CEIPAとTOYOTA GROUPの共創プロジェクト「MUSIC WAY PROJECT」始動の経緯とは? 共同記者会見をレポート

「MUSIC WAY PROJECT」共同記者会見レポ

 質疑応答では、豊田氏に対する音楽関連の質問が多く集まった。好きな音楽について聴かれた豊田氏は、車で音楽を聴いてきた思い出にふれながら昨日Spotifyをダウンロードしたことを明かし、「日本のトップ50など、これから毎日聴いていこうかと思っています。毎日聴いていくことによってもう少しベースができると思いますのでもし機会があって1年後お会いすることがあれば、同じ質問をしてください」と回答し、場内を和ませた。

 また豊田氏は、今後の「MUSIC WAY PROJECT」での取り組みについては「場所の提供はもちろんのことながら、できれば一緒にこういう道もあるよね、こうしたらもっと楽しいんじゃない、こうしたらアーティスト・ミュージシャンが喜ぶんじゃない、と一緒に作り上げていくようなメンバーになれれば」と意欲を見せ、「エンタメの世界は、国の壁を越えやすいと思っています。国を支えている産業が本当に国の壁を越えていった時にみんなが笑顔で過ごせる平和な国ができ、それをCEIPAさんがリードしていたとなれば本当に素晴らしいこと」と語る。さらに、今後の取り組みを通して、音楽ファンに車やモータースポーツの面白さが広がるチャンスについても期待を寄せた。

 TOYOTA GROUPの支援規模については現時点では非公表とのことだが、豊田氏自身が携わることには、さまざまな決断を早く進めるという狙いがあると言い、「多分、いろんなアイデアが出てくると思うんですね。それには、今このアーティストが、この場所で、この季節に、というのがものすごく大切だと思う。だから、その旬を失わないような形でできるようなスピード感を持って、とにかく最初はまずは行動して、そして結果を見ていくのを最初のポイントにしていきたい」と話した。

 そして、日本の音楽を世界に伝えていく上でこれまでネックとされていた「言語の壁」については、時代の変化とともに乗り越えていける環境が整いつつあると三者は自信を窺わせる。

 村松氏は、これまで多くの日本のアーティストがアメリカを目指して英語でのパフォーマンスや、海外向けの楽曲を制作し挑戦してきたことに触れながら、東南アジアでのYOASOBIのライブで日本語で一緒に歌う観客の姿を目の当たりにしたと話し、「もちろんアーティストに対して英語教育はしっかり行っていくが、やはり日本独自のメロディの美しさであったり、日本のポップソングの素晴らしさは世界にも類を見ないようなものがある。そういうもので勝負していきたい」と宣言。

 都倉氏は、「文芸作品は『日本語の障壁があるから海外で売れないだろう』という一つの思い込みがあるが、その壁が実は今破られようとしている」と話す。「去年『千と千尋の神隠し』の舞台が、ロンドン・ウェストエンドで4カ月満席の大成功だった。今は『となりのトトロ』も成功しつつある。この公演は全部日本語です。映画の『SHOGUN 将軍』も7割が日本語のセリフなんです。日本語だからといってそれが障壁になるという考え方はちょっと置いておいたほうがいい」と前置きし、「AIやメタバースなどいろいろな技術が発達してきて、例えば空中に漫画の吹き出しのようにテロップを出す技術を研究しようというグループもいる。言葉の障壁はいくつかの要素で克服できる可能性があると思っている」と演出面での発展にも期待を寄せた。

