lynch. 進むべき道の先で掴んだ激しさと『FIERCE-EP』 20周年に向けて示す“最高のlynch.”の序章

20年の道のりで示す“最高のlynch.”

 lynch.が6月26日に『FIERCE-EP』をリリースした。

「FIERCE-EP」全曲試聴動画 / lynch.

 前作『REBORN』以来、1年3カ月ぶりのリリースとなる『FIERCE-EP』は“共作”という軸をもって作り上げられた。バンド20周年を前に、これまでの“lynch.らしさ”を“新たなlynch.”へと進化させ、それらはどのように共存して『FIERCE-EP』というひとつの作品となったのか。lynch.にとって少し特別な意味を持つ“EP”という形態で世に放たれること、そして20周年を目前に控えた現在の思いまで、メンバー全員に語ってもらった。(編集部)

アルバム『REBORN』を経て見えた進むべき道、“共作”で完成した『FIERCE-EP』

lynch.(撮影=はぎひさこ)
葉月(Vo)

――前作の『REBORN』はlynch.にとって活動再開後初のリリースであり、楽曲制作の体制を一新したことでリリース前からメンバーの皆さんも「出してみないとわからない」とおっしゃっていました。あらためて、リリースとツアーを経て、『REBORN』という作品について振り返るといかがですか?

葉月(Vo):あの時はあの制作の方法を取るしかなかったし、その時できる精一杯のことをやって作り上げたんですけど、リリースとツアーを経て思ったのは、ファンの皆さんが求める「lynch.ってこうだよね」とか「lynch.のこういうところが好き」というものからは距離を置いたところにある作品になったのかなとは思います。もちろん好きと言ってくれる方もいましたけど、「こうじゃないんだよな……」と感じる方もいて、まさしく賛否両論でしたね。

――とはいえ、リリース前にメンバーの皆さんも賛否両論になるだろうということは承知のうえだということもおっしゃっていました。

玲央(Gt):実験作であり、問題作になる可能性もあるだろうなという予想のもとでのリリースでした。ただ、当時はあの作り方をやらなければいけないというふうにも考えていたんです。新しいことを始めるにあたって、今までと同じことだけをやっていてはいけないと思っていましたし、先々のことを考えてああいう制作スタンスで一作品作って、そこから自分たちが進むべき道が見えてくると思っていました。

――「進むべき道」ですか。

玲央:はい。頭で考えるのではなく、実体験として確固たる自信を持ってこの先を見据えたいという気持ちが強かったんです。なので、それらを踏まえると一時活動休止を経て今作に至るまでの“エピソード0”のような位置づけだったのかなと思います。

lynch.(撮影=はぎひさこ)
玲央(Gt)

――『REBORN』を携えてのツアーは、lynch.としては久しぶりのツアーになりました。

晁直(Dr):ワンツアーで本数も7本とコンパクトなツアーだったので、もう少し本数があってもよかったのかなと今になって思ったりはしますね。

悠介(Gt):今後『REBORN』の曲が育つ機会がもっとあってもいいのかなと思います。ひょっとしたら、あの時ツアーで聴いた時はピンとこなかったけど、あらためてアルバムを聴いたら「いいじゃん!」と思う人もいるかもしれないし、音楽ってそういうものじゃないですか。

明徳(Ba):『REBORN』の曲をライブでやってみて思ったのは、音源を作るのとライブでやるのでは感覚が全然違うということですね。それこそ、音の響き方も歌の乗り方も違うので、逆にライブのことを想定して曲を作る大切さも実感しましたね。

――ということは、『REBORN』の楽曲はあまりライブのことを想定せずに作った側面が大きい、と。

玲央:メンバーによって各々比重は違うとは思いますけど、僕に関して言えば、そこまでライブを重視して作ったわけではなかったですね。

lynch.(撮影=はぎひさこ)
悠介(Gt)

――先ほど“エピソード0”というお話もありましたが、『REBORN』という作品を経て、lynch.が進むべき道はどのように定まっていきましたか?

玲央:『REBORN』という作品は、“各メンバーが楽曲を持ち寄ったオムニバスアルバム”のような印象を持つ方もいたと思うんです。作品に統合性や統一感を持たせようという部分ですよね。今回の新譜を作るにあたってはまず最初に、中身に何が入っていてもパッケージングはしっかりとlynch.の作品になるようにしようという話し合いをしました。

――「パッケージングをしっかりとlynch.の作品となるように」というのは具体的にはどのようなことなのでしょう?

玲央:やはり“lynch.らしさ”や“lynch.の売り”というものはこれまで数えきれないほどの曲を書いている葉月がいちばん理解しているので、彼に今作におけるプロデューサー的な役割をお願いすることで、“既存のlynch.”の色もしっかり出していこうという共通認識のもと、今作の制作に取り掛かることになりました。

――具体的にプロデューサー的な役割はどのようなことをしたのでしょう?

葉月:作品の総仕上げというか、デコレーションの部分は僕がやったほうがいいんじゃないか、と。さらに作品全体の話をすれば、各メンバーが楽曲を持ち寄るのは前作と変わらないんですけど、収録する楽曲のセレクトも僕がいいなと思ったものを選曲させてもらったり、各曲についても気になる部分があれば手を加えさせてもらったりすることで、“lynch.らしさ”を保つ。勇気のいることではあったんですけど、僕からメンバーに提案させてもらいました。

玲央:第三者のプロデューサーを立てて、楽曲の地ならしや作品の総仕上げをしてもらうというやり方はメジャーアーティストでも往々にしてある手法ではあると思うんですけど、そうではなく、メンバー内で完結させたかったんです。

lynch.(撮影=はぎひさこ)
明徳(Ba)

――それが今作のトピックでもある“共作”に繋がるわけですね。そういった意味では、前作のインタビューで葉月さんが「誰しもが僕みたいに作り込んだデモを提出する必要すらない」といった発言をしていたかと思いますが、葉月さんがプロデューサー的な役割を担うことで、他のメンバーがより自由にデモを作れるといった影響もあるのでしょうか?

葉月:そういう側面もあったかもしれませんけど、デモのクオリティーは前作よりも確実に上がってましたね。

――lynch.にとってEPという形態でリリースする時は『EXODUS-EP』や『SINNERS-EP』のように、「ここぞ!」と攻めに転じる時にリリースするイメージが強いですが、今回はなぜEPという形でのリリースになったのでしょう?

葉月:シングルだと物足りなくて、もう少しボリュームがほしいけれど、アルバムはまだ早いし、アイデアもない。でも、勝負をかけなきゃいけないとなると必然的にシングルよりインパクトを残せるEPという形になるんだと思います。

――今作を聴かせていただいて真っ先に感じたことが、前作に比べて“lynch.らしさ”を感じられる、かつ前作のような“真新しいlynch.”ではなく“ありそうでなかったlynch.”が詰まっているなというところだったのですが、『FIERCE-EP』を作るにあたって意識した点だったのでしょうか?

葉月:「激しいEPを作りましょう」という話し合いをしてから制作に入ったので、そういったベースがありつつ、僕の曲に関してはそういうところも意識しました。他のメンバーが作る楽曲は、そもそも原案が僕じゃない時点ですでに斬新なんです。たとえば、「このアプローチは自分ではしないものだから面白いな」とか。そういう部分を活かしたりしているので、ひとりで作るのとは全然違う感覚で制作していきました。

lynch.(撮影=はぎひさこ)
晁直(Dr)

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