BUCK-TICK、最新型の4人で歩む決意 過去と現在を繋ぎ、未来への約束を交わした『ナイショの薔薇の下』

パーカッシブでダンサブルな「冥王星で死ね」では今井がステージの端までステップを踏みながら歌い、星野も動き回ってオーディエンスにアピールする。樋口も手を上げて声援に応え、ヤガミのドラムに合わせてフロアが揺れた。この曲で繰り返すケチャ風のサビは「Memento mori」を連想させるのだが、「さあ、パレードに行こうか」と言って星野が歌った「paradeno mori」はタイトルがその曲へのオマージュでもあるらしい。タイトルだけでなく歌詞そのものが櫻井を連想させる「paradeno mori」は、星野の深い思いを感じさせる。そして今井と星野がギターとシンセの両刀使いで聴かせた「ストレリチア」は、カラフルな照明と映像が櫻井がいるかのようにステージを彩り、「絶望という名の君へ」での星野のボーカルには櫻井を思い出させる艶と優しさがあった。

今井が〈Welcome to my territory〉と呼びかけた「Madman Blues -ミナシ児ノ憂鬱-」は櫻井とのツインボーカルだった曲だが、今井は1人で歌い切った。「TIKI TIKI BOOM」はマイクを持って動き回る今井とともに星野と樋口も客席の近くまで進んでオーディエンスを盛り上げ、今井がアカペラで曲を締めた。懐かしい「SANE -type II-」は現在進行形のBUCK-TICKによって上書きされた。本編の最後を飾ったのは「薔薇色の日々」。星野の力強い歌にオーディエンスは手を振ってエールを送っていた。
新しいロゴがスクリーンに映し出され、メンバー紹介のアナウンスの後でアンコールに応えて4人はステージに戻った。いつものように客席を撮影した今井が「次にやる曲は、ラララでもいいからみんな歌って」と呼びかけたのは「LOVE ME」。今井がイントロを弾くと同時に、左右に振られる腕で会場全体が揺れ、「ラーララーララーラーララー」のシンガロングが武道館に響き渡った。ベースとドラムががっしりしたビートを刻んだ「狂気のデッドヒート」では星野がマイクを手に歌いながら、間奏でポケットにマイクを入れてギターを弾くという新技を見せた。今井が「尖らせて衝き上げろ!」と叫んで始めたのは「Villain」。今井と星野はシンセを操作しながら歌いギターも弾き、BUCK-TICKらしいヘヴィで濃厚な世界観を描き出す。複雑なサウンドの中で歪ませてはいるが、櫻井のコーラスがうっすらと同期で聴こえてきた。

「来年(2025年)はまた面白いことをやろうと思ってるんで、楽しみにしてください。今日は乾杯してください。次の曲は、ハンマービートで踊りましょう」
この年最後のナンバーとなった「ICONOCLASM」では、今井と星野とオーディエンスがともに歌って、新たなBUCK-TICKの最初のステージが幕を閉じた。今井は「ありがとう、また会おう」と手を振り、星野は「よいお年を」と年末らしい挨拶をした。樋口による「皆さん、本当に感謝します」の一言には、いろいろな思いがこもっていた。最後にヤガミが「これから4人でやりますんで、よろしくお願いします」と言ったことこそ、未来への約束である。

『スブロサ SUBROSA』を軸に、今井と星野が書き上げてきた曲を加えて構成されたこのライブは、櫻井とともに進んできた足跡であると同時に、4人で作る現在のBUCK-TICKをリアルに示し、それが未来への示唆となっていた。BUCK-TICKという名前で続ける限り、そこには櫻井敦司がいるけれど、4人は彼がいない現実の中で進んでいく。終演後にスクリーンに映し出された2025年のスケジュールは、彼らが未来に向けて歩み続けるという約束である。























