Lip CreamやGAUZEとの交流エピソードも SLANG KO『終わらないハードコア』トークショーレポ

 北海道・札幌を拠点とするハードコアバンド、SLANGのボーカリストで札幌の音楽シーンに刻まれるライブハウス「KLUB COUNTER ACTION」のオーナーとしても知られるKOの半生に迫った自伝的ノンフィクション『終わらないハードコア SLANG KOとKLUB COUNTER ACTION』(blueprint)の刊行を記念して、11月24日にKOと筆者の石井恵梨子、そして怒髪天の増子直純、BRAHMANのTOSHI-LOWが参加した配信限定トークショーが開催された。

 同トークショーでは、KOと増子が出会ったころの札幌のハードコアシーンや、KOが札幌を拠点に活動を続ける理由、さまざまな大物バンドとの交流、東日本大震災への素早い支援への背景などが語られた。ハードコアのファンはもちろん、日本のバンドの歴史に関心がある人、カッコ良い大人たちの生き様に触れたい人など、大勢を引きつける濃密なトークを楽しめるイベントとなった。

 SLANGのKOがパンクに目覚めたころのエピソードとして、「中学校の時、みんながパーマをかけているのに俺は髪を立てだした」と語ると、怒髪天の増子も「不良の中でも尖った奴が、ロックンロールからだんだんとパンクに変わっていった」と振り返る。ANARCHYやザ・スターリンといったバンドの活躍に刺激され、ハードコア・パンクに目覚めた北海道の男子が、音楽との出会いを求めて札幌に集まり、顔見知りになっていったそうだ。

 二人が出会ったのは、ストームトゥルーパーズ・オブ・デスの1stアルバム『Speak English or Die』がリリースされた1985年頃。増子が「最初に出会った時のKOちゃんはかわいかったよね」と語ると、KOは「俺、増子さんが自衛隊に行ってたって後から知ったんです」と当時を振り返る。他にも、1984年にメジャーデビューして大人気となっていたTHE STAR CLUBなどのバンドにも触れながら、ハードコアに強く惹かれた世代ならではの思い出話に花を咲かせる。

 TOSHI-LOWは1974年の茨城生まれで当時の札幌シーンについては詳しくなく、 『終わらないハードコア』の「第二章 札幌パンクシーン」で描かれるSLANGの誕生秘話を、驚きとともに読んだと明かす。するとKOが「L.S.Dが元になっているという説明はしてきたけれど、この本に書かれていることが一番、正確」と、同書の内容にお墨付きを与える。札幌ハードコアの歴史、そして現在の日本のハードコアにつながる流れを知るうえで、重要な一冊と言えそうだ。

 札幌で結成されたbloodthirsty butchersのボーカル/ギターで、2013年に急逝した吉村秀樹の名前が上がると、KOがずっとかわいがってもらっていたというエピソードも。怒髪天やeastern youth、bloodthirsty butchersといった先輩バンドが次々と上京していく一方で、KOだけが札幌に残り「KLUB COUNTER ACTON」を開くことになった理由も明らかになっていく。

 増子は「ようちゃん(吉村秀樹)が、KOは札幌に残すって言ってたんだ」と明かすと、KOもまた「それっぽいニュアンスのことは言われた」と振り返る。どうやら吉村は、最後に帰るところを残しておきたいという想いがあり、KOに札幌のシーンを託したようだ。「KOはちゃんと人の面倒を見ることができる人間。俺も吉野(eastern youthの吉野寿)も無理だから」と増子。成功を夢見て上京したものの、挫折して地元に戻ることは音楽の世界でもよく起こる。そうした時に、エネルギーを取り戻せる場所を作っておきたかったのかもしれない。

 以後、怒髪天が東京で苦労した話や、Lip CreamやGAUZEなどの伝説的バンドとの交流も明かされる。GAUZEが「KLUB COUNTER ACTUON」に出演した際、KOが「(交通費などでGAUZEが)赤字になるから」とライブハウス側の取り分もあわせてギャラを払おうとしたところ、「東京のバンドに媚びるな。ハードコアなんだからみんな平等だ」といって、なかなか受け取ろうとせず、どちらも引かずに言い争いになったというエピソードは、TOSHI-LOWも大のお気に入りだという。男気あふれるハードコア界隈ならではの心温まるエピソードといえよう。

 2011年3月11日に東日本大震災が発生してすぐ、「KLUB COUNTER ACTION」で支援物資を集めて被災地に送り届ける「NBC作戦」を実行したエピソードに話が移ると、支援に深くコミットしたKOとTOSHI-LOWに対し、増子は「人間として深く尊敬している」と語る一幕もあった。

 『終わらないハードコア SLANG KOとKLUB COUNTER ACTION』刊行記念トークショーは、blueprint book storeにて書籍『終わらないハードコア SLANG KOとKLUB COUNTER ACTION』を購入すると視聴可能だ。アーカイブ視聴は12月8日(日)23時59分までなので、興味のある方はお早めに。

■書籍情報
『終わらないハードコア SLANG KOとKLUB COUNTER ACTION』
著者:石井恵梨子
発売日:2024年10月2日(水)※発売日は地域によって異なる場合がございます。
価格:本体2,800円(税込価格3,080円)
出版社:株式会社blueprint
判型/頁数:四六判/200頁
ISBN 978-4-909852-55-7 C0073

【目次】
巻頭グラビア
プロローグ
第一章 少年KO
第二章 札幌パンクシーン
第三章 ライブハウス
第四章 サッポロ・シティ・ハードコア
第五章 札幌VS東京
第六章 スラング覚醒
第七章 震災後
第八章 ライブハウス再び

■イベント情報
『終わらないハードコア SLANG KOとKLUB COUNTER ACTION』刊行記念トークショー
出演者:SLANG KO、石井恵梨子、増子直純(怒髪天)、TOSHI-LOW(BRAHMAN)
日時:11月24日(日)19時〜
配信サービス:Zoomウェビナーにて配信
配信期間:11月24日(日)19時〜12月8日(日)23時59分(アーカイブ視聴可)
参加対象者:blueprint book storeにて書籍『終わらないハードコア SLANG KOとKLUB COUNTER ACTION』を購入した方

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