九州大学卒 ばってん少女隊 春乃きいなに聞く アイドル活動と1年の浪人、学生生活を両立させた意地

移動の合間に勉強を進めアイドル活動と両立

――アイドル活動と受験勉強を並行する生活は、想像以上に過酷だったと思います。どんなふうに両立されていたのでしょうか?
春乃:そうですね。でも、アイドル活動を頑張る仲間たちが近くにいて、予備校でも必死に勉強している同年代の子たちが周りにいたので、すごく刺激をもらえたんです。一人だったらきっとどちらかが立ち行かなくなっていたと思うんですけど、頑張っている人たちに支えられながら、両方なんとか続けることができました。どちらか一方だけをやっていたら、きっともっと辛かっただろうなと思います。
――ご自身の努力はもちろんですが、メンバーや事務所のサポートも大きかったんですね。
春乃:本当に周りの理解に助けられましたね。受験勉強していることを、みんなが温かく見守ってくれて。移動中に勉強していてもそっとしておいてくれたり、ライブのスケジュールに合わせてサポートしてもらったり。普通だったらなかなかできない両立を、周りの支えのおかげで叶えられたと思っています。
――大学での4年間を経て、入学前に思い描いていたことと実際に経験したことでは、どんな違いがありましたか?
春乃:正直、最初は「九州大学に通うアイドル」として活動の幅を広げられるかもと思っていた部分もありました。でも、実際はセキュリティや防犯面の配慮もあって、在学中に公表することはできなかったんです。そこは少しもどかしさもありました。ただ、大学生活では本当にいろんな価値観を持った人たちと出会えたことで、自分の視野がすごく広がりました。アイドル活動をする上でも、物事をより柔軟に受け止められるようになったなと感じています。
――日常生活の中で、特に印象に残っている瞬間はありますか?
春乃:やっぱり学食で友達と何気ない話をしながらご飯を食べた時間だったり、授業の合間にゼミの仲間と話していた時間だったり、そんな“普通”の時間が今はすごく大事な思い出になっています。私が所属していた経済学部の中でも、経済工学科という数学や統計を扱う学科だったので、みんなすごく勉強熱心で。その姿勢にもたくさん刺激を受けました。
――経済工学科は、理系寄りの学科だったんですね。
春乃:はい。もともと高校までは理系だったので、自然な流れで選びました。でも、工学部に進むと実験が必須になってしまって、アイドル活動との両立が難しいかもしれないと思ったんです。だから、パソコンがあれば研究できる統計の研究が中心の経済工学科を選びました。経済にも興味はあったので、自分に合った選択だったと思います。
――移動距離が大きい中で、どんなふうにスケジュールを管理していたのでしょう?
春乃:コロナ禍で授業がオンライン対応だった時期もあったので、正直すごく助けられました。でも、それでも移動は大変で……。飛行機や新幹線の中で課題を進めたり、試験勉強をしたり。まとまった時間が取れるので、移動時間は貴重な勉強タイムでした。高校時代から移動中に勉強する習慣があったので、それをそのまま続けた感じです。
ゼミと卒論のテーマに引き続き関心

――4年間の中で、心が折れそうになった瞬間もありましたか?
春乃:もちろんありました。特に大学後半になると、周りがどんどん単位を取り終えて、授業に来る頻度も減っていって。そんな中、自分はまだ取らなきゃいけない単位がたくさんあって、焦りや不安を感じることもありました。でも、絶対に4年で卒業したいという気持ちだけは捨てなかったです。負けず嫌いな性格もあって、「ここだけは絶対に譲れない」と思いながら踏ん張っていました。
――友達にも支えられたとおっしゃっていましたね。
春乃:本当にそうです。テスト前になると、得意な子が「一緒に勉強しよう」って誘ってくれたり、教えてくれたりして。勉強面だけじゃなくて、ライブにも来てくれる友達もいて、すごく支えられていました。大学生活を振り返ったときに、そういう日常のあたたかさが真っ先に思い浮かびます。
――ゼミでは、幼少期の経験と将来の所得に関する研究をされていたそうですが、テーマを選んだ理由を教えてください。
春乃:ゼミの説明会で『学力の経済学』という本を輪読すると聞いて、そこに惹かれたんです。小さい頃から勉強に対する自負があったり、逆にコンプレックスに感じることもあったので、自然と興味が持てました。幼少期の経験が、性格特性を通じて将来の所得にどう影響するか、というテーマで研究しました。全然アイドルらしくないテーマですけど、すごく面白かったです。
――大学を卒業するタイミングで、アイドルを続けるか、就職するか、悩んだことはありましたか?
春乃:もちろん、周りがインターンや就活をしているのを見て、考えないわけではなかったです。でも、自分の中では「まだアイドルを続けたい」という気持ちの方がずっと強かったですね。九州大学に行ったことをまだグループに十分還元できていないとも思っていましたし、ばってん少女隊をもっともっと大きなグループにしたい、という思いもありました。だから自然と、アイドルを続けるという選択になりましたね。
――今、改めて春乃さんが関心を持っていることを教えてください。
春乃:大学の卒論で「幼少期の経験がその後の人生にどう影響するか」というテーマに取り組んだのですが、今でもその分野にはすごく興味があります。これからも本を読んだり、知識を深めていけたらいいなと思っています。それと、英語ですね。これまで受験勉強で読んだりすることはできても、話すことにはあまり自信がなくて。だから、ちゃんと使える英語を身につけたいなって思っています。
――英語ができるようになると、活動の幅も大きく広がりそうですね。
春乃:そうですよね。ばってん少女隊は、日本の文化をテーマにした楽曲も多いので、日本文化に興味を持ってくださる海外の方とも、もっと細かいところまで自分の言葉で伝えられるようになりたいなと思っています。大学時代、留学生の子たちともっと交流したかったのに、英語力が足りなくて歯がゆい思いをした経験もあって。英語ができたら世界はもっと広がるんだなと実感したので、今は改めて向き合いたい気持ちが強いです。
――これまでも「学ぶ」ということに向き合い続けてきた春乃さんだからこそ、今後も楽しみですね。
春乃:苦手意識があるものに向き合うのってやっぱり怖いですけど、でも、過去に苦手だったものを努力で克服してきた経験があるから、今回も頑張れるんじゃないかなって思っています。アイドル活動もそうですけど、努力すれば報われる瞬間があることを知ったので、これからもコツコツ頑張っていきたいです。


















