GANG PARADE ヤママチミキ&ユメノユア×不眠症対談で紐解く絆と「トーナリティ」、そして雄之助&牛肉が明かす「一夏」秘話
やめようと思ったことはないけど、「無理かも」って思ったことはある(ユア)
――「トーナリティ」にも不眠症さんが吸収してきた音楽の要素がたくさん反映されていると思いますが、特にこだわった部分はありますか?
不眠症:やはりおふたりの掛け合いですね。あと、歌詞の最後の部分にすべてが集約されていると思っています。最後のパートが書けた時に「ああ、よかった!」「できた!」と安心しました。
――歌詞のイメージや方向性は、どのように膨らませていったんでしょう?
不眠症:最初にメロディだけを打ち込んだものをお渡しして、歌詞のイメージをおふたりからいただいたんです。きれいな情景描写だったので、それをもとにしてストーリーを書き進めていきました。最後の語り合うような歌割りを聴いて「すごくいい!」と思いましたね。
ユア:「気づいたらミキとは家族以上に一緒に過ごしてきたんだなあ」と、レコーディングしたあとに思いました。
不眠症:ものすごく素敵な関係性ですよね。バンドだってなかなか10年続けることは難しいですから。
ミキ:「そういえば10年かあ」という感じなだけなんですけどね(笑)。
不眠症:どういう感覚なんですか? “友だち”とか?
ユア・ミキ:それはないです!
不眠症:ええっ!?
ミキ:口を揃えて言うことじゃないですけど(笑)。
ユア:でもそうだよね(笑)。
不眠症:でもきっと、それはずっと一緒にやってきた人にしかわからない感覚なんですよね。
ミキ:この活動をしているなかで「当たり前にいる存在」だと普通に思っているのかもしれないです。だから、私の今の人生のなかでユアがいなくなるということがあまり想像つかないですね。
ユア:あら(照)。
不眠症:めちゃくちゃデカい存在なんですね。
ミキ:めちゃくちゃデカいですよ。
ユア:みなさん、聞きましたか?
ミキ:(笑)。この関係にどういう言葉が合うのかは、よくわからないんですけどね。“戦友”とか言われることもあって、「たしかになあ」とは思うんですけど、ちょっと違う気もしていて。だから、言葉では上手く言い表せない関係ではあるのかもしれないです。
ユア:たぶん、もうそういう人とは出会わないと思います、ミキみたいな関係の人とは。
不眠症:僕はバンドの周年ライブとかに行くと涙ぐんじゃうタイプなので、今もすごく心が動かされています(笑)。
――(笑)。不眠症さんは、GANG PARADEにハマる素養をお持ちだと思います。
不眠症:そうかもしれないですね(笑)。ファンのみなさんのコメント欄で「ミキユアの〇〇〇が〜〜」って、いろいろ熱く書いてあるのを見ました、ファンのみなさんだからこそわかる、そういうものがあるんでしょうね。
――初めてユアさんとミキさんが会ったのは、オーディションの時ですか?
ユア:オーディションが終わったあとですね。
ミキ:合格発表で顔合わせした時に初めて会いました。
――お互いの第一印象は?
ミキ:「カリカリだなあ。細っ!」。
ユア:「態度悪い女」(笑)。
ミキ:え〜(笑)?
ユア:第1期のBiSの解散直前に渡辺(淳之介)さんが、いろいろメンバーにキツく当たっていたからです。ミキはサキちゃん(カミヤサキ)が好きで、サキちゃんにしっかり厳しく接していた渡辺さんをあんまり好ましく思っていなかったんですよね。
ミキ:渡辺さんに対して反抗的な態度でした(笑)。
――(笑)。ミキさんのユアさんへの印象は、「細っ!」以外には何かありましたか?
ミキ:「(すぐに)やめそうだな」というのも、実は思っていました。今は“強い女”という感じだと思うんですけど、当時は蹴ったら折れそうなくらい細くて(笑)。それに、あまり喋るほうでもなかったので、「大丈夫かしら?」と思っていたんです。私たちのオーディションの時はサキちゃんが全員のことを見てくれて、サキちゃんが選んだメンバーだったので、「サキちゃんが選んだなら大丈夫だろう」と思ってはいましたけど。
ユア:サキちゃんにも「最初にやめると思ってた」って言われていました(笑)。
――やめようと思ったことはあるんですか?
ユア:やめようと思ったことはないけど、「無理かも」って思ったことはあります。
ミキ:そうだね(笑)。いろいろあったので。
不眠症:無理だと思う時があっても続けてきたのは、グループが好きというのがあるからですか?
ユア:はい。
不眠症:やっぱりすごいですよね。グループ活動への憧れのようなものは僕もあるんですけど、それと同じくらい「大変そうだな」というのを感じるんです。僕はひとりでやっていて、何かをやる時のチームのメンバーは毎回変わるので、余計に感じますね。
めげたとしても、「好きだと感じることをやりたい」と思い続ける(ミキ)
――少し話を戻しますが、「トーナリティ」のサウンド面に関してポイントなどはありますか?
