日向坂46、“最後の一期生”と挑んだ『6回目のひな誕祭』 迷いのない4時間超の2日間で示した覚悟

ついに実現した二度目の東京ドーム公演のエンディングに残した「ここから、はじまる。行こう。いっしょに。」(※1)というメッセージとともに2025年に突入した日向坂46。2023年後半から続く過渡期がようやく終わり、グループとして一枚岩となっての攻めが本格化すると思われたが、年明け早々に飛び込んできたのは佐々木久美、佐々木美玲、高瀬愛奈という最後の一期生の卒業というニュースだった。1月発売の13thシングル『卒業写真だけが知ってる』が一期生参加最後の作品となってしまうわけだが、彼女たちと入れ替わるようにこの3月に加入発表されたのが新メンバー五期生の10人。連日1人ずつ名前とビジュアルが公開されるたびに、SNSを中心に大きな反響を呼んだが、このグループ最大の転換期における節目となるのが4月5日、6日に横浜スタジアムで開催された『6回目のひな誕祭』であることは、紛れもない事実だ。



そんなタイミングに、2019年3月に『キュン』でデビューして以降、これまでに13枚のシングルと2枚のフルアルバムを通して計102曲(けやき坂46時代の楽曲リテイクを含む)を発表してきた日向坂46は、グループのオリジネーターである一期生が全員卒業するというこのタイミングの『6回目のひな誕祭』にて全曲披露に挑戦することをアナウンス。かつ、DAY1では佐々木美玲、DAY2では佐々木久美の卒業セレモニーが実施されるほか、五期生のお披露目も行われることが併せて発表され、両日とも4時間超という過去最長のライブが展開されることとなった。同じ坂道グループでは、かつて乃木坂46が周年ライブ『BIRTHDAY LIVE』で全曲披露にトライしていたが、日向坂46にとってはもちろん初めてのことであり、かつ4月初旬の野外スタジアム公演というまだ肌寒い時期でのライブというハードルの高さも重なり、筆者は正直期待よりも「本当にしっかりしたものを届けられるのだろうか?」と不安な気持ちが優っていた。


実際、5日のDAY1を途中まで体感してみて思ったのは、4時間強の枠の中に卒業セレモニー含め50曲前後の楽曲を披露するとなると、どうしても“ワンハーフ”と呼ばれるテレビサイズか、ワンコーラスのみでのパフォーマンスが大半を占め、ライブとしてはぶつ切り感が否めないということ。前身のけやき坂46時代からフルコーラスでのパフォーマンスが基本だったグループだけに、この措置は最初こそプラスに作用するとは思えなかった。リリース以降あまり披露される機会のないカップリング曲やユニット曲などは、久しぶりに聴くからこそフルでたっぷり楽しみたいという思いも強かったが、こればかりは仕方ないこと。メドレー形式で曲間をなくすなどの工夫などあれば、もう少しスムーズに感じられたのかもしれないが、なにぶん日向坂46にとって初めての経験なのだから、そこに関しては寛容に受け入れることにした。


しかし、そんなDAY1を経て翌日のDAY2を観覧すると……観る側にも耐性が付いたからなのか、初日に覚えたもどかしさが減退していることに気付く。従来の日向坂46ライブにあった物語性やテーマのようなものこそ希薄だが、楽曲のバラエティ豊かさはもちろんのこと、衣装を積極的に変えるなど視覚的な変化が随所に用意されていたことで、慣れると「これはこれで面白い」とポジティブに受け入れられたのだから面白いものだ。


この6年間で卒業したメンバーも多いことから、パフォーマンスに参加するメンバーが大きく変わっていたりセンターを務めるメンバーが異なる楽曲も少なくなかった。そんな中、初日公演では卒業を控えた美玲がセンターを務めたり、「one choice」や「君しか勝たん」では先の東京ドーム公演でそれぞれ丹生明里、加藤史帆からセンターを継承した山口陽世、小坂菜緒が先頭に立つなど、グループの歴史を引き継いでいく覚悟も随所から伝わる。ユニット曲に関しても、基本的には残ったオリジナルメンバーのみで歌唱するケースがほとんどだが、中にはオリジナルメンバーが全員卒業してしまったユニット曲やソロ曲もあり、そういった場合は四期生を中心に新たな布陣でパフォーマンスしており、ここでも新たな可能性をたっぷり感じ取ることができた。個人的にはDAY1の「孤独な瞬間」(富田鈴花)や「夢は何歳まで?」(正源司陽子&藤嶌果歩)、「嘆きのDelete」(美玲)、DAY2の「妄想コスモス」(藤嶌&渡辺莉奈)や「どっちが先に言う?」(久美)あたりは新鮮さが伝わる采配だった。


ライブ本編には卒業する美玲、久美のプロデュースによるブロックも各日に用意され、DAY1では美玲が「イマニミテイロ」「三輪車に乗りたい」「My fans」「期待していない自分」、DAY2では久美が「My god」「抱きしめてやる」「沈黙した恋人よ」「車輪が軋むように君が泣く」と、けやき坂46時代の楽曲を含む特別なセットリストでおひさま(日向坂46ファン)を魅了。一期生のみならず二期生、三期生を含む編成でパフォーマンスされた「イマニミテイロ」や「期待していない自分」、美玲が「一緒に歌いたかった」という富田&松田好花との「三輪車に乗りたい」、日向坂46キャプテンの久美と副キャプテン・髙橋未来虹の2人で歌われた「沈黙した恋人よ」など、このタイミングだからこその意味を持つ特別な組み合わせに歓喜したおひさまも少なくなかったはずだ。

DAY1では五期生のお披露目も用意。ティザー映像に続いてステージに登場した五期生10人は若干緊張した表情を浮かべながらも、それぞれ自身考案のキャッチフレーズを用いて自己紹介を行い、満員の横浜スタジアムは温かな拍手で包まれた。その後、5月27日に国立代々木競技場 第一体育館で『おもてなし会』が実施されることもアナウンス。早くも本格的に動き出す五期生に対する期待値は、ここで一気に高まったのではないだろうか。






















