G-FREAK FACTORY、真っ暗な時代の確かなアクション 思考を刺激し出会いを祝福した『HAZE』ツアーファイナル

アグレッシブなパンクで社会に中指を立てにいくのではなく、混迷を極める時代に、自身も“迷っている”ことを創造の源に変えてみせたのが、G-FREAK FACTORYが昨年リリースした『HAZE』というアルバムだった。異色な面もありつつ、結果的にG-FREAKが持つ情景描写の美しさや音楽性の豊かさを浮き彫りにする形にもなった本作。同時に、コロナ禍中に生まれたものから昨年の楽曲までが混ざり合うことで、激動の4年間を生きてきたドキュメンタリー性が強い1枚にもなっている。散り散りになってもそれぞれの場所でまた花を咲かすことができるなら、衰弱した時代を生きてきたことからも何か収穫を得られたと言えるのではないだろうかーー「Dandy Lion」から「HARVEST」に続く流れがそうだったように、『HAZE』のモードはそのまま『“HAZE” TOUR 2024-2025』にも引き継がれたように思う。全国を旅してきたG-FREAKは5月17日、ツアーファイナルの地となる36公演目、ソールドアウトのZepp DiverCity(TOKYO)へと辿り着いた。

茂木洋晃(Vo)は問うーー「戦後80年、走りすぎた時代。俺たちはどこへ行く?」。コロナ禍、震災、円安、誹謗中傷……あらゆる現象が絡み合って、時代のバランスが急速に傾いている昨今。そこについていこうともがけばもがくほど、己がどこに立つべきなのかもわからなくなっていく。「AIが便利になって、人間はいらなくなっていく。けどそれも人間のためなんだよ」と言われて、思わずハッとしてしまった。

そんな時にG-FREAKが歌うのは、むしろ変わらない景色だったりする。「ダディ・ダーリン」はまさにそんな曲だ。草木は実り花を咲かせ、太陽は東から昇って西に沈む。ただそれだけ。我々を取り巻くものは何も変わらないのに、時代の流れの中で、何かが少しずつ変わっていく。その違和感に解決策はなく、茂木もはっきりした答えを提示するわけではない。それぞれがステージから放たれた言葉を受け取り、生活の中でどうアクションに繋げるべきかと思考を巡らせる。そのきっかけがライブであるという点では、ロックバンドの役割も変わらないのかもしれない。いまや不動の代表曲である「ダディ・ダーリン」はこの日もライブ後半を見事に彩ったが、ゲストボーカルも交えずいつも以上に真っ向勝負で聴かせたことで、不思議なほど自然と『HAZE』のモードにマッチしているように思えた。

この日はライブを通して、そうやって忘れかけていた何かを思い出すような感覚が途絶えなかった。中盤の流れは特に印象深い。大らかな演奏に乗せて〈大事なのはそんなにはないぜ 一つ一つは一人のため〉と問いかける「ある日の夕べ」は、オーディエンスの心を解きほぐしながらZeppを夕暮れ色に染め上げる。置いてけぼりになった〈時代の弱者たち〉の声を拾い上げる「voice」から、〈どうかしちまったニッポン〉へのフラストレーションをぶちまける「RED EYE BLUES」の流れは、G-FREAKの中にある“穏やかさ”と“怒り”が根っこの部分でレベルミュージックとして結びついていることを今一度想起させた。アッパーな演奏に現代への皮肉をたっぷり込めた「STAY ON YOU」は最終的に“ひとりの人”として何を選択するかについての歌として響き、茂木自身が「大事な曲になった」と語った「ALL FOR SMILE」は〈One for your smile〉というシンプルな結論へと達する。
ライブハウスに集った人々と正面から向き合い、「慣れる」「流される」「立ち止まる」だけではない選択肢に気づかせること。G-FREAKはこの時代に確かな熱量を持って信じられるものをロックで示していく。何を隠そう、30年近く群馬にどっしり腰を据えて、“ローカルバンドの最高傑作”となり得た男たちだ。時間はかかるかもしれないが、時間がかかるからこそ掴める揺るぎない“らしさ”がある。だからG-FREAKはこんな時代にこそアクションを止めない。



「声をくれ!」ーーオーディエンス一人ひとりの強い生命力を引き出す「Too oLD To KNoW」は、“声を重ねる”という今できる確かなアクションを促す。「G-FREAKのライブじゃなかったら10-FEETのライブに行けばいいし、叱られたくなったら筋肉(TOSHI-LOWのことだろう)のところに行けばいいし、それでも足りなければ四星球のライブに行けばいい」と笑いも交えながら仲間への想いを明かした茂木。日々ライブハウスで最高のライブを更新し続け、いつだって「迷ったらライブハウスに来い!」と言える覚悟と優しさは並々ならぬものだ。〈隠れないで帰ってこいよ〉(「らしくあれと」)を颯爽と歌い切る強さは、そのままG-FREAKの器の大きさ、懐の深さを体現している。























