BOYNEXTDOOR、4th EP『No Genre』チャート首位 ハイクオリティなパフォーマンスと軽やかな楽曲のバランス
CD Chart Focus
参考:https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2025-05-26/
2025年5月26日付(5月20日発表)のオリコン週間アルバムランキングで首位を獲得したのはBOYNEXTDOORの4th EP『No Genre』で、推定売上枚数は176,498枚。2位には星野源『Gen』が91,837枚、さらに3位にはTWICEの『#TWICE5』が68,730枚と続いた。ほか、トップ10圏内の初登場作品としては、5位 りぶ『Ratimeria』(15,075枚)、6位 猫又おかゆ『ぺるそにゃ~りすぺくと』(11,274枚)、7位 さだまさし『生命の樹 ~Tree of Life~』(10,792枚)、8位 25時、ナイトコードで。『25時、ナイトコードで。SEKAI ALBUM vol.3』(7,259枚)、10位 手越祐也『手越祐也 SINGLES BEST』(4,536枚)があった。
さて、今回取り上げるのは首位のBOYNEXTDOOR『No Genre』。4作目となるEPだ。2024年9月にリリースされた前作『19.99』もこの連載で取り上げたが(※1)、そちらは20歳になる直前、青春の終わりに直面した感情にフォーカス。タイトルはまさに“ぎりぎり20にならない”瞬間の象徴で、スキットも取り入れて(がちがちにストーリーを固めこそしないものの)コンセプチュアルな作品だった。それに比べると、“ジャンルなんてない”というシンプルなタイトルからは、今作では音楽性やパフォーマンスにフォーカスが移っていることが窺える。つまり、どんなスタイルでもどんと来い、というたくましい宣言なわけだ。
もっとも、楽曲はどれもBOYNEXTDOORらしく軽やかで、超絶技巧を大胆に見せつけるような“ハード”なものはないし、歌い上げるようなバラードもない。曲の長さもすべて3分以内、英語版を除く6曲中3曲が2分台前半だ。むしろ、肩の力のぬけた軽やかさを存分に表現しているというべきだろう。
冒頭を飾る「123-78」は、オーセンティックな響きで弾むようなサウンドながら、傷心を歌う歌詞が印象的で、ベタな終わり方も含めてほっこりとした寂しさが味わい深い一曲。続く「I Feel Good」はロックな側面とメロディアスな側面が同居していて、歌詞のなかでも言及されているとおり、マイケル・ジャクソンを思わせるシャウトも飛び出す(ハイトーンのそれではなく、ロックスターを意識した楽曲だけに、むしろワイルドなニュアンスを強めている)。ユーモラスでキュートな姿からクールなスタイルまでを見せるMVも面白い。
夏が近づく空気感を爽やかなシティポップ調のアレンジで聴かせる「Step By Step」は、これからやってくる暑さをやわらげてくれそうなやわらかいボーカルパフォーマンスが心地よい(言葉遊びと繋げながら“808ベース”と歌詞に折り込んでいるだけに、この曲自体に808のベースは出てこないのか、と突っ込んでしまったが)。
さらっと「Step By Step」が終わって始まる「Is That True?」はラテン風味のドラムンベースにジャージークラブのパターンを織り交ぜたここ数年の定番と言えるアレンジの方向性ながら、サウンドからパフォーマンスまでが噛み合った安定感が非常に好ましい。その流れを受けた「Next Mistake」も同じ路線ながら、ソフトではありつつもより陰りのあるボーカルに、メリハリが強くなりグリッチノイズも飛び出すビートの鮮やかさが、楽曲だけでなくEP全体のアクセントにもなっている。
実質的にこのEPを締めくくるのは、デジタルシングルとしてリリースされ日本語バージョンも発表された「IF I SAY, I LOVE YOU」。細かい歌割りで隙間なく歌メロが詰め込まれ、アレンジもメロディアスなこの曲には少しJ-POP的なニュアンスも感じるが(〈愛してる〉なんて日本語も出てくる)、2ステップ、四つ打ち、テンポがハーフになっての808系のベース等々、さりげないビートのアレンジが耳に残る。
本作は、傑出した1曲が全体を引っ張るようなミニアルバムではない。と言うと弱みにも思えてしまうけれど、再生してしまえばあっという間に17分半が過ぎていく、個々の楽曲の安定感と(必ずしもストーリーテリングではない)構成の妙がなによりの魅力と言えるだろう。高いクオリティとパフォーマンスの中で垣間見せる親しみやすさに、存分に浸りたいところだ。
※1:https://realsound.jp/2024/09/post-1785853.html


























