井上和『モノローグ』はなぜ異例のヒットになったのか 乃木坂46の写真集戦略とともに考える
乃木坂46の写真集の歴史を振り返ると、2017年の白石麻衣の『パスポート』(講談社)が一つの転換点だったように思う。それまでの“清純路線”を維持しつつ、ヘルシーなセクシーさを打ち出し、SNSを駆使したプロモーションでロングヒットを記録した『パスポート』は、後続するすべての乃木坂46メンバーのソロ写真集に影響を与えた。賀喜遥香『まっさら』(新潮社)もまた、『パスポート』以降の戦略を踏襲し、坂道グループのソロ1st写真集として当時最多の初週売上を達成した。そして今回、井上の『モノローグ』は、その流れをさらに発展させ、ソロ1st写真集で初版20万部という新たな基準を打ち立てたのである。
『モノローグ』のプロモーションも、乃木坂46が過去に培ってきた写真集戦略の流れを自然に踏襲、そして発展させたものだった。象徴的なのは、白石の『パスポート』以降に定着したSNS中心型のプロモーション展開だ。『モノローグ』でも専用の公式X(旧Twitter)アカウントを立ち上げ、先行解禁カットやオフショット、撮影メイキング動画を小出しに公開することで、発売日まで継続的に話題を喚起した。ランジェリーカット、ビーチでの白ビキニ姿など、攻めたビジュアルの先行公開も、過去作同様に注目を集めたが、そのタイミングや内容のバランス感覚に洗練が見られた点は特筆すべきだろう。
つまり、『モノローグ』は、独自の新機軸を打ち出したわけではないと言える。むしろ、これまで乃木坂46が築き上げてきた写真集ヒットの王道パターンを丁寧に、極めて精度高く運用した結果として、この記録的ヒットを成し遂げたのである。
さらに重要なのは、『モノローグ』がリリースされたタイミングだ。1期生・2期生の卒業を経て、6期生も加入した今、乃木坂46はまさに世代交代期にある。ファンにとって、「これからの乃木坂46を誰が背負うのか?」という問いは切実なものだった。そのなかで、エース候補として台頭した井上の写真集は、単なる個人の記念碑ではなく、グループの未来を象徴するものだとも言えるだろう。
『モノローグ』の記録的成功は、彼女自身の魅力、グループ内での立ち位置、そして乃木坂46の写真集の蓄積が見事に噛み合った結果だった。それは、井上個人のキャリアにとっても、乃木坂46というグループ全体にとっても、次の時代へ進むための確かな一歩となるはずだ。

























