“旬”のガールズバンド最前線 新機軸ライブイベント『#楽園収穫祭』開催の狙いと出演者の魅力を解説

かつて、軽音楽部に入部する学生が増加し、主人公が使用した左利き用のベースが人気になるなど、社会現象を巻き起こしたメディアミックス作品『けいおん!』がアニメ化されたのが2009年。約15年後となる2024年には、劇場アニメ『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!』の劇中バンドである結束バンドのアルバムが数々の音楽チャートでランキング1位を獲得。全国ライブツアーを大成功に収め、『JAPAN JAM 2024』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024』といったアニメやアイドル括りではない、ロックフェスにも参加している。
また、まだアニメ化はされていないが、『少年ジャンプ+』で連載中の漫画『ふつうの軽音部』が人気を博しており、銀杏BOYZやナンバーガール、andymoriといった劇中で歌われる楽曲をまとめたプレイリストも登場。2018年6月にリリースされたHump Back「拝啓、少年よ」をこの漫画で知り、こんな名曲があったのかと再発見されるという現象も起きている。
2009年に高校の軽音部で結成されたHump Backは2023年7月にメンバーの妊娠を発表し、2024年5月に全員の出産を終えたとXでアナウンス。オカンバンドとして子育てをしながらバンド活動を続けていくことも報告し、昨年末にライブを再開。また、2010年に高校の軽音楽部で結成されたSHISHAMOは2023年にCDデビュー10周年を迎え、2006年結成のSCANDALは2023年に“同一メンバーによる最長活動女性ロックバンド”としてギネス世界記録に認定されるなど、息の長いガールズバンドも増加。これまでに何度も、“ガールズバンドがブーム”と言われることがあったが、現在はすでに一過性の流行を乗り越えて、ひとつのジャンルとして定着したようだ。
さらに、「大型フェスでのトリを務める」という目標を立てるシベリアンハスキーや、“ガールズロックバンド革命”を掲げるTRiDENT、インディーズガールズバンド史上初のZepp全国ツアーを控えるきみとバンドを始め、サバシスター、Chilli Beans.、Conton Candyなど、新たなガールズバンドが台頭。また、10代に目を向けると、SNSで話題になり、注目を集める10代のバンドなどもいる。今後のガールズバンドシーンを担う有望なバンドが続々と登場してきているのだ。
オカンになってもライブハウスに戻る意向を示したバンドもいれば、YouTubeやTikTok、Instagramのリールなどを通して自分たちの音楽を発信して、着実にリスナーを増やしているバンドもいるが、彼女たちに共通しているのは、“既存のバンドのあり方に囚われない”活動をしているという点が挙げられるだろう。そんな新たなガールズバンドシーンを体感できるライブイベント『#楽園収穫祭』が昨年8月に、Conton Candyを輩出したインディーズ音楽配信サイト・Eggsの主催により下北沢MOSAiCで開催され、長崎、山口、東京で活動するガールズバンドが一堂に会し、大盛況となった。ガールズバンドシーンで勢いを持つ注目アーティストを紹介するこの新機軸のライブイベントのキュレーションを務める横田直樹氏によると「その後が続くかどうかは決まってなかったんですけど、第1回目が好評だったので、イベント当日に第2回目の開催が決定した」のだという。
「コロナ前はライブシーンにおいては、フィジカルな表現の強い男性バンドの方が優位だったと思うんですけど、コロナ禍に突入して、必ずしもライブ力だけがバンドの重要な軸ではなくなってるのではないかと思い始めて。その頃から集中的に女性のロックバンドに着目し始めました。もちろん、ライブや生演奏は大事にしてますけど、たとえ、現時点で演奏力がまだ未熟なところがあっても、別の魅力を放っていればいい。ライブ力を最優先にせず、それ以上にそれぞれのいいところに目を向けたバンドを集めたんですが、彼女たちが聴いてる音楽はジャンルレスになっていて。地方の子達はSNSの使い方も長けているし、衣装も自分たちが着たい服を着るし、Hump BackやSHISHAMOとはまた違う文脈でアップデートしてる。それこそ、ボカロやアニソン、アイドルなんかも聴きながら、友達と楽しくバンドをやってる子が多い。それは軽音楽部の延長のような気もするんですが、軽音楽部を永遠にやってるのもいいのかなって思ってます。
イベントのタイトルには、ネガティブなニュースや情報が蔓延する世の中だけど、このライブの場所だけは『楽園』にしたい。そして、出演したバンドもライブハウスに足を運んでくれたお客さんも『収穫』を得るようなイベントにしようという思いを込めています。実際、第1回目が終わった時に、お客さんが『今日、収穫あったね』って言ってくれてるのを耳にしたんです。たとえば、東京で活動しているバンドを目当てで観に来たお客さんが、『マリンブルーデージーやサブマリンオルカ号もよかったね』と話してくれていたり。長崎や山口のバンドを東京で見れることはなかなかないですからね。その反応を見たEggsさんが2回目の開催を決めて、その場で2025年3月3日のひな祭りの日の会場を押さえてくださいました」(横田)
第2回目となる『#楽園収穫祭~桃ノ歌ゲ』は規模を拡大し、東京と名古屋での2daysの開催となっている。本稿では、キュレーターの横田氏に出演バンドについて紹介してもらった。
まず、初日の東京は下北沢MOSAiCにて、雛まつり当日となる3月3日に開催。この日のラインナップはマリンブルーデージー、とにもかくにも、リリカル、愛好嘩(ノイジーラバーズ)の4組に加え、オープニングアクトとして、CARAMEL CANDiDのおとが出演。おとは2000年代以降に誕生したクリエイターとミュージシャンによる音楽制作プロジェクト“from00”発の楽曲をライブで初披露することが決定している。





















