HISASHI「ずっと続けていくのがGLAYの使命」 デビュー30周年を経てなお高まるクリエイティブへの探究心

GLAY HISASHIインタビュー

レコーディング中に感じる“音楽をやっている意味”

HISASHIインタビュー写真(撮影=秋倉康介)

ーーHISASHIさんはYouTubeで配信している『HISASHI TV』で、GLAY楽曲やギターの解説をしていますが、それも“自分が影響を受けた音楽を伝えたい”という意図があるんでしょうか?

HISASHI:『HISASHI TV』を始めたのはコロナ禍がはじまった頃でした。僕らは普段そんなにテレビにも出ないし、ファンの皆さんと接する機会を増やしたいと思ったんですよね。アルバムの特典映像なんかで楽曲解説をやったこともあるんですけど、今はプラットフォームが増えているし、“弾いてみた”動画もかなり前から流行っているので。ちょっとお酒を飲みながら「この曲、こうやって作ったんだよ」みたいな話をすれば皆さんも緊張せずに楽しんでもらえるかなと。あとは「ギターってこんなに自由な楽器なんだよ」ということを伝えられたらなと思っています。僕らが音楽を聴き始めた80年代は、非日常的な世界観を表現しているバンドがたくさんいて、そういう人たちに憧れていたんですよ。「こうしなきゃいけない」みたいなものは何もないし、「グランジやるんだったらジャズマスター」とかではなく、もっと自由でいい。いいなと思う若手バンドはいっぱいいるけど、率先して音楽の楽しさを伝えていけたらなと思っています。レコーディングなんて、いっぱいズルできるんですよ(笑)。たとえば「Aメロはストラト、Bメロはレスポール」でもいいし、ピックアップを換えたり、オクターブのフレーズを入れることで厚みを出したり。フレットノイズをループさせて、曲のなかに入れたりね。(YouTubeチャンネルで)そういうことを喋ってるのも楽しいんですよ。

ーーまさにレコーディング芸術ですね。

HISASHI:僕、ライブよりレコーディングのほうが好きですからね。もちろんライブの爆発力もかけがえのないものなんだけど、スタジオで0から1を作る瞬間が本当に好きで。メンバー、亀田さん、エンジニアの工藤雅史さん、ドラマーの永井利光さんと一緒に「サビどうしようか?」みたいな話をしてると「これが音楽をやっている意味だな」と思います。もともとモノ作りが好きだし、究極の作業をやっているなという感じがあるし、すごく楽しいです。

ーーアルバム『Back To The Pops』の制作のなかで「これは面白いことができた」というものは?

HISASHI:「会心ノ一撃」なんですけど、デジタル配信バージョンとアルバムに収録されたバージョンで1カ所違うところがあって。〈王様だれだ?〉という歌詞のところでYouTuberの人の声を入れてるんです。デモを作る時にコムドットとばんばんざいがコラボしたときの音声をサンプリングして入れたんですけど、レコーディング中に亀田さんから「ここどうします?」と聞かれて、「このままいきたいんですよね」って(笑)。コムドットとばんばんざいにお願いして、許諾をいただきました。器に傷をつける、みたいな感じもありましたね。

ーーめちゃくちゃ面白いです。ライブにおけるクリエイティブに関してはどうですか?

HISASHI:“曲が生きている”というのを実感できますからね。20代、30代のときの曲を今やると、こっちの気持ちも違ってくるんですよ。たとえば「生きてく強さ」(1995年)もそうだけど、いろいろな災害や震災があって、楽曲のメッセージがさらに強く伝わっているんじゃないかな。そうやって曲の表情が変わっていくのも、ライブならではのクリエイティブなんだと思います。

ベルーナドーム『GLAY EXPO』で解けた20万人ライブの呪縛

HISASHIインタビュー写真(撮影=秋倉康介)

ーー6月のベルーナドーム公演では、1999年の20万人ライブ『MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL』のセットリストを再現。まさに“曲が生きている”ことを実感できたのでは?

HISASHI:20万人ライブは数字(観客動員数)が先行してニュースになってたんですよね。僕らとしては「デビューから5年間の曲をやった野外ライブ」というだけなんだけど、GLAY自体よりもデカくなったというか、負の遺産みたいになっていて。それを回収するようなライブをいつかやりたいと思っていたところもあるんだけど、ベルーナドームのライブはいたって普通でした(笑)。

ーー(笑)。メンバーのみなさんにとってはいつも通りのライブだった?

HISASHI:僕ら、普段から古い曲もやってますからね。もちろん新しい曲もやるけど、初期の曲もずっと大事にしていて。ただベルーナドームに関しては、呪縛が解けたというか、99年のライブにケリをつけた感じもありました。

ーーHISASHIさんは新しいテクノロジーを積極的に取り入れています。昨今は“AIと音楽”が話題になることも多いですが、AIとはどう付き合っていますか?

HISASHI:付き合い方が下手というか、あまり恩恵を受けていない気がしますね。たとえばYouTubeのBGMやサムネを作るときにAIの力を借りることはあるけど、まだちょっと様子見かな。楽曲制作に関しては、AIを使うよりも「あのミュージシャンにやってほしい」というほうがリアルな思いですね。こちらの解釈とは違う演奏をしても、「ちょっと違うんだけど、いいテイクだからOK!」ということもあって。そういうミラクル、レコーディングのマジックも楽しんでます。その場の雰囲気を録りたいという気持ちもあるんですよ。

ーーそのあたりはやっぱりバンドマンなんですね。

HISASHI:そうですね。最近、Oasisの曲がよく流れてるじゃないですか。聴いてたら全部曲を知ってるし、コードも大体同じで(笑)、「すげえな」って感心しちゃったんですよ。それを置きにいくんじゃなくて、自信満々でやり切るっていう。Queenと一緒にやったときもそうですけど(※2)、すげえバンドってすげえんだなと思ったし、音楽はやっぱり深いなと。僕もGLAYらしいオリジナリティをまだまだ築かないといけないと思いましたね。

HISASHIインタビュー写真(撮影=秋倉康介)

ーー30周年の活動を通して、音楽ファンも改めて“GLAYらしさ”を実感していると思います。HISASHIさんにとっても、今年は特別な1年になっているのでは?

