R&Bを日本で盛り上げる鍵はヒップホップが開拓した“リアル”にあり? aimi「Sippin' Sake」につやちゃんが迫る

aimiが歌うリアルなR&B

R&Bアーティストを自認する人があとに続くようになってほしい

aimiインタビュー写真(撮影=梁瀬玉実)

——コラボやコライトを盛んにされてますけど、アーティスト同士の距離感にも変化が生まれているように感じますか? というのも最近、以前よりR&Bアーティスト同士の距離感が近くなってるように見えるんです。

aimi:USのライターはどうしてもZoomでやり取りするしかないですけど、EMI(MARIA)さんやJASMINEさんは家に招いて料理を振る舞って、パーソナルな関係の中で曲を作り出しましたね。今回、Mugiも家に来てもらって一緒にゴハンを食べました。そう考えると、おもてなししたがりなのかも(笑)。人として仲良くなってから曲を作ることが多い。

——それって、なぜそういう作り方になったんでしょう。

aimi:たぶん、インディペンデントで活動するR&Bアーティストが増えたからなのかも。昔ってどうしてもマネージャー同士で話していたし、たとえ本人同士が仲良かったとしても会社同士の馬が合わないと一緒にできなかったと聞くし。それと比べると、今のインディペンデントはアーティストファーストの制作になっているんじゃないかな。数年前と比べて、皆で上がっていこう、というムードも間違いなく出てきていると思う。「もっと一緒にR&Bのイベントやりましょうよ!」ということを言ってくれる人も増えてますね。この前YonYonのBLUE NOTE PLACE公演に行った時も、FLEURくんとかSalaちゃんとか、Sagiri Sólちゃん、XinUにも会って、なんか勢ぞろいって感じで。現場が増えるにつれて、横のつながりも増えてきていると思います。

——aimiさんは昨年R&Bイベント『STAY READY』を主宰されていましたね。さらに今年に入って、私も活動に携わっているコミュニティ「R&B Lovers Club」をスタートさせました。両者の活動というのはつながっているのでしょうか。

aimi:つながっています。R&Bをライブ形式でキュレーションしていたのが『STAY READY』だったんですけど、あれは業界の人たちをもっと巻き込みたかったんです。まだR&Bの現場があまりなかったから、まずは現場を作りたかった。シーンをあたためたくて、それを準備する=STAY READYという目的だったんです。「R&B Lovers Club」はそこから次の展開というか、もっとリスナーとの接点を作っていきたいというのが私の想いです。Lovers Clubに参加してる人たちはそれぞれまた違った想いがあると思うのですが、『STAY READY』から続く流れとしては私はそういった気持ちでした。シーン全体を俯瞰しているアボかどさん、つやちゃんさん、cookieさん、Yacheemiさんといったライターの方々がいるから、リスナーとのつながりも広がりがある。というのも、やっぱり、R&B好きな人ってあまり姿が見えないんですよね(笑)。

——見えないですね。確実にリスナーはいるんですが、可視化されづらい。

aimi:この前「R&B Lovers Club」のイベントをやった時、お客さんで「この人もこの人も全員R&B Loversなんですよね?!」って驚いてた人がいましたけど(笑)、そういった嬉しさや安心感を作っていきたいです。

aimiインタビュー写真(撮影=梁瀬玉実)

——ヒップホップのコミュニティって、ほっといても皆が色々語るし議論するし、熱量がすごいじゃないですか。R&Bリスナーってもうちょっと控えめな印象ですよね。

aimi:控えめで、平和主義。あと、アカデミックなジャンルのようにも思うんです。やる方も聴く方も音楽的な素養がないと楽しめない、みたいな印象もあるんじゃないかなと。

——ヒップホップがここまで日本で盛り上がったのって、本来アメリカのヒップホップにあったブラックコミュニティの差別構造や階級意識、地域性というものを、ローカライズして作品に落とし込むことができたからだと思うんです。この国のゲットー観や貧困問題といったポリティカルな問いを、この国のヒップホップとして自分たちのルーツに照らしながら言葉で語ることができるようになった。そう考えると、R&Bを日本にローカライズしたものって一体どういったものなのか。自分はそれがまだバシッと言えないんですよ。USのR&Bを聴いていると、この肉体性や恋愛観は本当の意味で私たちに理解できるんだろうかと思うし、そこで歌われている不倫の話も、私たちにはどのくらいのリアリティで響くんだろうかと考えてしまう。

aimi:「Sippin' Sake」は、言ってしまえば不倫の曲ですけどね(笑)。でも、いま世の中で流行っているドラマって不倫の話だらけじゃないですか? 現代ってそういうストーリーに刺激を求めている人が増えていると思うし、つまり日本も、人には言えなかったことを言えるような文化に近づいている気がする。

——あぁ、なるほど。

aimi:もともと歌謡曲って不倫や愛人の曲が多いと思うけど、でもJ-R&Bの世界になるとそれがまだ会いたい、切ない止まりだった。それを、ヒップホップが突破してくれましたよね。もう何でも言えるようになった。だから、徐々にR&Bでも言えるようになるんじゃないかな。

aimiインタビュー写真(撮影=梁瀬玉実)

