RADWIMPS「賜物」に凝縮された20年の歩み “日本の音楽”への接近、人間讃歌としての深みを紐解く

「賜物」が『あんぱん』のオープニングで朝田のぶ役の今田美桜の映像とともに流れるのは1分30秒だが、フル尺は4分48秒あり、野田の言葉通り、じっくりと育てられた曲であることが感じられる。曲中にはクラシックギター、クラビネット、ピアノ、フルートなどの様々な楽器が登場し、声が楽器のように使われているパートもあり、何度となくリズムが出たり入ったりする展開も含めて、これはやはり様々な出会いやアップダウンを繰り返す人生という旅そのものを表したものだと感じられる。最後のパートではリズムが躍動感のある四つ打ちに変わり、卒業シーズンの新たな定番曲となった「正解」にも通じるゴスペル風の合唱を組み合わせることで、生きることの喜びをダイナミックに表現。やはり「賜物」はバンドの20年の歩みが凝縮された1曲なのである。
歌詞もまた非常にRADWIMPSらしく、“君と僕”を軸とした野田の作家性は『あんぱん』の物語とリンクするもので、最後に歌われる〈命を生きよう/君と生きよう〉という歌詞は人間讃歌としての「賜物」の象徴だ。また、〈涙に用なんてないっていうのに やたらと縁がある人生〉という印象的な歌い出しは、前述した倉崎チーフプロデューサーの「人生は決して喜びだけでなく誰にでも哀しさや愁いもあって、それを深く体現してくれる」という言葉を実証するものだと言えよう。やなせたかしの本名である柳瀬嵩(『あんぱん』の役名では柳井嵩)の“嵩”を使って、〈かさばっていく(嵩張っていく)過去と〉のようなフレーズを使うユーモアも面白いし、ドラマのオープニングではラストの部分にあたる〈君に託した 神様とやらの采配 万歳〉を聴いて、RADWIMPSの歌詞の頻出ワードである〈神様〉がここでも使われていることに思わずニヤリとしたファンも多かったはずだ。
やなせたかし自身が作詞をした「アンパンマンのマーチ」で有名な〈愛と 勇気だけが ともだちさ〉という歌詞は、一見とても青臭いが、「愛と勇気だけ」という表現には人生の厳しさも感じられて、もともとやなせとRADWIMPSの表現には通じる部分があるように思える。同じく「アンパンのマーチ」の〈時は はやく すぎる/光る 星は 消える/だから 君は いくんだ/ほほえんで〉にははっきりと死生観が描かれていて、「賜物」の〈いつか来たる命の終わりへと 近づいていくはずの明日が/輝いてさえ見えるこの摩訶不思議で 愛しき魔法の鍵を〉とリンクしているかのよう。メジャーデビュー20周年というタイミングでRADWIMPSが『あんぱん』という作品と出会ったこと。それもまた人生における偶然と必然が生んだ奇跡のように感じられる。
※1:https://www.nhk.jp/g/blog/07_rwd4qx7g/

◾️リリース情報
RADWIMPS「賜物」
配信中:https://lnk.to/rad_tamamono
◾️リリース情報
『×と〇と罪と』『絶体絶命』『アルトコロニーの定理』『RADWIMPS 4 〜おかずのごはん〜』『RADWIMPS 3 〜無人島に持っていき忘れた一枚〜』
全5タイトルアナログリリース
※5作品ともに収録内容はCDと同様。
詳細:https://lnk.to/rad_lp2025
《第1弾》
RADWIMPS『×と◯と罪と』
2025年5月7日(水)発売
5,500円(税込)UPJH-20068/9 重量盤2枚組 / 33RPM
《第2弾》
RADWIMPS『絶体絶命』
2025年6月4日(水)発売
5,500円(税込)UPJH-20070/1 重量盤2枚組 / 33RPM
《第3弾》
RADWIMPS『アルトコロニーの定理』
2025年7月9日(水)発売
5,500円(税込)UPJH-20072/3 重量盤2枚組 / 33RPM
《第4弾》
RADWIMPS『RADWIMPS 4 〜おかずのごはん〜』
2025年8月6日(水)発売
5,500円(税込)UPJH-20074/5 重量盤2枚組 / 33RPM
《第5弾》
RADWIMPS『RADWIMPS 3 〜無人島に持っていき忘れた一枚〜』
2025年9月3日(水)発売
5,500円(税込)UPJH-20076/7 重量盤2枚組 / 33RPM























