日向坂46、“最後の一期生”と挑んだ『6回目のひな誕祭』 迷いのない4時間超の2日間で示した覚悟



また、DAY2ではこれに匹敵する、いや、もしかしたらそれ以上と言えるかもしれないサプライズが用意された。ライブ中盤、卒業生の齊藤京子の姿がスクリーンに映し出されると、同期メンバーの美玲や久美への労いの言葉が送られる。そして「日向坂46が6歳の誕生日を迎えたということは、おひさまも6歳ということ。皆さんおめでとうございます。そんなおひさまに最高のプレゼントを用意しました!」と告げると、けやき坂46の原点である「ひらがなけやき」のイントロが鳴り始める。すると、ステージには久美、美玲、高瀬の現メンバーに井口眞緒、潮紗理菜、影山優佳、加藤、高本彩花、東村芽依、長濱ねるというけやき坂46一期生OGがステージに登場。今目の前で起きている夢のような出来事に対し、客席からは怒号のような歓声が沸き起こる。けやき坂46時代の衣装を身に付けた10人は確実に大人に成長しているものの、不思議とまとう空気はけやき坂46時代のそれそのものであり、筆者の記憶も一気に2017年頃に引き戻され、気付けば涙腺が緩んでいた。最後の一期生3人がグループを去るということは、けやき坂46から始まったひとつの物語が一旦完結するという意味でもある。だからこそ、これが最後のタイミングと言わんばかりに日向坂46以前にグループを離れた長濱や日向坂46初期に卒業した井口にも声をかけ、この奇跡を実現させたのだろう。なんとも粋な計らいだ。
スケジュールの都合で映像のみの参加となった齊藤京子、芸能界を引退して久しいため手紙を送るに留めた柿崎芽実もそれぞれの形でライブに参加し、ある意味最後の最後にけやき坂46一期生が勢揃い。その後、二期生から四期生までのメンバーも途中から加わる「永遠の白線」も披露され、四期生や上村ひなの以外の三期生にとってはけやき坂46を追体験できた貴重な機会となったはずだ。

アンコールを使って実施された美玲と久美の卒業セレモニーも、個々のキャラクターが色濃く表れた、非常に見応えのあるものだった。DAY1の美玲卒業セレモニーではイエローベースのドレスを着用した美玲が、けやき坂46時代のソロ曲「わずかな光」を歌唱したのだが、けやき坂46の全国ツアーでこの曲を披露する際に用いた月のセットを再登場させる演出を用意。また、スピーチでは彼女らしいポジティブさに満ちたメッセージが送られ、涙よりも笑顔が印象に残るセレモニーだったのは“ハッピーオーラの象徴”的メンバーだからこそと言えるものだった。その一方で、DAY2の久美卒業セレモニーは生粋のエンターテイナーである彼女らしい茶番劇から始まり、続く「ひらがなで恋したい」では敬愛するオードリー若林正恭をオマージュするようにアリーナ外周を自転車で疾走する場面もあった。かと思えば「夕陽Dance」では四期生と、「青春ポップコーン」では三期生と、「恋した魚は空を飛ぶ」では二期生とともに、時には笑顔いっぱいで、時にはクールな表情でパフォーマンス。「ファンが何を求めているのか」と「ファンに何を見せたいのか」が見事に一致した演出の数々は、彼女のアイドル人生のフィナーレに相応しいものだった。


けやき坂46オーディション時から現在までを振り返る映像に続いて、純白のドレスを着た久美がステージに姿を現し、それまでの空気を一変させる。その後は彼女らしく、フランクながらも説得力の強い言葉の数々で家族やメンバー、おひさまへ感謝を伝え、最後は「約9年間、日向坂46として、けやき坂46として活動できた時間は一生の宝物です」と自信に満ちた表情でスピーチを締め括った。

メンバー一人ひとりが久美への思いを伝え終えると、ついに『6回目のひな誕祭』および『佐々木久美 卒業セレモニー』は最後の時間を迎える。「最後は楽しく終わりたいんですよ! 泣いてる暇はないんですよ!」の言葉とともに、久美が最後に選んだのは「誰よりも高く跳べ! 2020」……けやき坂46時代から今日まで、長きにわたり歌い継がれてきた代表曲のひとつだった。ステージ上のメンバーは初挑戦の全曲披露を全うした達成感と、久美を笑顔で送り出そうとする思いから、この日一番の幸福感に満ちた表情でこの曲を熱唱。無謀な勝負に打ち勝ったことを祝福するかのように、無数もの花火が夜空を彩り、けやき坂46楽曲11曲を含む全113曲を披露する『6回目のひな誕祭』は幕を下ろした。

この2日間、ステージ上のメンバーからはまったく迷いが感じられず、覇気で満ち溢れた眼差しで堂々とした姿を見せていた。それはまるで一期生卒業を乗り越え、二期生から五期生までの新編成で前進していく覚悟のようにも感じられた。DAY2終盤では久美から髙橋にキャプテンが引き継がれ、5月21日に14thシングル『Love yourself!』が発売されること、5月28日&29日に国立代々木競技場 第一体育館で“新生”日向坂46の初ライブ『日向坂46 BRAND NEW LIVE 2025 「OVER THE RAINBOW」』が開催されることも発表されている。迷いを振り切り新たに生まれ変わった日向坂46が、ここからどんな未来を築き上げていくのか。ここから始まる快進撃でどれだけ我々をワクワクさせてくれるのか、期待を込めて見守っていきたい。
※1:https://realsound.jp/2025/01/post-1894451.html

























