——よくある、ヒップホップの後をR&Bが追随していくような流れですね。

aimi:そうそう。やっぱり、ヒップホップの恩恵はめちゃくちゃあると思います。

——ということは、ヒップホップによって開拓されたリアリティというのをR&Bが追いかけていけば、あえて日本ナイズしなくても良いのではという考えですか?

aimi:そう思いますね。今の若い人たちが感じている些細なことを曲に反映していけば、それはもうリアルなR&Bになると思う。

——そう考えると、今後のR&Bの動向次第では、ヒップホップとの距離感がまた接近していく未来もあり得るかもしれないですね。

aimi:あと、ヒップホップやラップの歌化というのもすごい勢いで進んでいるし。今はまだキュレーション側の分け方などもあってリスナーが分断されていますけど、もしかしたらもっと分け隔てなく聴かれるような時代が来るのかも。

——その時は、もはやヒップホップやR&Bといった呼称ではなくなっているかもしれないですね。例えば「リアルミュージック」とか、何か別の形で定義されているかもしれない。

aimi:ちょうどそんな話を昨日YonYonと話していたんですよ。もうR&Bという呼称も古いのかもね、って。それこそ「リアルミュージック」とか「グッドミュージック」とか、別の形で括られる時代が来ているのかもしれないです。

aimiインタビュー写真(撮影=梁瀬玉実)

——こういったテーマは何時間でも話せちゃいますが(笑)、最後にワンマンライブにもついても聞かせてください。なぜこのタイミングで初ワンマンを企画されたんでしょうか。

aimi:R&Bが盛り上がっていく中で、シーンを作っていくということとは別に、aimiという存在を一度形にしたいと思ったんです。なぜかと言うと、プレイヤーがこれだけ増える中で、R&Bを自認しているアーティストの単独公演って意外に少ないんですよ。まずは自分がそれを成し遂げたい、それができたらきっとR&Bシーンのためになると思った。USのR&Bライブを観るのと同じようなクオリティの音をバンドで出せるようにいまチャレンジしているし、ミュージックディレクターのGakushiさんを中心にバンドも組んでいます。R&Bならではのライブアレンジをやれる人って国内でもそう多くいないんですよね。それに、R&Bってライブが一番楽しいと思うんです。コードも展開も様変わりするし、『コーチェラ』(『コーチェラ・フェスティバル』)のヴィクトリア・モネみたいな、ああいったすばらしいR&Bのステージを、aimiでしかできない形で見せられたらいいなと思います。いつも応援してくれているリスナーに最高のワンマンライブを届けたいですし、まだ一度もaimiのライブを観たことがないという人にも楽しんでもらえる機会になったら嬉しいです。

——ワンマンライブを成功させることがR&Bシーンのためになる、と語るのがaimiさんらしいですね。

aimi:誰やねん、という感じだと思うんですけど(笑)。でも、私みたいにR&Bアーティストを自認する人があとに続くようになってほしいと思うし、そのためにも絶対成功させたい。「aimiができたんだから自分にもできるよ」と感じてもらえたら嬉しいです。いまR&Bシーンに一番必要なのは、モチベーションだと感じるんですよ。アーティスト同士がつながって、皆が活動についての色んな相談をし合っているこのタイミングだからこそ、誰かが単独公演を成功させるというのは大切なことだと思います。

aimiインタビュー写真(撮影=梁瀬玉実)

■ライブ情報
『aimi - First One Man Live
2025.2.21(Fri) at TOKYO Shibuya WWW』
日時:2025年2月21日(金)OPEN19:00/START20:00
場所:渋谷 WWW / INFO : WWW 03-5458-7685
チケット:ADV¥4,000/DOOR¥4,500
スケジュール:先行チケット受付【10月17日(木)19:00〜10月23日(水)23:59 抽選】
抽選先行:10月17日(木)19:00~10月21日(月)23:59
一般発売:10月28日(月)19:00
Shibuya WWW:https://www-shibuya.jp/schedule/018478.php
プレイガイド:https://eplus.jp/aimi-25-0221/

aimi「Sippin' Sake」ジャケット
aimi「Sippin' Sake」

■リリース情報
New Single「Sippin' Sake」
アーティスト:aimi, Modesty Beats
発売日:2024年10月9日(水)
ダウンロード・配信リンク:https://orcd.co/sippinsake

収録曲:
M1. Sippin’ Sake
M2. Sippin’ Sake - Accapella
M3. Sippin’ Sake - Instrumental

<Credit>
Produced by Modesty Beats & Yui Mugino

Lyrics Written by aimi, Yui Mugino
Music Written by aimi, Yui Mugino, Modesty Beats
Mixed & Mastered by Ryusei
Art Work Designed by HIRAKI HOSAKA

■関連リンク
HP:https://www.aimimusicofficial.com
X(旧Twitter):https://twitter.com/aimi_music
Instagram:https://www.instagram.com/aimimusicofficial/
TikTok:https://www.tiktok.com/@aimi_tokyo
YouTube:https://www.youtube.com/c/aimiOFFICIAL

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