GANG PARADE ヤママチミキ&ユメノユア×不眠症対談で紐解く絆と「トーナリティ」、そして雄之助&牛肉が明かす「一夏」秘話
両A面シングル『Peace☆超パニック / 一夏』に収録されている「トーナリティ」は、ヤママチミキ&ユメノユアによるユニット曲。楽曲を手がけたのは、新進気鋭のボカロP・不眠症。スタイリッシュなジャズの要素とロックの熱量が融合したサウンドが、GANG PARADEの最古参メンバーであるふたりの間にある固い絆を伝えてくれる。この曲に込められている想いとは? ミキ、ユア、不眠症に語り合ってもらった。
表題曲のひとつである「一夏」の作曲を担当した雄之助、作詞を手がけた牛肉にもメールインタビュー。どのようにしてGANG PARADEと“夏”を描き、歌にしたのか――その過程について聞いた。(田中大)
【ヤママチミキ&ユメノユア×不眠症「トーナリティ」対談】歩んできた10年の結晶を歌に
――なんだか初々しい雰囲気ですね。
ユメノユア(以下、ユア):不眠症さんとお会いするのは、ほぼ初めてなんです。
不眠症:ご挨拶はさせていただいたことがあるんですが。
ヤママチミキ(以下、ミキ):ライブを観に来てくださったんです。
不眠症:あらためて自己紹介します。不眠症と申します。
ユア・ミキ:よろしくお願いします!
ミキ:……楽曲は遊び心に溢れていますけど、真面目そうな方ですね。
不眠症:とんでもないです(笑)。
ミキ:制作の過程でレスポンスがめちゃくちゃ早かったんです。とてもありがたいとワーナー(ワーナーミュージック・ジャパン)のみなさんがおっしゃっていました。柔軟に対応していただき、ありがとうございます。
不眠症:こちらこそです。
――ユアさんから見た不眠症さんの印象は?
ユア:悪いこと、したことなさそう。
ミキ:あははははは!
不眠症:全然ないですよ。清廉潔白です(笑)。
――不眠症さんが今までに犯した最大の罪は、何でしょうか?
不眠症:なんだろう? …………アリを踏んでしまったとか(笑)?
ユア:ええーっ!
ミキ:ヤバい!
――誰もが無意識のうちに罪を犯しているものですよ。GANG PARADEのことはもともと知っていたんですか?
不眠症:GANG PARADEのことはもともと知っていて、「SUPER PARTY PEOPLE」を聴いたことがありました。エレクトロスウィングっぽくてかっこいいなと思って。
ユア:どういうきっかけで「SUPER PARTY PEOPLE」を聴いてくださっていたんですか?
不眠症:たまたまアプリで流れてきたのを聴いたんです。
ユア:嬉しいです。ありがとうございます。
不眠症:……はい。
ユア:……………………………………………………。
不眠症:…………………………………………………。
――なんですか、この間は(笑)?
ミキ:私は不眠症さんとユアに挟まれているので、なんか変な感じなんですけど。
ユア:人見知り同士の会話です。
――(笑)。不眠症さんに楽曲制作をお願いした経緯は、どのような感じだったんでしょう?
ユア:お互いのスタッフさん同士での繋がりがあるというご縁もあって、今回お願いさせていただきました。
不眠症:何曲かデモをお渡しして、そのうちの1曲に対してレスポンスをいただいて、それを踏まえて作っていきました。制作にあたってGANG PARADEの今までの曲をいろいろ聴かせていただいて、音楽面での懐の深さを感じていたんです。「自由にやっても大丈夫そうだな」と思って、楽しく作りました。
ユア:スタッフの方からも、「ユアとミキをイメージした曲の制作を進めています」というお話を聞いていて。ミキのイメージがジャズっぽい要素で、私のイメージがロックっぽい楽器の音だと。そこを上手く融合できるように作っていただいたのが「トーナリティ」です。
――遊び人(ファンの呼称)は、ユア&ミキの組み合わせも嬉しかったはずです。
ユア:そうだといいですよね。
ミキ:沸いてくださっていたら嬉しいです。
――初期メンバー、さらに言えばGANG PARADEという名前になる前のPOPに同じタイミングで加入したふたりですからね。2015年でしたっけ?
