aiko、あいみょん、TOMOO、冨岡 愛、かわにしなつき……女性シンガーが伝える、あるがままに生きるためのヒント

冨岡 愛「かろやかに」

　続いては、ストレス社会を軽快に生きるコツを忍ばせる、冨岡 愛の「かろやかに」。もしも今、あなたが、仕事、学校、家族や友人といった人間関係、将来のことなど、小さなことでも悩みを抱えているのなら、この歌はそんなあなたに向けて、〈細かいことは気にしないで〉と“かろやかに”生きるヒントを教えてくれるはずだ。弾むビートと穏やかな歌声に乗って、散歩にでも出かけてみたくなるような本作にしばし身をゆだねてみてほしい。

かわにしなつき「晴れ、時々風まかせ」

　そして、最後にご紹介するのはシンガーソングライター・かわにしなつきが今年1月にリリースした新曲「晴れ、時々風まかせ」だ。

　かわにしなつきは、奈良県橿原市出身の22歳。2020年に地元で活動を始め、SNSでのピアノの弾き語り動画の発信や路上ライブなど、地道な努力でキャリアを重ねてきたニューホープだ。2023年からはアソビシステムに所属し、ラジオ番組『ABCミュージックパラダイス』（ABCラジオ）のパーソナリティとしても活躍。2024年4月にリリースされた「理想的ガール」はSNSで大きな反響を呼び、総再生回数2000万回再生を突破。国内のみならず、韓国などアジア地域でもリスナーが急増中だ。

　彼女の魅力はなんと言っても、聴く人が“自分ごと”のように感じられるリアルな歌詞と優しい音楽性。誰もが経験したことのある感情を的確に言語化し、繊細な胸中を音楽に昇華することで、多くのリスナーの共感を誘っている。それに加えて、楽曲ごとに声の表情を使い分けているのもポイントだ。例えば、恋の終わりを歌う「我儘」では、物憂げで妖艶な声で曲の世界観に深みを与えている。また、「理想的ガール」では〈ふとした時の印象も研究済み〉の“ふとした時”など、細かなニュアンスをつけることでフレーズをより印象的なものにしている。一方、新曲「晴れ、時々風まかせ」では全体的に口を広く開けたような明朗な発声でメロディをなぞりつつ、〈幼心に抱いた／世界一周の夢〉部分ではあえて語尾を切るなど、1曲の中でメリハリのある歌い分けを見事に展開。高い歌唱力や表現力を持ち合わせているのはもちろんのこと、楽曲ごとに異なるグルーヴで魅了することを得意としているため、1回目は音楽性に惹かれ、2回目は歌詞に共感して浸り、3回目はグルーヴィーな歌唱スキルに聞き惚れる……と何度でも新たな発見をしながら楽しむことができるのだ。

　「晴れ、時々風まかせ」は、そんな底知れない魅力の持ち主であるかわにしの初TVタイアップ曲。『よんチャンTV』（MBS）で放送されている『2025年日本国際博覧会』（『大阪・関西万博』）の参加国を巡るコーナーのテーマソングにも抜擢され、話題を集めている。本作は“旅”というテーマになぞらえ、前向きに人生を謳歌するためのヒントが散りばめられた、性別年齢問わず全ての人に響く楽曲だと筆者は思う。聴けば前向きになれるようなポップで明るいサウンドと、広い世界を想像して旅に出たくなるような歌詞は、閉塞的な毎日を抜け出して一度深呼吸してみようと思える開放感にあふれている。

　どうしても自分の心が空っぽになってしまう日、現実に失望しそうになる日は誰にでもある。そして、その気持ちを自分でもうまく言葉にできず苦しむこともあるだろう。そんな時は、いつでも味方になってくれる音楽があることを忘れないでほしい。いや、そんな時こそ、音楽に頼ってほしい。誰にも共感されないかもしれない心の機微でも、丁寧に「ことば」に起こしてくれるシンガーが必ずいる。そして、あるがままに生きるためのヒントは、きっと音楽に隠されている。さてと、新年度を迎える前にひとつ深呼吸して、この春を新たな音楽との出会いの季節にしてみよう。

■リリース情報
かわにしなつき「晴れ、時々風まかせ」
配信中
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