分島花音による“音楽のデリバリー”ツアー Wアンコールの大団円、会場全体が心をひとつにした幸福な夜

分島花音による“音楽のデリバリー”ツアー

ステージに倒れこむなど全身でライブを楽しむ姿も

 後半戦はいきなり、イントロでギターをかき鳴らしてスタート。照明もロックにステージ上を照らす中、「ノットフォーセール・フォッシル」では、白のグレッチを弾き、「the BEAST can't BE STOpped」を送り出す。片手にハンドマイク、片手にツアーグッズのフラッグを2本持ち、歌い上げていく。「芸術家の可愛い想像たち」はチャールストンな歌謡曲風。裏のリズムに高揚を感じる中、間奏ではサックスとピアノが細かくソロを絡ませ、ラストのサビ連発パートへなだれ込む楽曲だ。分島も最後には床に倒れ込み、右手だけ上げて旗を振る。そのさまに観客はますます高揚感を味わった。

分島花音(撮影=堀弥生)

 続けてのドラムロールにクラップで応援するフロア。ソプラノサックスの軽やかな音色から始まる「RIGHT LIGHT RISE」だ。2拍子のリズムにつられて自然と身体が行進し始める。陽気なキーボードは手が空いた時間に両手で旗を振るが、Bメロで慌てて戻って弾き始める様子が微笑ましい。間奏では、分島の「right」「left」の声に合わせて観客がフラッグを巧みに振り、そのバックではドラムがスティックの代わりに旗で叩いてリズムをリード。会場全体が心を一つにしていた。続く「ツキナミ」はピアノイントロからのスタート、月並みな幸せを享受できることが特別であるという想いを歌に乗せながら、曲中には最前列の客と握手も交わしていく。

分島花音(撮影=堀弥生)

 ここでついに本編最後のMCを迎える。分島が、ピアノの奏でる旋律を背に話し始める。昔に比べるとさまざまなカルチャーが増えた時代だが、飽きずに音楽を続けてこれたのは皆のおかげ、と感謝を述べる。そして、「好き、って気持ちはもって2、3年」「それ以上は自分の努力とかモチベーションとかが関わってくる」、ゆえに「自分の夢を誰かに笑われたり」すると「大好きでいつづけることが不安に」なると話す。だからこそ「大切な気持ちなので、そのまま手離さないでほしいです」と感じている分島は「お互いの好きという気持ちを尊重し合えるような、そんな音楽やステージをこれからも作っていきたい」という想いを口にした。「皆さんに愛情と美味しい音楽と希望を」の言葉から最後の曲「自由落下とピノキオ」へと流れ、その美しさに気づいて日々を愛でる、そんな等身大の感情を歌声に乗せていた。

 歌い終えると分島は上手側の舞台袖に姿を消すがアウトロは続き、ライトはまぶしさを強め、やがて曲の終了と共にステージからは誰もいなくなる。だが、会場からはすぐに「花音」コールが。しばし会場を観客の声が覆ったあと、ライブTシャツを着た分島が登場。

分島花音(撮影=堀弥生)

 「楽しめましたか?」と皆に問いかけたあと、「15周年ツアーでは歌いそびれた」という10周年の際に作った「ありがとうのうた」を。サビで観客と声を合わせて合唱する、素朴で愛らしい一曲で絆を確かめ合ったあと、「本当に最後! 行くよ!」の声からピアノが軽快なメロディを放ち、分島のライブのフィニッシュとしては定番の「プリンセスチャールストン」に。タイトル通り、歌い手も演奏者も聴き手も全員が跳ねて跳ねて心躍らせる1曲だ。が、途中で「あ、そうだ! 来年、Billboard Live YOKOHAMAで、私の誕生日(6月28日)にライブあるから来てください! 危ない、言うの忘れてた(笑)」と素敵な情報を笑顔と共に届けてくれた。分島が各パートに声をかけると、それぞれがソロで魅せてくれる。陽気なピアノが、今度は椅子に立って弾くシーンも。そして分島は「お客さんと私」と声をかけ、コール&レスポンスを満喫。最後は旗を持つ彼女の後ろでドラムも立ち上がって叩く中、会場全体のジャンプでフィニッシュを決めた。バースデーライブを再告知し、カーテシーで深く体を折り曲げ、最前列とハイタッチし、分島は満面の笑顔で去っていった。

分島花音(撮影=堀弥生)

 しかし、名残惜しいフロアからクラップは消えず、そのうち「もう一回」コールまでが生まれた。すると、分島が再々登場。「2回も呼んでもらえると思わなくて、泣きそう」と喜びを表した。用意していなかったWアンコールに対して、分島はバンドメンバーをステージ上に呼び寄せると「The strange treat!」をやることに。そして観客に対して、間奏でバンドメンバーがソロを披露するところで分島が楽器隊にかけるコールの要求、「やるぞ! 頑張ろう(笑)」と用意していなかったWアンコールの責任をとらせるスタイルに。二度目の「The strange treat!」は当然のことながら、この夜最高の盛り上がりで会場を埋めていく。さらにはラスサビ前、分島は急に「ソロ、ソロ! ソロやって!」とドラムに無茶ぶり。戸惑いつつもなんとか2分間演奏しつづけたドラムを見つめながら分島と会場は笑いが止まらない様子だった。まさに大団円というアウトロをジャンプで締め、ステージ上の全員が一列となってお辞儀をした。

分島花音(撮影=堀弥生)

 振り返れば、音楽の素晴らしさに加え、アットホームな雰囲気がふんだんに散りばめられ、“笑顔が似合うライブ”と言える時間であった。来年には、「ずっと夢だったご飯を食べながら音楽を聴いていただけるというステージ」「今からお腹を空けて」と分島が話すバースデーライブが用意されている。分島花音が贈る、音楽によるおもてなしを味わいにぜひ彼女のライブを訪れてほしい、そう思わせる一夜だった。

■『分島花音 Live Tour 2024 「The strange treat! delivery diner」』
2024年10月4日@duo MUSIC EXCHANGE
<セットリスト>
M1 The strange treat!
M2 Unbalance by Me
M3 ナイチンゲール
M4 odetto
M5 少女帰還
M6 さんすくみ
M7 INNER CHILD
M8 world’s end, girl’s rondo
M9 killy killy JOKER
M10 悪魔の囁き
M11今際の女神
M12 ノットフォーセール・フォッシル
M13 the BEAST can't BE STOpped
M14 芸術家の可愛い想像たち
M15 RIGHT LIGHT RISE
M16 ツキナミ
M17 自由落下とピノキオ
EN. 1 ありがとうのうた
EN. 2 プリンセスチャールストン
W EN. 1 The strange treat!

■関連リンク
HP:https://www.wakeshimakanon.com/
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Instagram:https://www.instagram.com/know_insta/
YouTube:https://www.youtube.com/@transientrecords6195

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