不眠症:Cメロですね。曲のなかで雰囲気や曲調をガラッと変えるのが、個人的に初めての試みで。それに、こういう椎名林檎さんの曲みたいなことをやってみたい気持ちは前からあったんですけど、自分の曲でやる機会がなかったんですよね。でも、ミキさんがディズニーなどのミュージカルをお好きだとお伺いしていたので、チャレンジしてみたんです。デュエットの曲をほとんど書いたことがなかったので、それも楽しかったです。
ミキ:嬉しいです! 私はミュージカルの曲が、すごく好きなので。ディズニーも好きなんですけど、そのなかでも特にミュージカル作品が好きなんです。
ユア:こういうのは、ふたりの曲だからチャレンジできたことかもしれないですね。ライブでのパフォーマンスがどうなっていくのかも楽しみです。振り付けをどうするのか話しているところなんですけど。
ミキ:構成も考えないといけないですね。不眠症さんは、何かイメージとかありますか?
不眠症:イントロで何かできそうですよね。当初はイントロが短かったんですけど、「(イントロで)ダンスをできる部分がほしいです」というお話をいただいて、今の形になったんです。僕はイントロを長くしすぎてしまう傾向があって、普段は意図的に短くしているんですけど、「長くしていいんだ!」と思って。楽しみながら作りました。
――「トーナリティ」というタイトルも印象的ですが、どのような意味を込めたんですか?
不眠症:「トーナリティ」は音楽理論の「調性」という意味で、GANG PARADEのなかでおふたりがそういう存在になっていると思ったんです。
ユア:素敵な意味ですよね。
ミキ:嬉しいです。
不眠症:おふたりはメンバーの先陣を切っていて、GANG PARADEの中心にずっとある感じがするんですよね。
ミキ:そうだったらいいな。でも、「グループを引っ張らなきゃ!」という義務感はないんですよ。ギャンパレって、ずっとリーダーを作ってこなかったので。そういう役割をやらなきゃいけないとは思うんですけど、義務として考えてやっているというよりは、「辿ってきた年月を考えるとそうなるよね」という感じです。でも、メンバーそれぞれがちゃんとギャンパレへの想いを持って活動しているので、「まとめなきゃ」「引っ張らなきゃ」みたいな張り詰める感じはそこまでなく、活動してこれました。
ユア:私も「自分にできることを日々頑張ろう」と思って生きていますね。全員がGANG PARADEのことを想って活動できるのがベスト、理想形です。
――約10年、厳しい音楽の世界で活動してきたおふたりから、ボカロP歴4年の不眠症さんに何かアドバイスはありますか?
ミキ:言えることはなにもないです(笑)。
ユア:運よく続けられただけなので。
不眠症:やっぱり大切なのは根性ですかね?
ミキ:たしかに、諦めない気持ちは大事です。それがないと続けられない、とは思います。私たちが所属しているWACKという事務所自体、やめてしまうメンバーも結構多くて。活動をするなかでどうしても頑張れない瞬間がやってきてしまって、諦めちゃったんだろうなというのも伝わってくるんですよね。ずっと続けてきたメンバーでさえも心が折れてしまったことはいっぱいあるだろうし、頑張れない状況の時もあると思うんです。でも、活動することを諦めていないんですよ。GANG PARADEで続けてきたメンバーが多い理由は、それなのかなと感じます。だから気持ちはマジで大事なのかなと。
不眠症:やはり、めげないことですね。
ミキ:めげたとしても、「好きだと感じることをやりたい」と思い続けることが大事だなとよく考えることがあります。
不眠症:個人でやっていると行き詰まったり、急に連絡が取れなくなる人がいたりするんです。そういうことがあると「なんだろうな……」と心が折れそうになるんですけど、ずっと続けている方からそういうことをお聞きすると励みになります。
――お話をしながらお互いについて知ったこういう機会が、また一緒に曲を作ったりすることに繋がったらいいですね。
不眠症:ぜひ!
ユア:12人全員での曲も作っていただきたいですね。
――ライブで遊び人と一緒に盛り上がったら、何か楽曲制作のインスピレーションを得られるかもしれないですし。
不眠症:修行が必要そうですよね。弾き返されてしまうかもしれないです。みなさん、腕につけたライトの色を変えたりしていますよね?
ミキ:推しメンの色にしてくれているんです。両腕に4、5個つけている遊び人もいますし、よかったら両腕に12個つけてください。全色をつけていただけたら、メンバーのみんなが喜びます!
不眠症:12個って、つけることが可能なんですか?
ミキ:結構いるよね?
ユア:うん!
ミキ:連結して首輪にしている遊び人もいます(笑)。
不眠症:では、今度ライブにお邪魔させていただく時には12色点灯させます(笑)。
■不眠症
2020年より活動を開始したボカロP/音楽クリエイター。
作詞作曲を自ら手がけ、錚々たるボーカリストをゲストに迎えた楽曲を次々とリリース。中でも「白昼夢 (feat.あらき)」はYouTube再生回数90万回を超えるヒットソングとなっている。一方でアイドルグループGANG PARADEへの楽曲提供など、コンポーザーとしての立ち位置も確立し活躍中。
ギターロックをベースに、ジャズやエレクトロなどの要素も取り入れた変幻自在な音楽性、文学的でファンタジックな歌詞の世界観が早耳の音楽リスナーから熱い注目を集め、今後の飛躍が期待されている。
●不眠症 YouTube:https://www.youtube.com/@FuminshoOfficial