尾崎裕哉は単なる“尾崎豊二世”ではないーー音楽的ルーツから考えるシンガーとしての可能性

 尾崎裕哉が、9月9日に「始まりの街」を配信リリースした。父親である尾崎豊を思わせる少しハスキーな声に驚いたリスナーも多いことだろう。受け継いだ声だけではなく、息遣いや歌い方にも父親への意識が垣間見える。しかし、楽曲に着目してみると、「始まりの街」はロックでもブルースでもない。壮大なストリングスから始まる、母親への感謝をストレートに歌った美しいバラードである。本稿では、裕哉の音楽的ルーツを辿っていきたい。

 裕哉の著書『二世』(新潮社)によれば、裕哉は中学時代にギターを始め、メタリカ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、グリーン・デイといった流行のバンド、高校時代には、エリック・クラプトンやB.B.キングといったロックやブルースを聴き、中でもジョン・メイヤーを好んでいたという。オフィシャルサイトのプロフィールにも、「尊敬する人」の一人にジョンの名を挙げている。(参考:HIROYA OZAKI HP “ABOUT ME”)また、彼はこれまでにInter FMでラジオ番組のパーソナリティを務めた経験もあり、番組内では流行の洋楽や、自分の好きな曲を紹介するなどしていた。父親から受けた影響はあるものの、彼の音楽に対する好奇心旺盛さは、「尾崎豊の息子だから」という域を超えているのである。

 さらに、『二世』では、「最近の僕の音楽的関心はイギリスへと移っていた」とあり、アデルやジェイムス・ベイ、サム・スミスといったシンガーソングライターの名前を挙げている。さらに、裕哉が初ライブを行なった2012年の『FUJI ROCK FESTIVAL』では、父親にミュージシャンのジェイムス・リザーランドを持つシンガーソングライター、ジェイムス・ブレイクにインタビューを敢行。こうした彼のルーツから考えると、オリジナル楽曲として初めてリリースした「始まりの街」を、ギターではなくストリングスを用いたバラードにしたのは、アデルやサム・スミスといったシンガーたちを意識してのことかもしれない。

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