ゆきむら。「泥水啜ってでも這い上がっていきたい」 葛藤の1年、ゼロからの再スタートを誓う

ゆきむら。ファンに再起を誓う

ゆきむら。にとっての“ハロプロ”とは?

ーーやはりバンドよりもアイドルのほうが好きだったと。まさにそれが顕著に表れてるのが「愛未遂ジェーン・ドゥ」ですよね。作詞作曲は数々のハロプロ作品でお馴染みの児玉雨子さんと大久保薫さんのコンビで、ザ・ハロプロな楽曲に仕上がってます。

ゆきむら。:もうこれを歌えて死んでも悔いはないくらいです(笑)。オタク目線としては、ただ好きだからと言って一緒に何かしたいとか思っちゃいけなくて、本当は会っちゃいけないんですよ。でも「誰に書いてほしい?」って聞かれた時に「大久保さんとか……」って答えたら、気づいたらご本人がリモートの画面にご降臨されて……。

ーーご降臨(笑)。

ゆきむら。:「ハロプロのどういうところが好きなんですか?」って聞かれても「すべてを愛してるのでどの曲がいいとかこれがいいとかないです」って、自分が召喚した手前、何も言えなくてただのキモオタが出ちゃって。最終的には「僕の存在は無視していいので大久保さん色全開でお願います」とオファーしました。でもこの曲で僕は、いかに憧れていた存在に肩を並べられるようなクオリティを出せるかが試されてるとも思ってて。自分がなりたかったものが目の前に曲として来た時に、本当にお前やれるのかと。だからすごい嬉しいと同時に、お粗末なテイクを出したら僕はこの先この世界にいることはできないって思いながら、真剣に向き合った楽曲です。

ーー個人的には2010年代前半あたりの、鞘師里保さんがいた頃のモーニング娘。を彷彿とさせるサウンドだと感じました。

ゆきむら。:あのアイドル戦国時代のあたりにブレないでいてくれたハロプロに感謝の気持ちがあるんです。だから僕はこのアルバムで「ハロプロ最高!」「これでいいんだよ!」っていう気持ちをいちファンとして届けたかった。大久保さんに「一人でカラオケに行く時にも周りのフォーメーションを想像しながら歌ってます」と伝えたので、聴いただけでハロプロのフォーメーションダンスが浮かぶようなサウンドにしてくださったのかもしれないです。あとはセリフが途中で入るんですけど、ハロプロ特有のこじらせ女子みたいなセリフは入れたかったので、そこはリクエストしました。

ーーちなみにハロプロでは誰推しですか?

ゆきむら。:嗣永桃子さんです。でも実は、最初はアンチから入ったんですよ。Berryz工房さんのPVをたまたま観た時に、一人だけ鼻につく子がいて「なんか嫌だな」と思ったんです。でもだんだんその子しか見えなくなっちゃって……。そしたら桃子さんの生き方とか、プロ意識に感化されるようになりました。

ーー面白いですね。最初はアンチから入ったっていうのは、リスナーの親御さんに煙たがられるゆきむら。さんのキャラクターに通じるものがあるのかもしれないですね(笑)。知れば知るほどその人の努力が垣間見えて惹かれていくという。

ゆきむら。:どうなんでしょう。見て呉れが可愛いだけじゃ生き残れない世界なので、そういう人間的な深みも勉強にさせていただいた部分はあると思います。ファンに弱音を吐かないとか。ももちって当初はオフショットとか観るとめっちゃ泣き虫だったんですよ。でも活動しながら進化していった。誰よりも逞しいじゃんって。どこかで“可愛い”から“かっこいい”になった瞬間があったんですよね。

ーーそして「反逆ノノロシ」はゲームミュージック×ロックで中毒性の高い楽曲を多数手がけているヒゲドライバーさんの楽曲提供です。

ゆきむら。:ヒゲドライバーさんは、もちろん音ゲー界やアニソン界で神だと思うんですけど、僕が特に惚れた理由はCheeky Paradeさんっていうアイドルなんです。それこそももちさんが引退して、Berryz工房とか°C-uteさんがなくなっていって、気持ちがダウンしてた時期に出会ったのがCheeky Paradeさんでした。もちろんパフォーマンスも魅力的なんですけど、楽曲がどれもイケてて非の打ち所がない。それで誰が曲を作ってるのか調べたらヒゲドライバーさんでした。だからお会いした時もCheeky Paradeさんのお話をさせていただいて「ヒゲドライバーさんにはアイドルロスの自分を救ってもらいました」と伝えました。

ーーなるほど、そういう経緯があったからライブで盛り上がること間違いなしのサウンドに仕上がってるんですね。

ゆきむら。:バイブスがすごいですよね、敵わない。あのオタク特有のテンションに引き込ませてくれるインパクト十分な音作りは、ぶん殴られた感じだし、言葉遊びも面白い。あと、ヒゲドライバーさんは「炎上とかいろいろあって……」って話したら意外にも肯定してくれて。「音楽は自由だから思いっきり尖った曲作っちゃおうよ」って言ってくれたんです。そしたら本当に尖った曲が来た(笑)。

ーー過去の炎上への反骨精神もこの曲には含まれてると。

ゆきむら。:聴いてて前向きになれるし、今までのゆきむら。とは違ったハードなロックな感じで、ライブで歌えば歌うほど会場の一体感が増すような、ワクワクする楽曲に仕上げてくれました。

ーー最後の「シナリオノート」は一転して爽やかで前向きな歌詞が印象的です。Sakuさんとどのように制作を進めましたか?