 最後に豊田氏は、複数の国籍や母国語を持つメンバーが一つのグループにいるという音楽が持つ多様性の部分に注目。「昨年韓国でヒョンデさんと行ったイベントにはaespaさんが来てくれました。彼女たちは韓国人、中国人、日本人のメンバーからなるグループですが、それぞれの国から応援されています。さらに日本のファンが日本人メンバーだけを応援するのではなく、他のメンバーも応援していますし、韓国人の方、中国人の方もまた日本人メンバーを応援している。こういうところからも、すでに(グローバル化は)始まっていると思うんですね。世界が気づいていないだけで、日本にも良い音楽はたくさんありますし、才能あふれる人材はたくさんいると思います。ぜひとも大きな音で轟いて世界に気づいてほしい」とアピールし、「ぜひともみなさん方には何か努力している人、努力している人を応援いただきたいと思います。努力している人を応援していただくことによって、そういう道がもっと太く、そしてもっと何本もできますし、それが何本もできれば、もっと険しい山を上らせることもできると思いますので、ぜひともそんなチャンスをいただきたいと思います」と、この日の会見を締めくくった。

■プロジェクト概要
『MUSIC WAY PROJECT』
推進主体:CEIPA×TOYOTA GROUP
狙い:本質的な日本音楽産業のグローバル化・持続的な成長を支援・推進すること

主な活動内容

<海外で活躍する才能を磨く“人づくり”>
・学生人材発掘・育成(Student Seminar)国内大学と連携した学生向け講座など

音楽業界の様々な団体が行っている寄附講座を統合し、より広がりのあるネットワークと充実したプログラムを提供していきます。学生が、業界の最前線で活躍する専門家と直接つながりリアルな知識やスキルを学べる機会を創出。実践的な学びを通じて、自らの可能性を広げるお手伝いをします。

・業界若手育成(Professional Seminar)業界若手人材向けオンライン講座など

グローバルな視点を持つ音楽業界のプロフェッショナルを育成するため、国内外の第一線で活躍する講師陣によるオンライン講義を提供します。最新の業界動向やビジネススキルを学びながら、世界を舞台に活躍するための視野と実践力を養うプログラムです。

①Public Seminar(日本語):業界関係者が気軽に参加できるオープンセミナー。音楽業界の多岐にわたるテーマを扱い、グローバル市場の変化について実践的な知識を提供。

②Intensive Seminar(英語):業界関係者から選抜された参加者を対象に、より専門的で密度の高い講義を提供。世界的な音楽大学のミュージックビジネスプログラムと連携しながら、世界的に活躍するゲスト講師の登壇を予定。

・クリエイター育成(Co-Write Global CAMP)国境を越えたクリエイターが集まるコライトキャンプの開催

欧州・アジアのトップクリエイターと日本のクリエイターがタッグを組み、プロデュースチームを結成。ソングライティングキャンプを実施し、グローバル市場での採用を目指した楽曲制作に挑みます。共同制作を通じて、クリエイター同士のネットワークを広げ、世界に向けての動きを加速させていきます。

<若き才能がもっと活躍するための“場づくり”>

・海外拠点の充実

日本の音楽シーンがさらに世界へ飛躍するため、アメリカ(ロサンゼルス)、ヨーロッパ(ロンドン)、 アジア(タイ)における3拠点で日本国内アーティストの海外活動をサポートするプロジェクトを展開、日本の音楽が世界の舞台でより一層活躍できる環境を整えます。

・GLOBAL SHOWCASE LIVE

世界各都市にあるトヨタの施設と連携しライブショーケースを行います。まずは、3月にアメリカで行われる『SXSW TOKYO CALLING x INSPIRED BY TOKYO showcase』『matsuri ‘25:Japanese Music Experience LOS ANGELES』の開催を応援していきます。

・TOYOTA ARENA TOKYOの活用

本年秋に開業するTOYOTA ARENA TOKYOを、日本から世界へ羽ばたく若手アーティストの活躍の舞台となるよう、活用の仕方を協議していきます。

『MUSIC AWARDS JAPAN』国内最大規模の国際音楽賞新設 アーティスト中心に総勢5,000人以上が投票メンバーに

国内の音楽業界における主要5団体(日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、コンサートプロモ…

野村達矢氏が語る、コロナ禍における音楽業界の現状と取り組み 変化への対応から模索する表現の可能性

 コロナ禍における音楽文化の現状、そしてこれからについて考えるリアルサウンドの特集企画『「コロナ以降」のカルチャー 音楽…

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ニュース」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる