戦慄かなの、再始動のステージは“らしさ”溢れるものに メジャーデビューを発表した生誕祭を振り返る
9月8日に新宿ReNYにて開催された『戦慄かなの 祝!生誕&再始動スペシャルイベント2024』は、そのタイトル通り、戦慄の誕生日当日を祝福するとともに、改めて音楽活動のリスタートを宣言する記念すべき日となった。
まずは経緯を遡りたい。戦慄は、今年1月20日にソロ、実妹・頓知気さきなとのユニットfemme fatale、かてぃと組んだ悪魔のキッスのすべての音楽活動の無期限休止を発表。XやInstagramの投稿には、表現活動をする上で「気付いたら何もできない身体になって」いることを綴り、「活動再開に向けて色んなことを準備したり自分を取り戻す期間にしたい」として、休養に入ることを説明した。
そのことは多くの人を驚かせた一方、じつは熱心なファンには織り込み済みの展開であり、すでに前年のツアーなどで語られていたことでもあった。ただ、その期間がいつまでになるのかがわからないことに不安を覚えた人もいるかもしれない。音楽活動における「無期限活動休止」という言葉は、事実上の解散や引退を意味するパターンも少なくないからだ。
しかし、戦慄はそのケースに当てはまることはなかった。大きかったのはヤングスキニーの「ベランダ feat. 戦慄かなの」のヒットだろう。戦慄がゲストボーカルとしてフィーチャーされたこの曲は、活動休止期間中の2月にリリースされ、TikTokで旋風を巻き起こした。YouTubeでのミュージックビデオの再生回数は9月現在で660万超えを叩き出している。戦慄はこの曲を通じてヤングスキニーのライブでの客演、音楽番組での共演なども果たし、充電後の活動も予見させる生き生きとした姿を確認することができた(しかしながら、ここからメジャー・デビュー曲の楽曲提供に繋がるとは誰が予想できただろうか?)。
事態が動いたのは8月8日夜。9月8日からライブ活動を再開し、未発表の新曲を披露するとのアナウンスがあり、再開を喜ぶ声が多数寄せられた。とはいえ、このことを想定していた人もいたのではないかと思う。6月発売のファッション誌『LARME』(LARME)2024年夏号「100日後に復活する戦慄かなの」特集にて、次なる展開の準備を進めていることや、9月前後を目処に復帰するプランもはっきりと語っているのだ。もちろん、誰もが雑誌の記事をチェックしているわけではないだろうが、ともかく、ファンにとっては嬉しい報せであることに違いない。無期限の活動休止を発表してから7カ月半。戦慄は遂にカムバックを果たす。
かくして9月8日、開演の時間を迎えた。まずは前説として頓知気がサプライズ登場。なんの説明も受けずにステージに立たされたという頓知気が、肩肘の張らない気さくなおしゃべりで場を温めたのち、ファンの「かなのちゃーん!」という呼び込みとともに戦慄がステージに。若干の照れを見せながらもさらりと登場した戦慄は、そのまま頓知気と無軌道なトークを繰り広げる。その内容の詳細はここには記さないが、久しぶりにファンの前に立ったとは思えないようなプライベートな話題をMCの都度、次々と投下していき、何度も笑いや驚きを与えていた。
いよいよライブパフォーマンス。幕開けは先頃リリースされたEP『hate p.a.r.t.y. (; 😉 *.+.』から表題曲の「hate p.a.r.t.y. (; 😉 *.+.」。フロアを揺らすビートと、そのうえで舞うような軽やかな歌声は健在である。続いては「wendigo」。戦慄のライブと言えば“戦慄ビッチーズ”なるダンスチームを従えての華やかなステージングも特徴のひとつで、この曲から登場した4人のダンサーとともに一糸乱れぬダンスを披露した。
MCを挟んでのスロウナンバー「ride my wave」では、男性ダンサーと1対1で。昨年6月の単独公演でも男性2名と踊る場面があったが、それをディープに発展させ、本人曰く「1人のダンサーとエロダンスをする」という方向性を突き詰めた妖艶な仕上がりに。この曲に限らず全般的に言えることだが、休止期間を経て、ダンス表現がさらにパワーアップした印象を受けた。