ユア:はい。
――このふたりのユニット曲は、意外と初めてですよね。
ミキ:初めてです。歌詞を一緒に書いたことはあるんですけど、ふたりだけで歌った曲はないです。
不眠症:おふたりで書いたのは、「INVOKE」ですよね。
ミキ:そうです。
不眠症:「INVOKE」も、「(組み合わせが)アツい!」と思って聴きました。おふたりの感じを曲にしたいと思っていたんです。10年目だとお伺いしていたので、「いろいろありつつも前に行くぞ!」という空気感を表現したいという思いがありました。
ミキ:不眠症さんに私たちのことをたくさんお伝えして曲を作っていただいているということも、スタッフさんから聞いていたんです。完成した「トーナリティ」を聴いて、私たちのことを本当に調べてくださってたのを感じました。
ユア:感謝の気持ちでいっぱいの状態でレコーディングに臨みましたね。
不眠症:ファンの方がGANG PARADEの歴史をまとめたサイトがあったので、それもチェックしました。
ミキ:そういうサイトがあるんですか!?
不眠症:そうなんです。すごかったですよ、そのサイト自体がおふたりが歩んできた結晶みたいでした。5ページくらいみっちり書かれていて、3日くらいかけて読み込みました。そういうサイトがいくつかあって、とても参考になりましたね。僕のなかでミキさんは「INVOKE」のソロパートのイメージが強いんです。オチサビのところを歌っていらっしゃいますよね?
ミキ:はい。
不眠症:「すごく力強い歌の人だな」と思いました。
ミキ:ありがとうございます!
不眠症:そういう歌を聴いていたので、バンドっぽいサウンドならおふたりで歌い上げていただけるだろうなと思っていました。だから、サビを思いっきりゴリゴリにしたんです。
――不眠症さんは、ボカロPとして楽曲の投稿を始めて約4年ですよね?
不眠症:はい。音楽系の仕事をしたいとずっと思っていて、投稿をするようになりました。
ユア:我々の世代は、ボカロシーンが盛り上がり始めた時期を通ってきているんです。ボカロの曲も進化していますよね?
不眠症:そうですね。昔はもっとアングラでオタクカルチャーのイメージがあったと思うんですけど、今はもっとポップス寄りになってきていると思います。
――ボカロの曲は、生身で歌うのが難しいことが多いですが、「トーナリティ」はいかがですか?
ミキ:難しいです。
不眠症:すみません!
ユア:謝らないでください!
ミキ:私たちの技術不足なのもあって(笑)。この曲はメロディの音域が細かく変わっていく感じがあるんですよね。そこが難しかったです。
ユア:コード進行も今までのGANG PARADEの曲とは少し違う感じがしました。これまでいろいろなアーティストさんに楽曲を提供していただいているんですけど、そういうなかでも一味違うものを実際に歌ってみて感じました。ふたりのハモりにも今回挑戦したので、今後のライブで歌うのを楽しみにしています。
ミキ:Bメロの掛け合いは、ふたりで歌うことを想定して作ってくださっているのを感じました。私たちの歴史をよく知っているお客さんには特に刺さるんじゃないかなと思っています。
――おふたりの歴史は、ほぼギャンパレの歴史と言っても過言ではないですからね。
ユア:そうですねえ。
ミキ:そうなっちゃいましたねえ。
――先輩のカミヤサキさんたちから始まったグループですが、そのスピリットを継承しているおふたりです。地道に歩んできたメンバーたちを応援する気持ちが強いのは、ギャンパレの特徴だと思います。
不眠症:そういう雰囲気は、ライブを観させていただいた時も感じました。僕はアイドルのライブ現場に行くのが初めてだったんですけど、「ファンの熱量がすごい!」と思って。ファンの方たちの掛け声って、ギャンパレさん側で作るんですか?
ミキ:基本的には自然発生ですね。
ユア:アイドル文化で定番のコールとかもありますけど。
ミキ:それ以外の特殊なものは、自然発生です。
不眠症:ライブでファンと築き上げていくものがあるって、素敵ですね。
ユア:ありがとうございます!
ミキ:遊び人も喜びます!
――不眠症さんは、アイドル文化にあまり触れてこなかったんですね。
不眠症:そうなんです。まわりの友人たちは好きだったんですけど、僕はあまり通ってこなかったので。
――どういう音楽が好きだったんですか?
不眠症:ずっとバンドの音楽を聴いていました。ユアさんは、BRAHMANがお好きなんですよね?
ユア:はい。ドラムのロンちゃん(RONZI)が、仲良くしてくれています(笑)。
ミキ:すごく優しくて穏やかな方です。
ユア:好き好きロンちゃんとは、ギャンパレが分裂した時期のGO TO THE BEDSで対バンもさせていただきました。
ミキ:そのご縁で仲良くさせていただいています。
不眠症:なるほど。あと、ユアさんはSUPER BEAVERも好きなんですよね?
ユア:はい、好きです!
不眠症:熱いロックバンドが好きなんですね。
ユア:そうなんだと思います。熱い人たちの言葉は胸に響くから、MCに関しても学ばせていただいています。不眠症さんは、どういうバンドを聴くんですか?
不眠症:いろいろ聴くんですけど、最近のバンドだとKing Gnuが好きです。僕はASIAN KUNG-FU GENERATIONからバンドを聴くようになって、そこからELLEGARDEN、アルカラとかも聴くようになりましたね。毎年『CDJ』(『COUNTDOWN JAPAN』)にも通しで行っていましたね。アジカンは大好きで、どの曲がどのアルバムの何曲目なのかも言えるくらいでした。
ミキ:私もロックは好きです。高校の時は軽音部で、その頃はよく聴いていました。めちゃくちゃ好きなのはGO!GO!7188さんです。
不眠症:僕もめっちゃ好きです(笑)。
ミキ:高校の時にコピバンを組んでいました。
不眠症:僕も大学時代はGO!GO!7188のコピバンをやってました。ギターボーカルだったんですけど。その大学時代のバンドとは別に中学から軽音楽部に入っていて、そこでくじらと一緒に音楽をやるようになったんです。
――不眠症さんの曲でくじらさんがベースを弾いているのは、そういう繋がりだったんですね。
不眠症:はい。曲をYouTubeに投稿するようになったのも彼の勧めだったんです。「不眠症の曲は、ボカロが好きな人に刺さると思うよ」と言われて。
ユア:私も今、家でDTMをやっているのでボカロに興味があります。まだボカロソフトを使ったことがなくって。
不眠症:僕も歴はまだ4年くらいです。ハマると沼の世界ですね(笑)。
ユア:DTMをやりつつも、なかなか曲にならなくて進まないんです。サビっぽいものができて、それに対するAメロを作っても、「何かが違う!」って思うことの繰り返しなんです(笑)。
不眠症:気合いで繋ぐしかないんですよね。でも、曲の断片を素材として残しておいたら、「これとあれを合わせたら曲になる!」っていうことが増えてくると思いますよ。
ユア:なるほど!
ミキ:私はDTMをやったことがないんですよ。ギターは弾けるんですけど、たぶん曲作りのセンスがないんだろうなと思います(笑)。
不眠症:曲作りは、参考にするものをいくつか用意するといいですよ。曲作りに行き詰まったら曲を聴いて、そこで仕組みというか、「ああ、こうやっているんだ」ということがわかるので。
ユア:勉強になります!