2024.11.20 20:00

keinでの過去はkeinをやることでしか払拭できない――眞呼と玲央が語る、22年後の続きとメジャーデビュー

文・取材＝オザキケイト、写真＝加古伸弥

今のkeinは「当時の想像以上の経験をしてきた自負もある」

――ちょうど話にあがった攸紀さんの楽曲「Toy Boy」と「Rose Dale」は、ともにグルーヴィな仕上がりになっていて。攸紀さんの作る楽曲のイメージにはなかったものでもあると思うので、個人的には驚きが大きかったです。

眞呼：当時のkeinや攸紀さんのもともとのイメージにあるような楽曲とは違うものを持ってきたなという印象で、“エネルギッシュ”とオーダーした僕自身も想像していなかったテイストの楽曲でした。

玲央：たしかにヘヴィなリフとかが入っていますけど、攸紀くんらしい抒情的なメロディを乗せやすい、すごくきれいなコード進行だなと思います。なので、パッと聴きでは全然攸紀くんらしくないと思うかもしれないんですけど、メロを聴いてもらったら「ああ！」と思うと思います。

――「Toy Boy」は作詞が眞呼さんと玲央さんの共作になっていますね。

玲央：レコーディングの最中に急遽2Aと2サビのあいだのメロを変えた関係で、眞呼さんが歌詞がない状態で仮歌を歌ってくれたんです。それを聴いた時に、その響きが空耳的に僕には聴こえた言葉を英語に起こしてみたら、偶然にも前後の文脈とも違和感がなくて、採用になりました。作詞というよりは翻訳とかに近いかもしれないです。

――そんな形で玲央さんが作詞に関わっていたとは驚きです。

玲央：作詞のクレジットに名前を載せたのは遊び心で、こうやってインタビューで拾ってもらえるかなと思って（笑）。

――まんまと僕はその策略にハマってしまったわけですね（笑）。

玲央：ありがとうございます。拾ってもらえてうれしいです（笑）。

――aieさんは当時加入後すぐに解散してしまったこともあり、keinでは2曲のみの作曲だったかと思うのですが、今作から本格的に作曲に携わるようになって、楽曲のテイスト含めてバンドに変化というものは生まれたりはしましたか？

「Spiral」Music Video / kein

眞呼：曲作りに関してはとにかく速くて決断力があるので、作っていて楽しいです。悩む暇もなくスイスイ進むので。

玲央：とにかくレスポンスが速いんですよ。僕は一度持ち帰るタイプなんですけど、aieさんは真逆で、「その場で作りたい」って言うんです。今作で言えば「Spiral」は空き時間2時間で作った曲で。

――2時間ですか！？

玲央：はい（笑）。ほかの4曲が出揃ってから、スタジオの休憩時間に「もうちょっとこういう曲がほしいよね」という話をしていたんです。でも、持ち寄った原曲のなかにそういった曲がなくて「どうしようか」と話が進んだところで、aieさんが時計を見て「2時間あるから今から作りますか！」って言ったんですよ。僕たちはみんな後ろに予定があったんですけど、「大丈夫っすよ！」っていきなりギターを弾き出して、リズムがついて、ベースが乗って、僕もギターを合わせて、気がついたら眞呼さんが仮歌を歌っていて。で、できたのが「Spiral」なんです。もちろん細かいところは持ち帰って次回までの宿題にしましたけど、8割から9割はこの2時間でできていましたね。

――このスピード感と決断力の速さが、あれだけバンドを多くやっている秘訣なのかもしれないですね。

玲央：やっぱり引き出しの多さと、それに見合うテクニックを持っているからなんですよね。彼は本当に天才だと思います。彼はリフ製造機でもあるので、耳に残るリフを作るのが上手ですよね。

眞呼：休符の使い方もすごいですよね。変なところに休符を入れてくるじゃないですか。

玲央：ああ、たしかに！　今回はぶっ飛んだギターばかり入れてますからね。「それ、どうやって弾いてるの？」みたいなギターばかりで、本人もはじめは弾けないんです（笑）。ひたすら弾き続けて、2時間くらいずっと練習していると弾けるようになってる。

