Mori Calliope、幸祜、戌亥とこ、Ibuki……エッジの効いたボーカルが評価されるバーチャルシンガー

 VTuberやバーチャルアーティストが続々と登場する昨今。今年1月には花譜が国立代々木競技場 第一体育館でワンマン公演を成功させたほか、直近では星街すいせいや宝鐘マリンらホロライブプロダクション所属のVTuberがアリーナ規模の単独公演を発表するなど、音楽シーンの一翼を担うアーティストとしての存在感を年々強めている印象だ。

 アニメを筆頭にした二次元キャラクターコンテンツ、生配信を主体にしたストリーマー文化、音楽やイラストなどのクリエイター文化など、多様な文化の交差点のような雰囲気で人気を広げる現在のVTuber/バーチャルアーティスト業界。音楽だけに絞ってみても、リアルライブや配信ライブ、フェス出演、海外でのライブ公演など活躍の舞台はさらに広がり、音楽的にも二次元コンテンツの範囲にはとどまらない楽曲が生まれている。

 そしてそんな楽曲の広がりと共に、様々な特性を持ったシンガーが次々に登場。もともと日本の二次元キャラクターコンテンツの要素が強いため、可愛らしいビジュアルに甘めな声質というイメージをもたれることも少なくないが、今ではロックシンガーやラッパーを打ち出したクールなシンガーも多数登場している。本稿では、エッジの効いたボーカルが印象的なバーチャルシンガーに焦点をあて、その魅力を紹介していきたい。

Mori Calliope 

【MV】Go-Getters - Mori Calliope (Ending Theme of Suicide Squad: ISEKAI)

 まずはVTuber界を代表するラッパー/シンガー、ホロライブEnglishのMori Calliope。英語と日本語を自在に行き来する多言語でのリリックや、エミネムらを連想する性急なフロウを筆頭にした引き出し豊富なラップ・歌が特徴的で、TVアニメ『異世界スーサイド・スクワッド』のEDテーマ「Go-Getters」や『ONE PIECE』106巻の公式テーマソング「未来島 ~Future Island~」など人気コンテンツにも多数楽曲を提供。中でもトラップやヘヴィロックなどを取り入れた楽曲に振り切る際の破壊力は圧巻で、その魅力はライブでの生パフォーマンスでこそ何倍にも跳ね上がる。

 日本と海外の懸け橋として東京観光大使を務めるかたわら、今年8月にはホロライブEnglishとしてNYの由緒ある会場・キングスシアターでのライブイベント『hololive English 2nd Concert -Breaking Dimensions-』を成功させるなど、VTuberの音楽シーンの最前線でこの文化ならではの魅力を海外にも発信している。

幸祜

No.036 幸祜 -KOKO- 「始まりの銃声」【Official Music Video】

 花譜を筆頭に才能溢れるシンガーが多数所属するKAMITSUBAKI STUDIOに所属するバーチャルロックシンガー・幸祜。ビートとともに跳ねるようなクラブ曲からバラードで発揮される染みるような感情表現まで様々な歌の表情を持つシンガーではあるが、特にデジタルロックチューン「the last bullet」を筆頭にしたロックテイストの楽曲で聴ける強く伸びやかに歌い上げるボーカルが非常に印象深い。6月にはCIVILIAN コヤマヒデカズが提供した「始まりの銃声」をリリース。“幸祜バンド”によるゴリゴリのロックナンバーだが、そのサウンドに負けない真っ直ぐと突き抜けるようなロングトーンはさながら銃弾のよう。またひとつ、ロックシンガーとしての進化を見せる楽曲となった。

 同事務所の花譜、理芽、春猿火、ヰ世界情緒と組んだユニット V.W.Pでも、ひときわ凛とした雰囲気の歌声で楽曲にスパイスを加えている。自身の声をもとにした「音楽的同位体 狐子(COKO)」を筆頭に音声合成ライブラリ/ボカロ的な方向などでの活躍も広がっており、バーチャルシンガーならではの可能性を追求しているひとりだ。

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