R&Bを日本で盛り上げる鍵はヒップホップが開拓した“リアル”にあり? aimi「Sippin' Sake」につやちゃんが迫る

 2020年代に入り、才能ある若手アーティストが次々と現れ、これまでにない盛り上がりを見せているJ-R&B/SOULシーン。その中でaimiは、自らR&Bシンガーを名乗り、国内のR&Bコミュニティを盛り上げるべく活動している象徴的存在だ。フィーチャリングやコラボレーション、イベント企画の主宰を通してアーティスト間の横のつながりを生み出し、今年はライター陣とともにリスナーを巻き込んだコミュニティ「R&B Lovers Club」を立ち上げた。また、この度リリースした新曲「Sippin' Sake」ではコライトでの曲制作にも挑戦。グローバルな次世代アーティストのボーカルプロデュースなどで知られるYui MuginoとプロデューサーのModesty Beatsで集まり、三人で一つの曲を作り上げた。様々な人とつながりR&Bの輪を広げるaimiは、いま何を考えどこへ向かおうとしているのか。新曲の話から始まったR&B談義は、ヒップホップシーンとの比較や今後の未来予測など、多岐に渡った。(つやちゃん)

強い女性像を表現していたR&Bのマインドがいま必要になっている

——今日のaimiさんはY2Kファッションですね。新曲「Sippin' Sake」がY2KのR&Bをイメージされたということで、どういったところから着想を得ながら制作されたのでしょうか。

aimi:元はというと、仲の良い友達がパートナーに浮気されて傷ついたという出来事から始まったんです。それでMugiと「時間が経つほど価値が上がるものって何だろう?」という会話になって、「お酒じゃない?」とか話していたんです。そこからインスピレーションを得て、パートナーと一緒にいる時間が長くなれば長くなるほど価値は上がっていくはずなのに、そんな浮ついた態度でどうするの?  というテーマで曲を作ろうという話になりました。女性は年齢を重ねれば重ねるほどお酒のように美味しくなるし素敵になるよね、という思いを込めています。〈開けたbottle won’t wait(開けたボトルは待てない)/So drink it all(だから全部飲み干して)〉というのもそういうこと。

——比喩としてぴったりですね。時間が経てば経つほど味わい深くなるお酒のようだと。

aimi:20代ってまだ成熟していないし、自分探しの期間じゃないですか。駄目な恋愛もしちゃうし。でも年を重ねるにつれて、自分の中でブレない何かが出てきて輝いてくる。そういった自信に満ちあふれた女性像に、Y2Kのギャルマインドを重ねてみたんです。今回メランコリックなラテンギターをフィーチャーしていて、2000年代にティンバランドとかダークチャイルドがやっていたようなサウンドで。あの頃のR&Bは強い女性像を表現していたし、ぐるっと時代が巡って、今またそれが必要なマインドになっていると思うんです。

——なるほど。今回はModesty Beatsさんに加えてYui Muginoさんが共同プロデュースに入られていますね。

aimi:今回、私も含めた三人の共同制作という形を試してみたんですよ。全くビートがない状態で、ゼロベースからのコライトをやってみました。Modestyがトラックを作って、そこにMugiと私でメロディをどんどん乗せていって。Mugiがコーラスを重ねている間に私は歌詞を書いて、といった感じで同時進行で創作していきました。

——〈Sippin'〉という跳ねるような発音がバウンシーなトラックにすごく合っていて、躍動感あふれる曲になっていますね。この跳ね方は、これまでのaimiさんにはあまりなかったように感じました。

aimi:今回、Mugiがボーカルプロダクションに入ってくれて、かなり聴きごたえのあるボーカルになりました! 彼女はNiziUやaespaといったガールズグループの楽曲提供もやっているんですけど、この歌詞をどう発音してどのように聴かせるかという点で、かなり細かくディレクションしてもらいました。結果、メインボーカルを録るのに6時間かかった。こんなの初めて(笑)。〈Sippin' Sippin'〉のアタックをはじめとして、至るところにこだわりのボーカル表現が散りばめられています。「もう一回いってみよう! もう一回!」って何度もチャレンジしましたね。

——腑に落ちました。今回すごく緻密に技術が詰め込まれていて、どこかK-POPぽさを感じたんですよ。それはMuginoさんのディレクションだったんですね。

aimi:そう。私は普段メインボーカルを録るのに3時間もかからないので、こんな表情も出せるんだ、こんなキャラクターにもなれるんだ、ってすごく教えてもらいました。それにプラス、コーラスも丸一日使ったので。

——そう、コーラスも面白いですよね。

aimi:アリーヤっぽいブレスを多用したコーラスとか、デスチャ(Destiny's Child)っぽい裏メロみたいなのも鳴ってるんですけど、Mugiのコーラスの積み方がめちゃくちゃY2Kライクなんですよ。それが最高で。あとボーカルは今回、左右に振るような録り方はしてなくて、フェイクも含めてほとんどの声を一本にしています。横に広がるというよりも、登場人物がいっぱいいるような録り方をしていて、それがガールズグループ感、今っぽさに繋がっていると思う。そういう作り方も初めてでしたね。

——実際のリファレンスというか、当時のY2KのR&Bで一緒に聴いた曲とかもあったんですか?

aimi:いや、もう私たちはY2Kを通り過ぎてて、今さら聴くまでもないって感じだった(笑)。

——そうですよね(笑)。一つ前にリリースされた「Love Like That」はダンスチューンでしたけど、最近けっこう音楽性の振れ幅も激しい印象です。今は好きなことをどんどん試すようなモードなんですか?

aimi:去年の秋に喉の手術をして、そこから回復していく中で、こんな声も出せるんだ、こんな作品も作ってみたい、という気持ちになってきたんです。色んな人と曲を作っていきたいと思うようにもなって、コライトも試してみた。以前は誰々とやるってカッチリ決めることが多かったんだけど、今はもうaimiというプロジェクトの中で一緒にやりたい人と色んなことを試す感じになってます。それがすごく楽しい。

——そのモードは今後も続きそう?

aimi:続くと思う。コライトもまた新しくやっているし、やっぱり「皆で一緒にヤバいの作ろうよ!」っていうアティチュードが今なんだなって感じます。

aimi - Sippin' Sake (Lyric Video)

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