climbgrow、全部出し切る“最強のロックンロール” ライブバンドの本領を発揮した『EL-MAR TOUR 2025』

以下はclimbgrowのアルバムツアー『EL-MAR TOUR 2025』3本目、渋谷Spotify O-CrestにINKYMAPを迎えた一夜のレポートだ。両バンドとも凄まじいエネルギーを迸らせ続けたこの日のライブ。climbgrowが披露したアルバム『EL-MAR』からの楽曲はどれも音源よりずっと前のめり。最初から最後までガンガンと盛り上げながらフロアを巻き込んでいった激アツの2マン、最高だった。
先攻のINKYMAPは「心動かせ! 拳を上げろ!」というKazuma(Vo/Gt)の雄叫びとともに初っ端からフルスロットルのライブを展開。フロアも含めてワンマンか? と思うほどの熱量で一気に会場の空気を高めていった。「Beginning」のファストなビートが、「Time Loop Stories」のみずみずしく溢れ出すようなメロディが、「Racing Into The Night」の疾走するギターリフが、徹底的にオーディエンスのケツを叩き、心を震わせる。曲と曲の切れ目もわからなくなる――というかどうでもよくなるくらいに畳み掛けられていく曲たち。ライブバンドとしての実力はもちろん間違いのない彼らだが、フロアを包み込むような力強さと優しさはますます大きくなっている。短いMCが時折挟まれる以外はアクセル踏みっぱなし、のめり込むようにステージを見つめていると、あっという間に時間が過ぎていった。「みんなで命を燃やして、ビカビカに光ろうぜ」というメッセージとともにスケールの大きなミドルチューン「HONOH」を届けて突入した終盤では「白銀の夜に」と「Silver Train」でシンガロングを巻き起こし、ラストは「Goodnight And Goodbye」で駆け抜け、climbgrowにバトンを繋いだのだった。

そしていよいよclimbgrow。SEとともに登場した杉野泰誠(Vo/Gt)、近藤和嗣(Gt)、谷川将太朗(Ba)、谷口宗夢(Dr)が一斉に音をかき鳴らし、杉野は「オーライ!」と叫ぶ。湧き上がる歓声。いったいどの曲から始めるのかと思ったら、最初の曲は意外にも「アメージング・グレイス」だった。アルバム『EL-MAR』の中でも一際輝きを放つこの曲への手応えはインタビューでも語ってくれていたが(※1)、ライブで観るとそのスケールのデカさと伸びやかさがますます光っている。


「O-Crest! 俺たちが日本のロックンロールバンド、climbgrowです、よろしく! ただロックンロールやりに来たんじゃねえんだよ。INKYMAPとお前らと、日本一かっこよくて優しいライブハウスにしようぜ!」
杉野のそんな言葉に全力でフロアが応える。先ほどのINKYMAPもすごかったが、主役のclimbgrowもペース配分なんて一切考えていない。1曲1曲ですべてを出し切るような迫力でライブは続いていった。

もちろん過去曲もしっかり織り交ぜながらセットリストは進んでいくのだが、その中でもやはり新曲たちは込められた気合いが違う。“ドシャメシャ”の音像がスピーカーをぶっ壊すような勢いで繰り出される「No money」の〈地獄の沙汰も/阿弥陀の光すら金次第〉というフレーズを叫ぶように歌うと、杉野はおもむろに「昨日、競馬の重賞がありました」とライブ前日の5月4日にあった『天皇賞(春)』のことを話し出す。推しの馬を頭にした3連単に全額ぶち込んで負けたらしい。漢気である。そんな話題にも歓声で応えるオーディエンス。「ビザンチンドリーム、2着でしたー!」。そんな悲しみ(?)も注ぎ込んで、ライブはさらに熱を帯びていくのだった。

でもやっぱりちょっと後悔しているらしく「3連複にしておけばよかった……」と愚痴りながら「今日はINKYMAP、出てくれてありがとうございます」と突然話を変える杉野。「ライブで一番大事なのは観てて気持ちいいか、それだけだと思うんですけど、超気持ちいいですよね」という言い回しでこの日の対バン相手を讃えると、おもむろに曲を畳み掛けていく。谷口のドラムが前のめりなビートを叩き出して「心臓」をぶちかまし、「ばかたれ」ではただでさえベタ踏みのアクセルをさらに踏み込むようなロックンロールが鳴り響く。音源で聴くのとはまったく違う躍動感とエネルギー。これがライブバンド climbgrowの本領だ。そんなライブの中でも着火剤として目論見通りの効果を発揮していたのがショートチューン「OBAKA TACHI NO RARABAI」である。ライブで何度もやれる曲、というこの曲が生まれた理由を地で行くように、この日はアンコールも含めて4回も披露。そのたびにガツンガツンとフロアが、そしてバンド自身も高揚していくのが手に取るようにわかる。最強にかっこいい武器、というかオモチャを手に入れたclimbgrowは、ますます奔放にO-Crestを燃え上がらせていった。