ゆきむら。:SakuさんはバンドRECとかアレンジにも携わってくださってて、普段からたわいない話をラフに話すんですよ。Sakuさんは話せば話すほど面白くて、「ゆきむって面白い」とか「ネットと全然イメージ違うじゃん」って言ってくれるんです。「だったらもっと爽やかな曲歌ってほしいし、たぶん合うと思うよ」って言ってくれて、そこから広がってこの曲を作ってくれました。正直真っ直ぐすぎて僕らしくないとは思うんですけど、Sakuさんには自分はこう見えてるみたいで、そのもう一人のゆきむら。の一面を引き出してくれたみたいです。

ーーSakuさんと話すといつもと違うゆきむら。さんが顔を出すのかもしれませんね。

ゆきむら。:Sakuさんは心の扉をいつもノックしてきて「ゆきむら。本音言ってみろよ、お前本当はそんなんじゃないだろ?」って言ってくれるような人なんです。ノンデリ陽キャって呼んでるんですけど(笑)。自分の裏表を知ってくれてるからこそ、ドロっとした「AI」から真っ白なイメージの「シナリオノート」まで、この2曲で僕のパーソナルな内面を書き分けてくれたのかなって思います。

ーーアルバム一枚を通してストーリーのようになってますね。

ゆきむら。:最後の「シナリオノート」でこういうゆきむら。もいいねってなったら、また1曲目の「天涯」に戻って、やっぱり「天涯」もゆきむら。だよねってなってくれたら面白いかなと思います。

葛藤の一年「辞めちゃおうかと思ったこともある」

ーーあらためてこのアルバムは、ゆきむら。さんにとってどんな意味を持つものになりましたか?

ゆきむら。:夢が叶って嬉しいって言いましたけど、その嬉しさの中には、ここまでゆきむら。を押し上げてくれてありがとうっていう気持ちもあって。自分がこうしていろんな方たちに届けられる機会やご縁も含めて「全部お前らのおかげだよ」っていうファンへのプレゼントの一枚でもあるのかもしれない。

ーー名刺でありプレゼントでもあると。

ゆきむら。:だから自慢してほしいですね。周りに「ゆきむら。ってすごいんだよ」って言ってほしい。「ゆきむら。推してるのやば」って言われてた子たちが恥ずかしくないと思える人になりたい。

ーー今後の展望を教えてください。

ゆきむら。:もっとたくさんの人に自分の別の方の一面を届けたいです。いつも闇を届けてるからこそ、光の自分を観測してもらえたら本当の意味で「邪道を王道に変える」っていうことが叶うと思うんです。

ーーライブの予定は?

ゆきむら。:来年の2月11日に東京ガーデンシアターで2回目のライブをします。前回開催してからの1年間でかなり足踏みしたのもあるので、今回は苦い思いを経て、いろんな人の思いを背中に背負った上で「これがゆきむら。だ」っていう気合いを入れて臨みます。一年越しにみんなに帰って来てほしい。「俺はまだここにいるよ」ってみんなに言いたいですね。

ーー苦い思いというのは?

ゆきむら。:時代の変化についていけなくなって、葛藤の1年でした。いろいろとお任せしていた人とトラブルがあったりして、一年ほど戦いを重ねて開けた頃にはリスナーも疲れ切っちゃって、時代もキャッチーなほうがウケる方向に移ってて、自分のような闇は淘汰されて、陸に出た頃には「どこここ?」って感じになってた。辞めちゃおうかと思ったこともあるんですけど、応援してくれてた人にしたら「どんな状況でもゆきむら。はゆきむら。で変わらないよ」って言ってくれる子もいたんです。YouTubeのチャンネルも消しちゃって、数字とか状況が前よりよくないことになっちゃったかもしれないけど、数には拘らずに泥水啜ってでもこれから這い上がっていきたいです。

ーー思うような活動ができなかったことで、ファンの気持ちをより背負ってる。

ゆきむら。:そう、だからここからがゆきむら。の説得力の見せ所。ちゃんとみんなと同じゼロからの再スタートです。

■リリース情報
ゆきむら。『Never ending Nightmare-† (Selected Edition)』
2024年12月11日(水)
配信リンク https://YUKIMURA.lnk.to/Never_ending_Nightmare

■オフィシャルサイト
https://yukimura-god-shinsekai.com/

■YouTube
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