る様々な想いを通して死生観を描いた壮大な1曲であり、笛や太鼓の音色がノスタルジーを醸し出している。堂本剛と堂本光一のボーカルの掛け合いはまるで現世と彼岸の交信のように響く。〈誰かを探してるホタル〉という一節が恐ろしくも美しい夏の1シーンを見事に切り取っているのだ。

KinKi Kids「ホタル -YouTube Original Live-」

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