HISASHI:サマソニ(『SUMMER SONIC 2024』)に出られたのはよかったですね。前後の並びがすごかったので、「どうなるんだろう?」と思ったんですけど(笑)、GLAYらしいライブができたのかなと。あとは怒髪天と対バンしたり(※3)、この後も[Alexandros]のフェス(※4)にも出て。もちろん単独ライブもやりたいし、ファンの人たちに会えるのもうれしいんですけど、イベントやフェスで自分たちの力量を試したいところがあるんですよね。アメリカでライブをやったりアジアツアーもそうだけど、普段とは違った環境でGLAYがどう変化するかに興味があるんですよ。そうやって鮮度を保ちたいというか。フェスでしか出会えない人もいますからね。皆さんが持っているGLAYのイメージと違うこともあるだろうし。

ーー常に変化していますからね、GLAYは。

HISASHI:そうですね。今後も活動の幅を広げたり、改めてGLAYを見つめ直す時期もあるだろうし。そういう作業を繰り返しながら、ずっと続けていくのがGLAYの使命だと思っています。

※1:アルバム『FREEDOM ONLY』収録の「青春は残酷だ」でマイケル・ジャクソンの「Black or White」のリフを引用
※2:今年2月10日に開催されたQUEEN + ADAM LAMBERT『THE RHAPSODY TOUR』札幌ドーム公演にGLAYがスペシャルゲストとして出演
※3:ライブイベント『箭内道彦60年記念企画 風とロック さいしょでさいごの スーパーアリーナ“FURUSATO”』3月31日 夜の部に出演
※4:[Alexandros]主催の野外フェス『[Alexandros] THIS FES '24 in Sagamihara』10月26日出演予定

■リリース情報
17th Album『Back To The Pops』
発売日:2024年10月9日(水)
ST&DL:https://GLAY.lnk.to/GLAY_17thAL
特設サイト:https://www.glay.co.jp/feature/17thalbum_backtothepops

・G-DIRECT限定盤 / 18,095円(税込) / LSGC-0011
・CD+DVD / 6,710円(税込) / PCCN-00063
・CD ONLY / 3,850円(税込) / PCCN-00064

【CD収録内容】 ※全形態共通
1. Romance Rose
2. Buddy
3. シェア
4. さよならはやさしく
5. 会心ノ一撃
6. 海峡の街にて
7. BRIGHTEN UP
8. V.
9. Beautiful like you
10. whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)-
11. その恋は綺麗な形をしていない
12. なんて野蛮にECSTASY
13. シャルロ
14. Back Home With Mrs.Snowman

【初回生産限定盤封入特典】
「購入者限定ライブチケット抽選受付シリアルナンバー」
※全形態共通、初回生産分のみ封入
10月31日にZepp DiverCityで行われる
アルバム購入者限定ライブチケットエントリーシリアルナンバー

【DVD 収録内容】
■GLAY DAY SPECIAL “LIVE BY THE SEA”
1. SOUL LOVE
2. V.
3. Beautiful like you

■さよならはやさしくMusic Video
■シェアMusic Video
■Back To The Pops Member Interview & Documentary short ver.
■GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025 in BELLUNA DOME
サバイバル
whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)-

【G-DIRECT盤Blu-ray 収録内容】
■GLAY DAY SPECIAL “LIVE BY THE SEA”
1. SOUL LOVE
2. シャルロ
3. V.
4. 会心ノ一撃
5. サバイバル 
6. Beautiful like you

■さよならはやさしくMusic Video
■シェア Music Video
■Back To The Pops Member Interview & Documentary
■GLAY DAY SPECIAL“LIVE BY THE SEA” Documentary

■風とロック さいしょでさいごのスーパーアリーナ “FURUSATO”
1. 生きてく強さ
2. 春を愛する人
3. 雪割り桜
4. BEAUTIFUL DREAMER

■SUMMER SONIC 2024
1. Blue Jean
2. BLEEZE
3. 会心ノ一撃
4. FATSOUNDS
5. SHUTTER SPEEDSのテーマ

■GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025 in BELLUNA DOME
サバイバル
whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)-

■ライブ情報
『GLAY 30th Anniversary ARENA TOUR 2024-2025 “Back To The Pops”
Presented by GLAY EXPO』

2024年
11月8日(金)・11月9日(土) 大阪城ホール
11月16日(土) 長野ビッグハット
11月23日(土祝)・11月24日(日) 北海道・北海きたえーる
12月7日(土)・12月8日(日) 東京・有明アリーナ
12月14日(土)・12月15日(日) 愛知・Aichi Sky Expo ホールA
12月21日(土)・12月22日(日) 広島サンプラザホール 

2025年
1月3日(金)・1月4日(土) マリンメッセ福岡 A館
1月18日(土)・1月19日(日) 神奈川・横浜アリーナ

GLAY公式サイト:https://www.glay.co.jp/

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