TOMORROW X TOGETHER、RIIZE、aespa、Stray Kids……“日本語曲×アニメーションMV”の話題作が増えた背景

 アニメを使ったK-POPグループのMVの中でも、特に注目を集めた印象があるのが、Stray Kidsが2023年2月にリリースした日本1stアルバム『THE SOUND』収録の「CASE 143 -Japanese ver.-」。本作は、「おぱんちゅうさぎ」や「んぽちゃむ」などのキャラクターの作者として知られ、ポップな絵柄と独特でシュールな世界観がSNSで人気を集めているイラストレーター、可哀想に!が制作を手がけたことで話題に。

Stray Kids「CASE 143 -Japanese ver.-」MV

 本作は、恋に落ちた時の気持ちを事件になぞらえた歌詞が印象的で、Stray Kidsの醍醐味ともいえる強烈なビートやサウンド、パワフルなラップが光る一曲だ。本人出演の韓国語バージョンのMVでは、年相応の青年らしい爽やかで無邪気なStray Kidsメンバーを、警察官に扮したStray Kidsメンバーが追いかけるという一人二役のストーリーが展開されているのだが、日本語バージョンのアニメMVでは、可哀想に!による丸みを帯びた可愛らしいタッチのイラストでその様子が完全再現されている。

 特に、メンバーをモデルにしたキャラクターたちはポップにデフォルメされつつも、一人ひとりの個性や特徴がしっかり捉えられて、パッと見ても誰がどのキャラクターなのか一目瞭然。Stray KidsがこちらのMVを視聴しながらリアクションをする動画も公開されているが、メンバーたちは「ほっぺたが本当に可愛い!」「本当に上手にできている」「笑みが止まらない映像でした」と終始その完成度の高さや面白くて可愛いキャラクターについて口々に大絶賛している。

Stray Kids “「CASE 143 -Japanese ver.-」MVリアクション”/ Music Video Reaction (『THE SOUND』リリース記念特番 OA)

 可哀想に!といえば、Stray Kidsの大ファンであることでも知られているが、普段から彼らをよく見ていて応援しているからこそ、このようにメンバーの特徴やグループ内での位置づけを見事に捉えて、キャラクターに落とし込めるのだろう。そして、本人出演のMVの内容を、メンバーの動きやストーリーの展開、演出、構成など何から何まで細かくイラストで完全再現しているところからは、Stray Kidsへの愛情を感じることができる。

 そしてStray Kidsに続き、aespaも可哀想に!とのコラボレーションで話題に。7月3日にリリースされた日本デビューシングル『Hot Mess』の収録曲「Sun and Moon」のリリックビデオでは、今ブームが再熱しているフラッシュゲームをテーマにメンバー4人をモチーフにしたキュートなキャラクターが登場。本作は〈引かれ合う pure gravity 君の光で I shine〉、〈寂しげな moonlight 君といれば/暗闇も so bright 歩めるから〉と歌詞にあるように、恋することで成長していく様子が歌われた切なくて甘いラブソング。aespaといえば、強気なアティチュードを感じられる楽曲が多いイメージだが、本作はより柔らかく共感を呼びやすい内容となっていて、可愛らしいアニメーションとの親和性もばっちりだ。

aespa「Sun and Moon」Lyric Video

 MVでは、2000年代初期〜中期にブームを巻き起こしたインターネットの掲示板やニコニコ動画を彷彿させるようなシーンもあり、Y2Kブームを牽引するaespaらしい雰囲気も感じられる。また、可哀想に!らしさが溢れるポップなイラストで再現されたaespa、動物のキャラクターに落とし込まれたaespa、スタイリッシュなアニメーションのタッチで描かれたaespaなど、シーンによって切り替わる世界観の違いを異なる絵柄で表現しているところも巧妙だ。

 そして、このMVが功を成したのか8月に行われたaespaの東京ドーム公演『2024 aespa LIVE TOUR – SYNK : PARALLEL LINE – in TOKYO DOME -SPECIAL EDITION-』では、可哀想に!の描き下ろしグッズも展開。アニメMVをきっかけに今後も様々なコラボが期待できそうだ。

なぜ日本語曲にアニメMVが制作されるのか

 このように数々のK-POPグループの日本語曲MVでアニメが使われているが、それは恐らく“日本=アニメ”のイメージが定着しているからなのだろう。また、K-POPグループがリリースする日本語曲はキャッチーなメロディであったり、親近感を覚えるような歌詞であったりすることが多いと感じるが、そういった楽曲が、日本人にとって身近な存在であり、感情移入をしやすいアニメとの親和性が高いことも理由として考えられる。

 そして、本記事で取り上げた作品のように、有名なキャラクターや人気クリエイターとMVを通してコラボすることは、グループの知名度アップに繋がり、グッズ販売やポップアップイベント開催など日本活動を盛り上げることにも役立つのだろう。

 実際に、Stray KidsやaespaのアニメMVを制作した可哀想に!は、彼らとコラボしたことでより一層韓国での知名度が高まっている。また、これまでK-POPに興味がなかった層が、可哀想に!が手がけたMVを見たことで、「このアニメのモデルとなっている人たちは誰?」と韓国のアイドルに関心を持ち始めているケースも。

 今やK-POPは日本でもメジャーに聴かれる音楽ジャンルとなっており、今後も新たに日本進出してくるグループがたくさん現れるだろう。今後日本デビューするK-POPアイドルたちがどのような形でアニメやクリエイターとコラボを果たすのか楽しみである。

※1:https://realsound.jp/2024/07/post-1711083.html

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