――弾けるようになるまで練習している、と。

玲央：「この人おかしい！」と思いましたよ（笑）。弾けないから他のフレーズ考えますとかじゃなくて、弾けるまで延々やってるんで。いちばん変態ですよね。

――天才かつ変態なんですね。

玲央：天才的変態です（笑）。

眞呼：結局、天才じゃなくて変態ですね？（笑）。

――（笑）。『PARADOXON DOLORIS』がバンドにとってどんな作品になったかを、あらためて教えてください。

眞呼：メジャーデビューにしても、楽曲にしても、こうやって予想もつかない方向に転んでいくのがやっぱりkeinだなと思います。僕自身も今回「当時のkeinってこんな感じだったな」ということをあえて意識して一曲作ったんですけど、みんなとテイストが全然違って（笑）。「変わったことをやる」という意味では間違いなくkeinの作品で、その予想の裏切り方にメンバーの僕自身もついて行けてなくて驚いたくらい。本質的な意味でkeinらしさを見せることができる作品になっていると思います。

玲央：メジャーシーンでこの作品をリリースできたことが驚きでしかないんですけど、それも固定観念でこうあるべきだと思ってるからこそ、「え、keinがメジャー行くの？」ってびっくりするんだと思うんですよね。でも、本当はびっくりすることじゃなくて。『PARADOXON DOLORIS』が固定観念を抜きにして、みなさんがオープンに音楽を楽しんでもらえるためのひとつのきっかけになればいいなと思ってます。

――今回の再結成をもって“22年後の続き”をスタートさせたわけですが、25年前にkeinというバンドを結成した当時には思い描いていた未来や理想像と現在の姿は合致しているのか、はたまたkeinらしくまったく予想もつかなかった姿なのか、どちらのほうが近いですか？

眞呼：当時あのタイミングで解散していなかったとしても、きっとどこかで解散していると思うんですよね。だからこそ、僕はこのタイミングで、こういった形でkeinの現在があるのを想像できなかったというのが正直な話です。でも、想像できなかったことが現実に起こるっていうのはとてもすごいことだとも思うし、とても意味のあることだと思っています。

玲央：当時想像していた自分の姿になっているかと言うと、なっていないです。これは横柄な言い方になるかもしれないけど――当時描いていた将来の自分よりも、今のほうがさらにその上を行っていると思っているから。それくらい今の自分には自信があるし、当時の想像以上の経験をしてきた自負もあります。今回の作品はそういった僕の経験のすべてを注ぎ込んだ作品だと思っているので、みなさんに手に取って感じてもらえればと思います。

■リリース情報
Major Debut EP『PARADOXON DOLORIS』
発売中

配信URL：https://king-records.lnk.to/paradoxon_doloris

＜通常盤（CD only）＞
KICS-4178／定価 2,750円（税抜価格 2,500円）

＜初回限定盤（CD＋Blu-ray）＞
KICS-94178／定価 5,500円（税抜価格 5,000円）

CD収録内容
01. Spiral（作詞：眞呼／作曲：aie）
02. Puppet（作詞：眞呼／作曲：玲央）
03. Toy boy（作詞：眞呼、玲央／作曲：攸紀）
04. Rose dale（作詞：眞呼／作曲：攸紀）
05. リフレイン（作詞：眞呼／作曲：aie）

Blu-ray収録内容
・「Spiral」Music Video
・「Spiral」Music Video Making
・『PARADOXON DOLORIS』Recording Movie

■リリースイベント情報
kein『PARADOXON DOLORIS』発売記念サイン会
11月22日（金）タワーレコード名古屋パルコ店
12月6日（金）タワーレコード梅田NU茶屋町店
12月20日（金）タワーレコード新宿店

詳細：https://www.kingrecords.co.jp/cs/t/t15641/

■ツアー情報
『TOUR 2024「PARADOXON DOLORIS」』
11月23日（土）・24日（日）開場 16:30／開演 17:00
愛知 NAGOYA JAMMIN’

12月4日（水）・5日（木）開場 18:30／開演 19:00
大阪 Yogibo META VALLEY

12月18日（水）・19日（木）開場 18:15／開演 19:00
東京・新宿 LOFT

＜チケット＞
発売中：イープラス／チケットぴあ／ローソンチケット
スタンディング 6,600円（税込／ドリンク代別途）
※3歳以上チケット必要
※会場限定シングル『People』リリース決定（数量限定生産）