井上和『モノローグ』はなぜ異例のヒットになったのか 乃木坂46の写真集戦略とともに考える

 乃木坂46の井上和がリリースした1st写真集『モノローグ』(講談社)が、大きな注目を集めている。乃木坂46メンバーの1st写真集としては史上最多となる初版20万部発行という数字は、出版不況が叫ばれる昨今において異例であり、単なる人気メンバーの写真集という枠を越えた現象と言えるだろう。この成功は、井上和というアイドル個人の魅力はもちろん、グループが迎えている世代交代という大きな潮流、そしてこれまで乃木坂46が築いてきた写真集戦略の延長線上にあるプロモーションが複合的に作用した結果と考えられる。

 なぜ『モノローグ』はこれほどのヒットを記録したのか。乃木坂46写真集のこれまでも踏まえながら、その背景を紐解いていきたい。

 まず、『モノローグ』成功の最大の要因は、被写体である井上自身のスター性にあることは言うまでもない。2022年に加入した5期生の中でも、加入当初からその完成されたビジュアルで多くの注目を集めた。初の5期生期別楽曲「絶望の一秒前」でセンターを任され、さらに2023年には「おひとりさま天国」で表題曲センターに抜擢。38thシングル表題曲「ネーブルオレンジ」では同期の中西アルノとのWセンターなど、エースとしての歩みを着実に重ねている。

 ダンス、歌唱力といったパフォーマンススキルに加え、ステージ上での圧倒的な存在感。プライベートでは、人見知りな一面やアニメ/漫画好きという親しみやすさも併せ持ち、これまでのグループのファンからの人気も高い。こうした確かな実力と多面的な個性が、彼女をエースたらしめているのだ。写真集『モノローグ』は、そんな井上和という存在の総合力が最も美しく、そして説得力をもって結実した作品でもある。

 『モノローグ』は、初版20万部発行、全256ページというスケールからして、従来の乃木坂46のメンバーソロ写真集の常識を大きく超えていた。地中海の楽園・サルディーニャ島、永遠の都・ローマを舞台に、洗練された美しさと躍動感を放つ井上の姿が収められている。水着ショット、初のランジェリー挑戦といった大胆なカットも収録しつつ、品の高さを保つバランス感覚。そして、「ミューズ誕生」というテーマを貫き、1冊の中で少女から大人になっていく成長物語を繊細に描き出している。

 乃木坂46がこれまで築き上げてきた“清楚で可憐”というイメージを守りながら、20歳という節目にふさわしい新たな一面を提示したこの作品は、まさにアイドル写真集の一つの到達点と言えるだろう。

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